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京都府の日吉ダム検証、水位低減効果に限界も

 7月の西日本豪雨では、京都府の日吉ダム(水資源機構)も満水状態になり、日吉ダムからの放流で下流の桂川は氾濫の危険が生じました。日吉ダムの放流の問題を検証した記事が地元紙に掲載されましたので、お伝えします。

◆2018年8月13日 京都新聞
https://www.kyoto-np.co.jp/politics/article/20180813000014
ー水位低減効果に限界も 豪雨から1カ月、緊迫の日吉ダム検証ー

 京都府の丹波2市1町に被害を出した西日本豪雨から、1カ月が過ぎた。桂川上流の日吉ダム(南丹市)は満水となり、運用開始20年で初めて非常用放流ゲートを開放。水位低減効果をもたらすダムだが、限界も示した。緊迫した状況を振り返り、人命を守るための課題を探った。

 今回の豪雨では梅雨前線が停滞し、降り始めの7月3日から8日までの日吉ダムの流域平均総雨量は、運用開始以来最大の492ミリに達した。ダムには5日深夜、ピークの毎秒1258トンの雨が流入し、貯水位が満水に近づいた。6日午前4時には、流れ込む水と同じ量を放水する異常洪水時防災操作を行った。2013年の台風18号以来の対応だった。

 同日午後2時には非常用ゲートも開放し、放流量は最大同907トンに。それでも、貯水位は最高水位を超える201・4メートルを記録した。水資源機構・日吉ダム管理所の今井敬三所長は「雨のピークが4回あった。経験のない厳しい状況で緊張した」と振り返る。

 桂川は亀岡市の保津橋の観測点で4メートルの氾濫危険水位を超え、6日午後7時半に最大の5・34メートルに達した。同管理所は、ダムが前夜の雨をため込んだ効果で最大水位を0・76メートル以上下げたと説明。市によると人家の浸水被害はなく、市内や下流の京都市の河道掘削も奏功したとみる。

 7日朝にかけて府北部や南丹市、京丹波町に大雨特別警報が発令された。幸い、上流域の雨は収まったが、今井所長は「府北部のような降雨だったら、大きな被害が出たかもしれない」と指摘する。

 南丹市では、桂川の水位が園部町船岡近くの観測点で6日午後5時、13年の台風18号の最高値より1・3メートル高い6・99メートルに到達。ダム管理所は同日未明以降、流域のサイレンを鳴らしたり、広報車で巡回したりして放流情報を伝達。流域自治体にも事前に状況を伝えていた。

 だが、船岡に住む片山義久さん(66)は「放流情報は知らなかった。堤防ぎりぎりまで水位が来て近くの水田も冠水し、危険を感じた」と避難を決断した状況を振り返る。

 南丹市によると、初めて放流情報を伝えたのはダム下流域に避難指示を出した同日午後5時。桂川の水位は切迫した状況で、周知に課題を残した。市は防災無線やケーブルテレビで避難指示を発信したが、登録制の防災メール「なんたんメール」では配信していないなど不備もあり、船岡など川辺地区で避難した住民は1割にとどまった。

 片山さんは「ダムがある安心感からか、今回ほどの水位上昇は思いも寄らなかった。逃げる意識を高めないと」と気を引き締め、「強く避難を呼び掛けるため、放流情報発信の充実を」と訴える。

 愛媛県の肱川ではダムの大量放流が始まる5分前に大洲市が避難指示を発令。川の氾濫に伴う浸水被害などで4人が犠牲となった。

 南丹市は水位や消防団の情報を基に避難指示を出したが、「放流量を発令基準に加えることも検討する」(総務課)という。亀岡市は放流情報を流域の自治会に伝えたが、「防災メールでの周知も考えたい」(自治防災課)とする。

 ダムの状況が流域の安全に直結する地域だけに放流情報を多くの住民が共有し、早めの避難など自ら命を守る動きにつなげる仕組みづくりが欠かせない。