八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

愛媛県・野村ダムの説明会、ダム直下の地区で

 国土交通省四国地方整備局が管理する野村ダムの緊急放流について、8月9日、愛媛県西予市で地元説明会が開かれたことを各紙が大きく伝えています。
 死者を出したダムの放流について、国交省は「ダムの操作規則」にのっとったとの説明を繰り返していますが、被災者は納得していません。ダムというものが、あらかじめ操作規則を決めておくもので、大雨の程度によって放流量を柔軟に変更できるものではないという、ダム管理者からすれば当然のことすら、ダム下流の住民は知らされていません。ダム事業を推進するために、ダムの治水効果を過大にPRし、ダムの限界や危険性を含む情報を流域住民に知らせてこなかった国交省の責任は重大です。この野村ダムだけでなく、全国のダムに共通する問題です。

◆2018年8月10日 朝日新聞
https://digital.asahi.com/articles/ASL88736DL88PTIL04H.html?iref=pc_ss_date
ー5人死亡のダム放流「天災だが人災」 説明会で住民訴えー

 西日本豪雨で愛媛県西予(せいよ)市の野村ダムが満水に近づき、肱(ひじ)川への緊急放流の直後に下流の同市野村地区の650戸が浸水、5人が死亡した問題で、市と国土交通省が9日夜、市内で住民説明会を開いた。

 会場の700席はほぼ満席。冒頭、管家(かんけ)一夫市長と国交省の野村ダム管理所の川西浩二所長があいさつした。犠牲者への黙禱(もくとう)の際、会場から「お前らのせいだ」などと怒声が飛んだ。

  緊急放流は7月7日午前6時20分。野村ダムでは満水の恐れがある時に放流量を毎秒300トンに増やす規則だが、緊急放流は最大で6倍の毎秒1797トンに達した。野村地区で肱川の越水を避けて放流できる量は毎秒1千トンまでだった。

 説明会で川西所長は、約600万トン分を事前放流して空き容量を増やしたが、雨量とダムへの流入量が想定を大幅に超えたと説明。「桁違いで想像を絶する規模だった」と述べ、緊急放流は避けられなかったとした。

 有識者を交えた国交省の検証作業では、放流の危険性が住民に十分伝わらなかったと指摘されている。川西所長はダムからの放送時に「ただちに命を守る行動を」と緊迫感がある文言を入れる改善策を示した。

 質疑応答では、住民の男性が「ダムがあるから大丈夫だと思っていた。もっとゆっくり放流していれば被害が少なかった」と批判。「天災でもあるが、人災でもある」と訴えると、会場が拍手に包まれた。

 住民の女性は「我々が生きるも死ぬも、あんたたちの裁量にかかっている。水に浸(つ)かって泥を掃除した経験はあるのか」と声を上げた。国交省の担当者は「規則に従って操作をした。経験したことがない豪雨への対応は、検証の場で考察したい」と答えた。

 一方、市の避難指示発令は、緊急放流の1時間10分前の午前5時10分。介助が必要ですぐに逃げられない高齢者らが犠牲になった。管家市長は「市民の意見を聴いて防災体制を見直し、避難のあり方を一つずつ改善する」と述べた。

 地区で死亡した入江善彦さん(59)の妻は「避難指示から放流まで時間がなさすぎた。夫は放流のことなど何も知らずに亡くなった」と訴えた。管家市長は「避難指示について色々な検証をしている。今の言葉も含めて改善したい。申し訳ございません」と答えた。

 市は豪雨後、ダムの緊急放流予定を把握した段階で避難指示を出す対応に改めたという。

 肱川では野村ダム下流の同県大洲市にある鹿野(かの)川ダムでも緊急放流で浸水被害が起き、近く大洲市でも住民説明会が開かれる。(波多野陽、大川洋輔)

◆2018年8月10日 愛媛新聞
https://www.ehime-np.co.jp/article/news201808100081
ー愛媛豪雨災害 西予野村ダム、説明会に700人参加ー

 【国交省 流入量予測困難/住民 操作規則間違い】

 西日本豪雨で野村ダムが7月7日朝に異常洪水時防災操作を実施し、西予市野村地域で肱川(宇和川)が氾濫し5人が死亡したのを受け、市と国土交通省野村ダム管理所は9日、同市野村町阿下の野村中学校でダム操作や避難指示に関する初めての住民説明会を開いた。川西浩二管理所長は、市が避難指示を出した午前5時10分の時点では、記録的豪雨を予測できず、事前の放流をさらに増やすなどの操作に反映できなかったとの認識を示した。住民約700人が出席し、説明に納得できないと批判の声が相次いだ。

 川西所長は、放流量予測が毎秒約1100トンの状況が続く中、午前6時7分に約1750トンに急上昇した際、市側にすぐ伝えたと説明。「午前2時ごろ流入量がはっきり見えていれば操作のやり方も考えられたが、見えなかった」と振り返り「市への伝え方や避難にどうつながるかなど、さまざまな課題がある」と述べた。一方で最大流入量1942トンに対し最大放流量は1797トンとし「被害軽減に努めた」と理解を求めた。

 1996年に操作規則を従来の大規模洪水想定から中小規模洪水想定に変更した点には、前年に下流の大洲市で大洪水が発生し、当時の規則は500トンまで貯留しないことになっておりそのまま放流したと紹介。「なぜ貯留しないのかとの批判が多く寄せられ、低い流量(300トン)から貯留し、野村地域だけでなく肱川下流一帯であふれないよう設定した」と述べ、変更時には旧野村町の理事者や議会に説明したとした。

 管理所側に対し、住民からは「操作規則自体が間違っている」との批判や、「なぜダムが思い切って水を放流して、事前にダム貯水量を減らさなかったのか」との指摘が出た。

 川西所長は「結果として大きな被害が発生したことを重く受け止めなければならない。検証し有効な対策を図る」と表明。四国地方整備局の中岡浩三河川情報管理官は「検証で事前放流拡大や、気象予測精度向上に応じて柔軟な操作が可能かも考える」と話した。

 遺族から放流量予測が急上昇した時点で市民に周知してほしかったとの指摘があり、管家一夫市長は「混乱した状況でそういう判断ができなかった。深くおわび申し上げる」と陳謝した。

◆2018年8月10日 愛媛新聞
https://www.ehime-np.co.jp/article/news201808100071
ー愛媛豪雨災害 「天災ではなく人災」西予の野村ダムで説明会ー

  「天災ではなく人災だ」。西日本豪雨による野村ダムの放流などで肱川(宇和川)が氾濫し、5人が亡くなった愛媛県西予市野村地域。9日夜に野村中学校で開かれた市や国土交通省野村ダム管理所などによる初めての住民説明会では、説明を聞いても当時のダム操作に納得ができない地域住民から怒りの声が上がった。

 約750席が用意された体育館には開会約1時間前の午後6時半ごろから住民が集まり始め、関心の高さをうかがわせた。

 開会直後の黙とう時には会場に「パフォーマンスをするな」「先に謝罪しろ」などの声が響き、静かな黙とうを促す場面も。ひと通りの説明が終わり、質疑応答になると待ち構えたように次々に手が上がった。

 野村ダムでは当時、安全とされている量の6倍の量を放流。質問に立った女性は、徐々に水を流していれば急に大量の水を放流せずに済んだのではと指摘した。旧野村町の町長を務めた男性(91)は昔に比べてかんがい用水の使用量が減っている点を踏まえ「なぜダムが思い切って水を出さなかったのか」と苦言を呈した。

 会場からは「国交省に(被害の)全額補償を求める」などと国の責任を問う声も上がり、賛同できる指摘には拍手が湧き起こった。ダムの放流方法や操作規則などに関する質問に対し、管理所側は「検証の場で技術的な考察をしていきたい」「検証の場でしっかり反映させたい」と答えるのが精いっぱいだった。

 同市野村町野村の女性(51)は、豪雨で命を落とした夫(59)の遺影を持って出席した。「納得できないし、聞きたいことはたくさんあった」とし「もっと早くから市とダムが話し合っている状況などを伝えてくれていたら助かる人がいた。おかしいことはおかしいと訴え続けたい」と語った。

 亡くなった女性(81)の遺族は「『悪かった』という言葉だけでも言ってほしかった。これから二度三度説明会を開いて住民の質問にちゃんと答えてほしい」と納得いく説明を求めた。

◆2018年8月11日 読売新聞社会面
https://www.yomiuri.co.jp/national/20180811-OYT1T50064.html
ー「人災だ」「土下座しろ」放流説明に住民ら怒りー

  西日本豪雨の際、愛媛県西予市野村町の野村ダムで7月7日早朝に行われた緊急放流で肱川が氾濫し、野村町内で死者5人、浸水650戸を出した問題で、国土交通省野村ダム管理所と西予市が9日夜、地元の野村中体育館で初の住民説明会を開いた。住民からはダム操作や避難情報の広報などに問題があったと非難する声が相次いだ。

 説明会には管家一夫市長や野村ダムの川西浩二所長らと、住民約700人が出席。冒頭、犠牲者への黙とうをささげる呼びかけに、住民から「土下座しろ」などと怒号が飛んだ。

 国側は、ダムの流入量とほぼ同じ量を放流する「異常洪水時防災操作」を7月7日午前6時20分に始め、7時50分には最大毎秒1797トンを放流したことや、最大流入量が過去最大(1987年)の2・4倍に当たる毎秒1942トンだったことなどを説明した。

 川西所長は午前2時30分、市野村支所長に「緊急放流は不可避で、午前6時50分頃に操作に入る」と連絡したが、その後、操作開始が同6時20分に早まったことも明らかにした。

 住民からは「なぜ、もっと早く放流を始めなかったのか」「大雨になるのはわかっていたはず。人災だ」などと批判の声が続いた。

 この地区に住み、亡くなった入江善彦さん(59)の妻(51)は「(避難指示から緊急放流まで)時間がなさ過ぎた」と市の対応を批判。管家市長は「もっと早くに避難指示を判断できず、申し訳ない」と陳謝した。(梶原善久)

◆2018年8月11日 毎日新聞愛媛版
https://mainichi.jp/articles/20180811/ddl/k38/040/407000c
ー西日本豪雨 肱川氾濫 「人災」住民厳しい意見 質疑、深夜まで 野村ダム説明会 /愛媛ー

 西日本豪雨で野村ダム(西予市野村町)の大規模放流後に肱川が氾濫した問題で9日夜に初めて開かれた住民説明会。会場の野村中には約700人が集まり、「天災でもあるが人災でもある」などと住民から厳しい意見が相次いだ。住民は謝罪や責任追及、再発防止、継続的な説明会の開催などを求め、質疑は予定時間を延長して深夜まで続いた。【中川祐一、木島諒子、遠藤龍、花澤葵】

 説明会には西予市と国土交通省四国地方整備局が出席。分単位の時系列でダムからの通知内容やそれを受けた…(以下略)