国交省関東地方整備局、スーパー堤防の地耐力不足で検討会(日経BP関連記事)

 さる8月1日に国土交通省関東地方整備局が「宅地利用に供する高規格堤防の整備に関する検討会」を開催しました。
 検討会の趣旨は次のようなものです。
 江戸川区北小岩一丁目の高規格堤防整備事業において、高規格堤防(スーパー堤防)の整備が終わったので、2017年3月末に地権者(元の居住者)に引き渡そうとしたところ、宅地としての地耐力の不足が判明し、その強化工事のため、引き渡しが9月末へと半年間延期されました。今後、このような問題に対処できるように高規格堤防整備の進め方を検討するというものです。

 この検討会の解説記事が日経コンストラクションに掲載されました。
 スーパー堤防の事業が始まってから、30年になりますが、この記事に書いてあるように本来の断面形状ができたスーパー堤防の整備率は対象の5河川全体でわずかに2.9%です。計画通りに整備が終わるまで、何百年という年数が必要です。スーパー堤防は流域全体が繋がらなければスーパー堤防が整備されていないところから河川水が溢れる可能性がありますが、高齢者の多く住む地域で強引に住民を立ち退かせて計画を進める一方で、当初事業が予定されていた場所に巨大マンションの建設計画があると、計画はあっさり見送られるなど、治水対策として意味がないことが、当事者の住民や支援者らによって次々と明らかにされています。
 八ッ場ダム事業と同様、河川行政のあり方を歪め、対象地域住民に大きな犠牲を強いるスーパー堤防事業は廃止すべきです。

 なお、この検討会の配布資料は国交省関東地方整備局サイトの下記ページに掲載されています。

宅地利用に供する高規格堤防の整備に関する検討会 
第1回 宅地利用に供する高規格堤防の整備に関する検討会(平成30年8月1日) 
http://www.ktr.mlit.go.jp/river/shihon/river_shihon00000366.html

■2018年8月20日 日経 xTECH/日経コンストラクション
https://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/column/18/00110/00040/ 
ースーパー堤防の欠陥宅地化、再発防止へ検討開始ー

 国土交通省関東地方整備局は、「スーパー堤防」と呼ばれる高規格堤防の整備で2017年に宅地としての地盤強度が不足するトラブルがあったことを受け、再発防止のため事業の進め方の見直しに着手した。学識者で構成する検討会を設置し、8月1日に初会合を開いた。

 関東地整が設置したのは清水義彦・群馬大学大学院教授を座長とする「宅地利用に供する高規格堤防の整備に関する検討会」。堤防の上面に整備する宅地に必要な地盤強度を確実に確保する事業の進め方などを、今年度末までに取りまとめる予定だ。取りまとめの内容は、同様にスーパー堤防の整備を進めている近畿地方整備局と共有する。

 スーパー堤防は大規模な洪水に耐えられるよう勾配をなだらかにするため、幅を高さの30倍程度と一般的な堤防よりもはるかに広く取る。現行の整備計画は人口が集中する都市部に限定しているので、地元自治体の土地区画整理や市街地再開発と事業を一体化し、堤防の上面を宅地などに利用できるように盛り土を造成する。

宅地引き渡しが強度不足で遅延
 関東地整は明らかにしていないが、強度不足があったのは北小岩1丁目東部地区のスーパー堤防とみられる。共同事業者として区画整理を進める東京都江戸川区が地権者への引き渡し直前に地盤調査を実施したところ、一部で強度不足が判明。地盤の補強工事が必要になり、引き渡しの期限が半年遅れて17年9月末となった。

 北小岩1丁目東部地区のスーパー堤防は江戸川区北部の江戸川右岸に位置する。延長約120m、幅約160mで、整備に要した盛り土量は約8万m3。事業期間は2013〜17年度だった。事業前は戸建て中心の住宅街で、スーパー堤防の完成後、上面で住宅の建設が始まっている。なかには堤防の整備に反対して国を提訴し、訴訟を継続中の元住民もいる。

強度不足に至った経緯
 江戸川区は戸建て住宅を建てる地権者に対し、30kN/m2以上の地耐力を持つ宅地を引き渡すと約束した。住宅の基礎形式を、江戸川区に多い軟弱地盤でよく用いる「ベタ基礎」ではなく、安価な「布基礎」にすることも可能な高めの数値だ。

 江戸川区の柿澤佳昭・区画整理課長によると、全域が平地の江戸川区でなじみがない盛り土地盤に住宅を建てることへの不安や、北小岩1丁目東部地区が都市計画法上、3階建ての住宅を建てられる地区であることに配慮した。

■地盤強度不足が生じた経緯

 関東地整は事前にプレロード盛り土で地盤に荷重をかけ、沈下を促進させる工法で強度を確保できると見込んだが、実際は想定以上に地盤が軟弱だったとみられる。造成後に地盤強度を調査せず、調査の時期や方法について江戸川区とあらかじめ十分に協議することもなかった。

 関東地整が16年3月に造成工事を終えた後、区が4月から街区の整備を開始。17年2月、地盤の品質確認のためスウェーデン式サウンディング(SWS)試験を実施した。

 区の調査で強度不足が判明したのを受け、関東地整がより詳細に地区内の375地点で地盤調査をすると、約16%の地点で地耐力が30kN/m2に届かなかった。どの程度の不足だったのか、関東地整は明らかにしていない。

整備推進の区長も怒る

 宅地の強度不足が発覚した直後の江戸川区議会では、スーパー堤防に批判的な野党議員ばかりでなく、整備を推進する区側からも関東地整に対する怒りの声が上がっ
た。

 17年2月の定例会では多田正見区長が「まことにけしからんこと」と述べ、造成工事を発注した関東地整に責任を取るよう求めると答弁した。同年6月の総務委員会では、柿澤区画整理課長が「(国は)堤防が宅地利用を伴うことに対して認識が不足していた」と指摘した。

 関東地整が今後スーパー堤防の整備を計画する地域は、約3割が木造住宅の密集地帯だ。宅地の品質が安定しなければ地権者の同意を得ることは難しく、整備の進捗に影響が及ぶことから、事業の進め方を見直すことにした。

整備促進のため官民連携も

 国交省による今年3月時点のスーパー堤防整備の進捗状況を上の表にまとめた。整備計画の規模は当初、延長が870kmだったが、民主党政権の事業仕分けを経て2011年12月に約120kmに縮小した。翌12年12月に自公連立政権が再スタートし、近年は豪雨で水害が激化しているが、国交省は人口が集中する地域での整備を優先する方針は不変として、計画の規模を見直していない。

 今年5月には整備促進のため、民間のデベロッパーとの連携を意図して関連政令の運用を見直した。これまで堤防上で街づくりをする共同事業者は自治体や都市再生機構に限っていたのを、デベロッパーでも公開空地を設けることを要件にして可能とした。

 デベロッパーが盛り土造成自体に関わり、同時進行でマンションなどを建てることも認める。デベロッパーが早い段階で地盤強度を確認することで、北小岩1丁目東部地区のように強度が不明確な状態で街づくりが始まるのを防ぐ効果も見込めそうだ。