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群馬県議会質疑「西日本豪雨の教訓と治水行政の転換について」

 開会中の群馬県議会本会議において、9月25日、伊藤祐司議員(共産)が「西日本豪雨の教訓と治水行政の転換」をテーマに、県土整備部長に質問を行いました。
 八ッ場ダムをはじめとするダム事業費に投入される税金は莫大です。その皺寄せで、治水の基本である河川改修の予算は最小限に絞られており、群馬県管理の河川改修率はいまだに30%台となっています。伊藤県議がこの点を追求し、河川改修に投じる予算を大胆に増やすよう求めましたが、県は形式的な答弁に終始しました。

 質疑の模様は、県議会ホームページの以下の録画ページでご覧になれます。
 http://www.gunma-pref.stream.jfit.co.jp/?tpl=play_vod&inquiry_id=4634

 質疑の要約をお伝えします。

伊藤祐司議員:先の西日本豪雨は、地球温暖化が進行する下での災害のありようと防災の政策の転換を私たちに迫ったと思います。
 第一に、未曽有の豪雨がどこでも降る可能性があるという点です。前橋気象台の2017年の年間降水量は1192.5㍉でしたが、西日本豪雨ではこれを超えた所が四箇所もありました。一番多かったのは、高知県馬路村の1852.5㍉です。
 二つ目の教訓は、想定外の豪雨に対して、ダムは役に立たないばかりか、堤防破堤の引き金になる危険な存在と化すということです。愛媛県の野村ダム等の緊急放流によって、ダム下流の河川の水位が急激に上昇し、流域住民が避難する時間を奪うという、きわめて怖ろしいことが起きました。
 三つ目の教訓が、堤防の強化や河床の掘削など、河川改修を治水対策の基本とすることの重要性です。京都の桂川では、今回の豪雨で渡月橋が流されなかったのは、5年前の水害の教訓を踏まえて、河床掘削を徹底した結果だと聞いています。
 一方、(51人の犠牲者が出た)岡山県倉敷市真備町では、高梁川支流の小田川が河川改修が目標に達していなかったばかりか、河床に樹木が生い茂り、河道を狭めていました。
 ひるがえって、群馬県の河川改修の現状はどうでしょうか? 河川改修事業を抜本的に強化すべきと考えますが、部長の考えを伺います。

中島聡県土整備部長:本県における治水は、利根川水系河川整備計画に基づき、それぞれの地域の特性に合った治水対策を講じることとしています。
 水系全体としてバランスよく治水安全度を向上させることが基本であるとの考えのもと、災害の発生防止や軽減にあたっては、洪水をできるだけ河道で分担し、処理しつつ、河道で処理できない流量については、上下流や本支川のバランスに配慮しながら、ダム等の洪水調節施設により対応することとしています。
 これまで、河川やダムの整備により、県内の治水安全度は着実に向上してきました。一方で、全国で頻発する記録的な大雨などの状況を見ると、県管理河川の状況はいまだ十分とは言えず、現在、県では河川整備計画に基づき、近年洪水被害が発生した地域、人口資産が集中する地域、経済や行政活動の拠点地域において、流域の特性を踏まえて、河川改修や調節池整備、堤防強化などを重点的に推進しております。また、大雨時に流下能力を確保するため、堆積した土砂の撤去、樹木の伐木なども進めています。治水対策にあたりましては、施設では守り切れない大洪水は必ず発生するとの考えに立ち、引き続き河川改修や堤防強化などのハード対策と、水害リスク想定マップの活用や河川監視カメラによる情報発信などのソフト対策を一体的に進めることにより、県民の安心と安全の向上に努めてまいりたいと考えています。

伊藤祐司県議:もう少し反省を込めて答弁されると期待したのですが、(県は)認識が甘いと思います。
 私は以前、一般質問で、ダムの予算がどんどん増加している一方で、河川改修の予算が減少し続けていることを、グラフを示して批判しましたけれども、それでも河川改修の状況は変わっていません。
 これは「県の河川整備費と改修率の推移」を示した表です。県が河川管理に責任を持つ河川の延長は約1280キロあります。そのうち、改修が済んだ区間は10年前の平成19年度に32.3%、その後、毎年0.3%、0.4%と増えていって、10年後の昨年度に35.4%になったと。このテンポでは河川改修は200年たっても完了しません。こういう状況は怖ろしいと思います。
 たとえば群馬県は、七基の県営ダムに1125億円(治水分)使ってきました。倉渕ダム、増田川ダムは事業が中止になりました。両ダムの中止分だけで見ると700億円。これらのダムの中止分をどうして河川整備にもっと大胆に投入しないんでしょうか? ダムならば数年で数百億円投入するわけですから、そういう勢いでやってもらいたい、抜本的に河川改修の予算を引き上げてもらいたいと思いますが、どうでしょうか?

議長:答弁時間がありません。

中島聡県土整備部長:想定を超える洪水が発生しておりますので、引き続き河川整備を進めるとともに、ソフト対策で守り切れない部分につきましては、ハード対策を行いまして、県民の安心安全を守りたいと考えています。