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肱川水系河川整備計画の見直しへ、国交省四国地整が学識者会議を開催

 国土交通省四国地方整備局は10月18日、「肱川水系河川整備計画(中下流圏域)の点検について意見を聴くため 学識者会議」を開催しました。
 愛媛県の肱川流域では、今年7月の西日本豪雨の際、国直轄の野村ダムと鹿野川ダムが緊急放流を行い、8名の流域住民が水害の犠牲者となりました。

 国交省四国地方整備局 記者発表資料
 http://www.skr.mlit.go.jp/pres/new/i1454/181011-2.pdf

 河川整備計画は今後20~30年間に実施するダムや河川改修の事業を組み込んだものです。ところが、西日本豪雨での流量規模は、これまでの肱川水系の河川整備計画の規模を超えていました。このままではたとえ三十年後に計画を達成しても、流域住民を守れないから、計画規模を引き上げるため、河川整備計画を変更しなければならなくなったということです。

 しかし、肱川水系河川整備計画の根本問題はダム偏重の治水対策です。山鳥坂ダムの建設と鹿野川ダムの改造に巨額の河川予算を注ぎ込み、河道整備を蔑ろにしてきたことにあります。今回の豪雨では、たとえ山鳥坂ダムがあっても役に立ちませんでした。むしろ、山鳥坂ダムも野村ダム、鹿野川ダムと共に緊急放流を行って、水害を助長した可能性が大きいと考えられます。
 山鳥坂ダムはまだ本体工事に着手していません。ダム完成までまだ10年近くもかかる計画です。金食い虫の山鳥坂ダム事業を中止して、河道整備を速やかに進める河川整備計画につくり直すべきです。

 関連記事を転載します。

◆2018年10月19日 愛媛新聞
https://www.ehime-np.co.jp/article/news201810190035
ー肱川氾濫、河川計画「変更必要」 国と県が学識者会議初会合ー

 西予、大洲両市に甚大な被害を出した西日本豪雨に伴う肱川氾濫を受け、国土交通省四国地方整備局と県は18日、肱川水系河川整備計画変更の検討に入った。大洲市で開いた学識者会議の初会合で、今回の洪水が計画規模を上回っていたと説明。学識者から「変更が必要」との意見を得た。具体的な変更内容や時期は学識者会議の意見を聞きながら、国や県が決める。素案段階で流域住民などを対象に意見公募を行う方針。

 河川整備計画は2004年策定で、おおむね30年で堤防やダムを整備する。同整備局大洲河川国道事務所によると、計画の目標流量(大洲第二観測所)は毎秒5千トンで、今回の洪水があるまで戦後最大だった1945年9月の洪水と同規模でも被害を出さない想定となっている。

 一方、西日本豪雨での流量規模は、ダムによる洪水貯留をせず、氾濫がない場合で6200トン程度(速報値)と推定。事務所は「計画通り整備していても、被害が出た可能性がある」と説明する。実際の流量は4442トン(同)だった。

 流域の大洲、西予両市や内子町からは、整備区間見直しや新計画策定の要望があった。

 学識者会議は環境や文化財などが専門分野の14人で構成。議長に鈴木幸一愛媛大名誉教授(河川工学)を互選した。初会合では、国や県が計画について▽治水▽利水▽河川環境—などの分野で現状を説明。鈴木氏は「整備を適切に実施していることは確認したが、7月の洪水は現行計画を大きく上回っており、早急な変更が必要」と述べた。

 事務所によると、国や県の肱川緊急治水対策には大洲市内の暫定堤防かさ上げなどで現行計画の範囲を超えるものがあり、実施のためには計画変更が必要という。