最近は、反対の声を無視して強行されているダムの話ばかりですが、今回は中止になったダムについての記事をお送りします。
独立行政法人・水資源機構が淀川水系・高時川で計画した丹生(にう)ダムです。
丹生ダムの建設予定地は滋賀県長浜市、1968年に予備調査が開始され、堤体積全国一の大ダム建設が計画され、1996年までには40世帯が立ち退きを余儀なくされました。2014年の時点ですでにダム関連の調査や工事等に500億円以上が投じられていましたが、2016年に中止が正式に決定しました。中止に伴って地域整備実施計画がつくられ、県道の拡幅や市道の舗装、川の浚渫(しゅんせつ)工事などが進められています。
〈参考〉
●水資源機構・丹生事務所ホームぺージ
http://www.water.go.jp/kansai/niu/index.html
●国土交通省近畿地方整備局 丹生ダム建設事業の中止に伴う地域整備協議会
https://www.kkr.mlit.go.jp/river/iinkaikatsudou/niu_dam/index.html
なお、国土交通省近畿地方整備局が設置した淀川水系流域委員会は、2005年1月に丹生ダムを含む5ダムの中止を提言しました。そのうち、水資源機構の川上ダム(三重県伊賀市)と国直轄の天ヶ瀬ダム再開発(京都府宇治市)は、事業が継続されています。国直轄の大戸川ダム(滋賀県大津市)は推進に向けて動きつつあります。中止になったのは国直轄の余野川ダムと丹生ダムのみです。
◆2018年10月20日 毎日新聞滋賀版
https://mainichi.jp/articles/20181020/ddl/k25/010/427000c
ー丹生ダム 道路工事進捗 整備協、初の現地視察 長浜 /滋賀ー
丹生ダムの予定地だった長浜市余呉町の高時川上流の地域整備を進める「丹生ダム建設事業の中止に伴う地域整備協議会」が19日、道路整備工事などの進捗(しんちょく)状況を確認するため、初めて現地視察を実施した。
地元住民でつくる丹生ダム対策委員会(湯本聡委員長)と国交省近畿地方整備局、県、長浜市、水資源機構の5者で構成する協議会は2016年10月に初会合を開き、今回で6回目。
ダムの予定地だった地域は昨年度に策定された整備実施計画に基づき、県道の拡幅や市道の舗装、川の浚渫(しゅんせつ)工事などが進む。
この日は、協議会の委員や関係者ら約40人が現地に入り、工事担当者から説明を受けた。視察後、湯本委員長は「整備だけでなく地域活性化に資する事業も含め、スピード感を持って進めてもらいたい」と話した。【若本和夫】
◆2014年1月17日 読売新聞滋賀版
https://archive.is/20140117133354/http://osaka.yomiuri.co.jp/e-news/20140117-OYO1T00245.htm
ー滋賀・丹生ダム、建設中止の方針…国の再検証ー
住民移転後では初
滋賀県長浜市の1級河川・高時川に計画されていた丹生にうダムについて、国土交通省近畿地方整備局と独立行政法人・水資源機構は16日、ダム建設を中止する方針を決めた。国が建設継続の是非を再検証している全国の31ダムのうち、住民の立ち退き移転後に中止となるのは初めて。
国は2009年秋から再検証を進めており、中止が決まるのは5例目。この日、大阪市内で、同整備局の池内幸司局長が嘉田由紀子・滋賀県知事らに説明。嘉田知事は中止を了承し、「長浜市ではダムで人生を翻弄された人も少なくない。県としてしっかり河川整備に取り組んでいくが、国も積極的な支援をしてほしい」と述べた。
丹生ダムは、高時川の治水と利水の能力を高めるため、旧建設省が1968年に多目的ダムとして予備調査に着手。94年に水資源開発公団(現・水資源機構)が事業を引き継ぎ、96年までに40世帯が立ち退いた。
しかし、2000年以降、琵琶湖下流の京阪神地域で水需要が低下し、国が09年、同ダムに利水機能を担わせないことを決定。さらに、今後必要な費用を試算し、治水ダムの246億〜339億円に対して、河川整備なら80億円程度で済むなどとして、「ダムは有利でない」と結論づけた。
丹生ダムは本体工事にまだ入っていないが、これまでに調査や用地取得、周辺工事などで、国のほか、滋賀、大阪、京都、兵庫の各府県などが計567億円を費やした。
国土交通省近畿地方整備局サイト 「丹生ダム建設事業の中止に伴う地域整備実施計画(平成30年 4 月版) 」より