さる10月25日、国土交通省四国地方整備局は野村ダム・鹿野川ダムの操作等に関する検証の場の第3回会合を開催しました。
愛媛県の肱川流域では、7月の西日本豪雨の際、国直轄の野村ダムと鹿野川ダムが緊急放流を行った後、河川の氾濫で甚大な被害が発生しました。流域住民はダムによる災害が二度と起こらないよう、国交省に対応を求めてきましたが、報道によれば、気象予測に基づいた柔軟なダム操作は「精度の低さや外れた際のリスクがあり困難」であるとして見送られたということです。
国交省は肱川流域で三基目の巨大ダムである山鳥坂ダムを2026年度に完成させる予定です。山鳥坂ダムは治水効果が期待できませんが、検証では山鳥坂ダムの問題には触れていません。
「検証の場」についての資料(右画像=議事次第)は、以下の国交省四国地方整備局のホームページに掲載されています。
http://www.skr.mlit.go.jp/kasen/kensyounoba/kensyounoba.html
◆2018年10月26日 毎日新聞愛媛版
https://mainichi.jp/articles/20181026/ddl/k38/010/512000c
ー西日本豪雨 柔軟なダム操作、見送り 気象予測外れるリスク 大洲・検証会合 /愛媛ー
西日本豪雨でダムの大規模放流後に肱川が氾濫した問題で、国土交通省四国地方整備局は25日、ダムの放流操作などを検証する第3回会合を大洲市内で開いた。ダムの改造事業などに合わせて操作規則を変更し洪水調節機能を拡充する方針を示したが、気象予測に基づいた柔軟なダム操作は「精度の低さや外れた際のリスクがあり困難」と見送った。【中川祐一】
操作規則に過度に縛られない柔軟なダム操作については住民説明会などで検討を求める意見が強く出ていたが、同整備局は流入量とほぼ同量を放流する「異常洪水時防災操作」を現行規則より早い段階で実施した場合を例示。気象予測が外れれば本来回避できたはずの浸水被害が発生し、予測が的中しても早くから浸水被害が発生するため早期の避難が必要と主張。西日本豪雨でも1時間前の予測と実測値に大きな差があったとし、「操作規則に反映することは困難。予測精度の向上に期待する」と結論付けた。
有識者からは「予測は難しいが、流入量と浸水被害の対応関係をしっかり国と市町で共有しておくだけでも意味がある」という意見が出た。
一方、野村ダム(西予市野村町)の治水容量を利水者との調整で600万トン(豪雨前は350万トン)からさらに増やす案や、鹿野川ダム(大洲市肱川町)の改造事業や激特事業による下流域の整備に合わせて両ダムの操作規則を変更する案を示した。
住民への周知のあり方も検証され、ダムの放流量を住民にアナウンスしたり、災害時の行動を時系列で整理した「防災行動計画」を住民と一緒に作成したりする案が示された。有識者からはダム放流による危険性が誰にでも分かるように危険度のレベルを示す案が出たほか、「行政が手厚くすると住民が依存体質になることもある。『自分たちならではのルール』を住民らで考え、避難行動につなげる必要がある」などの意見が出た。有識者の意見を踏まえ、年内に次回会合を開いて取りまとめる。
◆2018年10月26日 愛媛新聞
https://www.ehime-np.co.jp/article/news201810260142
ー大洲で関係自治体と協議 野村・鹿野川ダム 国、操作規則変更方針ー
西日本豪雨などによる肱川水系氾濫を受け、野村、鹿野川両ダムの操作や住民への情報提供を検証するため国土交通省四国地方整備局が設けた会合が25日、大洲市であった。整備局はダム改造や堤防整備の進み具合を踏まえ、両ダムの操作規則を変更する方針を示した。
会合後には報道陣に、来年4月を目指す鹿野川ダム洪水吐(ばき)トンネル運用までには両ダムの操作規則を変更すると表明。具体的内容については、県や利水者、大洲、西予両市などと協議し、流域住民の理解を得たいとした。
会合は3回目。洪水吐トンネル運用で、鹿野川ダムの洪水調節容量は1650万トンから740万トン増強される。操作規則変更に関し同局の佐々木淑充河川部長は、ダムの容量や堤防の流下能力は有限とし「ある地区を極端に安全にすると、別の地区の安全度が下がることがあり得る。特定地区のエゴにならないよう(流域住民全体の)納得感が必要」と述べた。
同局は、中小規模洪水に対応した操作規則と大規模洪水に有効な操作規則を、降雨予測に応じて併用するなどの柔軟なダム操作は現時点では困難とする見解も示した。「予測が外れた場合、本来避けられたはずの浸水被害が発生するため」という。
野村ダムのさらなる治水容量確保に向けた放流設備設置を検討するともした。
有効な情報提供では、同局は異常洪水時防災操作開始を下流域の自治体などに通知する文書に、下流への影響などを追加する案を提示した。予測最大毎秒放流量のほか、氾濫危険水位や過去最大規模を超える可能性の有無を示す内容。森脇亮愛媛大教授は「放流量に対応した危険度を表示すれば、誰でも直感的に理解できるのではないか」などとした。
会合ではこのほか、西予市(野村地区)と大洲市(菅田—肱川地区)の避難情報発令基準策定や浸水シミュレーションの実施、両市ホームページへのダム流入量・放流量掲載なども示された。年内に次回会合を開き、結論をまとめる予定。