黒部川のダム排砂について、国交省黒部河川事務所長へのインタビュー記事

 黒部川の出し平ダムと宇奈月ダムの排砂について、国交省黒部河川事務所長にインタビューした記事が朝日新聞富山版に掲載されています。

 ダムは完成後、年月が経過すると、上流から流れ込む土砂が貯まっていき、本来の建設目的である貯水機能が低下していきます。流出土砂の著しい黒部川では、ダムの堆砂問題を解決することを目的に、関西電力の出し平ダム(1985年竣工)と国直轄の宇奈月ダム(2001年竣工)に排砂ゲートが装備されました。
 国土交通省黒部河川事務所のホームページには、宇奈月ダムの堆砂量はダムの寿命である100年間で実に1.4億m3にも上ると推定されたということです。排砂ゲートはダムへの堆積によって引き起こされる「ダム下流の河床低下や河口付近の海岸侵食など数々の課題解決に寄与すると期待されて」いるということです。

 国土交通省黒部河川事務所ホームページより 「宇奈月ダムの排砂設備」
 http://www.hrr.mlit.go.jp/kurobe/jigyo/dam/haisa.html 

 しかし、ダムに貯まる土砂は木の葉や木片もまじってヘドロ化し、元の土砂と同じではありません。出し平ダムは完成後6年経過した1991年~99年にかけてゲートを利用して排砂を行ったところ、ダム下流の河川環境が著しく悪化し、富山湾の漁業は深刻な被害を受けました。このため、富山湾沿岸の刺し網漁業者やワカメ養殖組合が2001年に(株)関西電力を提訴した訴訟は、2011年にようやく和解しました。当時、朝日新聞は、「原告側が賠償請求を取り下げるかわりに、関電側が排砂の方法について漁業者の意見を聞くことで双方が折り合った。漁業者らにとっては、勝訴の展望が開けないなかで苦渋の決断となった。」と報じました。
 排砂のタイミングが雨量の少ない時期であるとヘドロがそのまま下流に流れることから、その後ダム事業者側は、雨量の多い時期に排砂を行うなど、下流への影響を軽減する排砂の方法を試行錯誤しているようです。

国土交通省黒部河川事務所ホームページ 
黒部川におけるダムの排砂についてー平成30年度連携排砂についてー参考資料(宇奈月ダム)より
http://www.hrr.mlit.go.jp/kurobe/haisa/renkei/h30/180920/07.pdf

 国交省と関西電力は、「これまで実施してきた16年間の連携排砂により、排砂に関する一定の手法が確立されてきたと考えられることから、現在運用している最新の手法やこれまでの検討の経緯、技術の蓄積を」2017年3月に「黒部川 出し平ダム 宇奈月ダム連携排砂のガイドライン(案)」としてとりまとめています。
http://www.hrr.mlit.go.jp/kurobe/haisa/renkei/guidelines.pdf

 排砂による環境悪化について、以下の記事ではダム事業者が「自然が相手なので何度もやってみないと分からないところもある。」と語っている言葉を載せています。ダムによる自然の実験は、ダムが自然に与えるダメージの大きさを改めて私たちに考えさせます。

◆2018年11月15日 朝日新聞富山版
https://digital.asahi.com/articles/ASLCF5FF1LCFPUZB006.html?iref=pc_ss_date
ー連携排砂とは 古本一司・黒部河川事務所長に聞くー

 今年6、7月に2年ぶりに実施された関西電力出し平ダムと国土交通省宇奈月ダムの連携排砂。関電と国交省黒部河川事務所は、今回の「連携排砂量」は過去最大の117万立方メートルと発表した。しかし、実際に両ダムから下流に流れ出た砂の量は、これより多いという。分かりづらい連携排砂について、古本一司・同事務所長に改めて聞いた。

 ——1991年に出し平ダムで初めて排砂を行い、2001年から下流の宇奈月ダムと連携排砂に。そもそも、連携排砂の目的は?

 黒部川は全国有数の流出土砂の多い河川。総貯水容量2470万立方メートルの宇奈月ダムには、平均で年間約140万立方メートルの土砂が流れ込む。排砂しなければ約17・6年で埋まる。出し平ダムも同様(関電によると総貯水容量900万立方メートルに年間約55万立方メートルの土砂が流れ込み、排砂しなければ約16・4年で埋まる)。ダムが埋まるのを防ぐ他、海岸の浸食軽減などのために下流域へ土砂を供給することも連携排砂の目的。

 ——「連携排砂量」は両ダムからの排砂量?

 出し平ダムから流れ出た土砂の量だけ。宇奈月ダムの土砂は排砂しなければいけない量に達していないので、出し平ダムからの土砂を通過させるだけと考えている。

 ——連携排砂は大雨の時に実施する。出し平ダムの湖底にたまっていた土砂と一緒に、雨で周囲の山から新たに流れ込む土砂も流れ出るが、「連携排砂量」には全て含まれる?

 大雨で周囲から流れ込み、そのままダムから流れ出た土砂は含めていない。

 ——つまり「連携排砂量」はダム湖底にたまった土砂が減少した量ですね。周囲から流れ込んでそのまま流れ出る土砂と合わせるとどれくらいの量に?

 大雑把に言って、(連携排砂量の)倍近くの規模と考えてよいのではないか。

 ——今年は宇奈月ダムの土砂も32万立方メートル出たと発表した。宇奈月ダムは通過させるだけという考え方はもう通じないのでは?

 12年以降は宇奈月ダムにたまっていた土砂も流出する状態が続いている。今年はそれが32万立方メートルだった。排砂の状態であると私たちも認識している。

 ——91年の出し平ダムの排砂は、ダム湖底に6年間ためて腐った落ち葉などが交じった土砂を流し、下流域や海に大打撃を与えた。どんな排砂方法がよいか?

 あの時は6年間ためた土砂がそこまで変質するとは想定していなかったのだろう。排砂については、まったく土砂を出すなという意見から、雨が降る度に出せという意見まである。自然に近い形に近づけるなら、雨が降る度に出す方がよいのではないかと思うが、自然が相手なので何度もやってみないと分からないところもある。(聞き手・高津守)

—転載終わり—
〈参考記事〉
◆2018年6月29日 北國新聞
https://www.hokkoku.co.jp/subpage/T20180629205.htm
ー黒部川で連携排砂 自然流下を実施ー

 黒部川上流の出し平ダムに堆積した土砂を宇奈月ダムと連携して排出する「連携排砂」で、国土交通省黒部河川事務所と関西電力は28日、ダム底の土砂を河川本来の流れで下流に押し出す「自然流下」を実施したと発表した。
 同事務所などによると、自然流下は出し平ダムで午前9時から午後9時、宇奈月ダムで午前10時40分から午後10時に行われた。今後、両ダムの排砂ゲートが閉められ、水位が回復する。
 出し平ダムの目標排砂量は165万立方メートルで、過去最多となっている。昨年の連携排砂は黒部川に流出した油などの回収に伴い、中止となったため、今年は2回行われる。

黒部川の出し平ダム、宇奈月ダムからの土砂流出が大幅増 連携排砂(2017年1月18日)
 https://yamba-net.org/wp/19665/