スーパー堤防の土盛りの杜撰さがまた発覚しました。
問題が発覚したのは、東京江戸川区北小岩で行ったスーパー堤防事業です。このスーパー堤防を巡っては、事業用地の住民らが事業の差し止めを求めて提訴しましたが、司法は国策の巨大事業に対して、八ッ場ダムと同様、住民らの訴えを退ける判決を下しています。
しかし、スーパー堤防に向ける住民らの厳しい視線を気にしてか、国と共にスーパー堤防の事業を進めてきた江戸川区は、スーパー堤防の盛り土が完成した2017年3月、住民にスーパー堤防の土地を引き渡す際、地盤調査を行ったところ、地耐力が不足しているとして、土地の引き渡しが半年遅れました。
この半年間の間に、国交省が地盤改良を行ったのですが、今回は、地盤改良の際、大量のコンクリート片を取り除いていたことを国交省が住民に伏せていたという問題です。
スーパー堤防訴訟は現在、控訴審が継続中です。国交省はこれまで地盤データを非開示としていましたが、文書提出命令を受けて裁判所に提出しました。11月22日に10か月ぶりに開かれた裁判では、原告側が地盤データを分析して弁論を行いました。
以下の東京新聞の記事によれば、「コンクリート片は盛り土する前の元の地面の地下四十~百二十センチに埋まっていた」ということです。スーパー堤防事業では事業用地から住民が一旦立ち退かされた後、江戸川区が家屋の解体作業を行いました。その際、住宅の基礎などのコンクリートを取り除いた上でスーパー堤防の土盛りをしなければならなかった筈ですが、コンクリート片をそのまま埋めてしまったのでしょうか。土盛りの杜撰さは、発覚しなければ判明しないまま終わっていたでしょう。
右上図=東京新聞記事より。図の茶色い部分が盛り土されている。
〈参考記事〉
〇「国交省によるスーパー堤防の宅地利用に関する検討会(最終回)」(盛り土の強度不足)
https://yamba-net.org/wp/43973/
〇「スーパー堤防訴訟(第五回控訴審)-11/22、東京高裁」
https://yamba-net.org/wp/44566/
八ッ場ダム事業では、ダム湖予定地周辺に水没住民の移転代替地が造成されましたが、谷埋め盛り土の箇所では深度が30~50メートルにも達しています。この盛り土の安全性を高めるための対策が現在、川原湯地区の打越代替地の三箇所で実施中ですが、ダムの湛水試験だけでなく、長期にわたり安全が確保されるのか心配されています。
◆2018年11月29日 東京新聞社会面
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201811/CK2018112902000128.html
ー江戸川のスーパー堤防 宅地地中にコンクリ片ー
国と東京都江戸川区が北小岩で行った「スーパー堤防」事業で昨年六月、地中から大量のコンクリート片が見つかりながら、地域住民に知らされないまま除去されていたことが分かった。専門家は「情報をオープンにしなければ行政は信頼を失う」と批判している。
この場所では、国土交通省の堤防建設と江戸川区の土地区画整理事業が進められていた。国交省によると、堤防はいったん完成したが、宅地造成後の昨年一月、江戸川区が地盤を調べたところ、約束した強度に満たないことが判明。このため、国交省が昨年五月から地盤改良に着手。盛り土を地下五・五メートルまで掘り下げたところ、一部からコンクリート片計約百四十八立方メートルが出てきた。
国交省はこれを約千八百万円の追加工事で取り除いたが、この事実は地権者や住民に説明されなかった。その後、住宅建設も終わったが、今年八月、初鹿明博衆院議員(立憲民主)の元に、除去工事の写真などが届いたことから発覚した。
コンクリート片は盛り土する前の元の地面の地下四十~百二十センチに埋まっていたことから、同省治水課の斉藤喜浩課長補佐は「いつ混入したかは不明。必要な措置をし、宅地の地盤強度を確保した」と語る。江戸川区の柿沢佳昭区画整理課長は「説明することで、地権者らに不要な不安を与えてはいけないとも考えた」と話した。二十八日、国交省から初めて説明を受けた地権者の宮坂健司さん(65)は「きちんと地権者や住民に周知することが必要。話さないと隠したように感じてしまう」と話した。
京大の今本博健名誉教授(河川工学)は「土中にコンクリート片が交じっていれば、地震ですき間が沈下したり、液状化につながる可能性もある。強度があれば説明が不要になるわけではない。誠意を持って説明すべきだ」と話した。
—転載終わり—
写真下=八ッ場ダム本体工事現場に隣接する川原湯地区の打越代替地。2018年11月27日撮影。
写真下=崖沿いにつくられた県道部分は、地盤強度不足のため、盛り土を掘り返し、L型擁壁がつくられるという。