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水道法改正案、参院で審議、内閣府に水メジャー関係者

 水道民営化に道を開く水道法改正案が参院で審議される中で、水メジャー、フランスのヴェオリア社の出向職員が内閣府に勤務していることがわかりました。世界で水道民営化の失敗が明らかになっている現在、政府が民営化を進めようとしている背景に、ヴェオリア社などの水メジャーと政治家や水官僚との癒着を指摘する声があります。
 ヴェオリア社は水メジャーの最大手ですが、世界各国で一旦民営化した水道事業が水質汚濁や水道料金の高騰によって大問題となり、再公営化する流れの中、日本の市場を狙っているといわれます。ヴェオリア社の日本法人は、すでに浜松市の下水道部門や松山市の浄水場の運営権や大阪市の水道料金徴収業務に参入しています。

 福島みずほ議員のホームページには、参議院における水道法改正案をめぐる議事録が掲載されています。(29日の議事録は現時点では未掲載。)
2018年11月27日、厚生労働委員会で水道法改悪案について質問しました
2018年11月26日、予算委員会で水道法など安倍総理と麻生大臣に質問しました

◆2018年11月29日 共同通信
https://this.kiji.is/440827989121811553
ー内閣府に水メジャー関係者と批判 参院審議で社民・福島氏ー

 参院厚生労働委員会で29日に開かれた水道法改正案の審議で、上下水道を扱い「水メジャー」と呼ばれるヴェオリア社と関係のある女性が、内閣府の「民間資金等活用事業推進室」に政策調査員として在籍しているとして、社民党の福島瑞穂氏が「利害関係者で立法事実の公平性がない」と批判した。

 内閣府によると、公募で選び、昨年4月から2年間の予定で採用。ヴェオリア社から出向した形を取っている。内閣府の石川卓弥推進室長は「一般的な海外動向調査に従事し、政策立案はしていない」と答弁し、利害関係者には当たらないとの認識を示した。

◆2018年11月29日 朝日新聞
https://www.asahi.com/articles/ASLCY6F37LCYULBJ018.html?fbclid=IwAR0opjPEMgMqJCbCa3Qhdyod_SUTpumjX3sRMHK80RGqKi5jxGcS7oYxxPk 
ー水道民営化、推進部署に利害関係者? 出向職員巡り議論ー

 水道などの公共部門で民営化を推進している内閣府民間資金等活用事業推進室で、水道サービス大手仏ヴェオリア社日本法人からの出向職員が勤務していることが29日、わかった。今国会で審議中の水道法改正案では、水道事業に民営化を導入しやすくする制度変更が争点となっている。

水道事業、民営化に道 海外では料金高騰・水質悪化例も
 この日の参院厚生労働委員会で、社民党の福島瑞穂氏が指摘し、推進室が認めた。推進室によると、昨年4月に政策調査員として公募で採用し、海外の民間資金の活用例の調査にあたっているという。

 今回の民営化の手法は、コンセッション方式と呼ばれ、自治体が公共施設の所有権を持ったまま、運営権を民間企業に売却できる。政府は、水道のほか空港や道路を重点分野として導入を推進。下水道では今年4月に浜松市が初めて取り入れ、ヴェオリア社日本法人などが参加する運営会社が、20年間の運営権を25億円で手に入れた。

 水道はまだゼロだが、今回の改正案に、導入のハードルを下げる制度変更が盛り込まれている。福島氏は「この法案で最も利益を得る可能性がある水メジャーの担当者が内閣府の担当部署にいる。利害関係者がいて公平性がない」として法案からの削除を求めた。

 同室は「浜松市なら問題だが、内閣府はヴェオリア社と利害関係はない。この職員は政策立案に関与しておらず、守秘義務なども守っている」として、問題ないとの立場だ。(阿部彰芳、姫野直行)

◆2018年11月30日 毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20181130/ddm/003/010/058000c
ークローズアップ2018 法改正案成立へ 民間力導入、水道分岐点ー

  臨時国会で審議されている水道法改正案が、来週以降に成立する見通しだ。経営の厳しい公共水道事業の基盤強化を目的に、広域連携や官民連携の推進を掲げるが、民間への運営権売却に道を開く内容に、野党側は「将来の安定供給に不安がある」と反発する。地方の現状を見ると、国の思惑通りに基盤強化が進むとは限らず、水道事業は今後の地方行政サービスの大きな課題になりそうだ。

収益の改善が狙い 、仏で料金高騰の例
 「右肩上がりの水道料金を1割下げられる」(村井嘉浩宮城県知事)

 「企業の利益至上主義は止められない」(ジャーナリストの橋本淳司氏)

 29日の参院厚生労働委員会であった参考人質疑では民間参入を巡り、地元での推進を目指す村井氏と、海外での問題事例を挙げた橋本氏が、持論を展開した。

 原則的に市町村が独立採算で運営する水道事業は、人口減少に伴う収益悪化と設備の老朽化という二重苦に直面している。全国の1日当たりの水道使用量は2000年からの15年間で約8%減り、水道料金の全国平均は30年間で3割上がった。高度成長期に整備された水道管の更新も進まず、15%が法定耐用年数の40年を超過。主要な水道管の耐震化率は4割にとどまる。

 打開策として国が打ち出したのが(1)広域連携(2)老朽化対策(3)官民連携--の3本柱。都道府県に事業統合の推進や基盤強化計画の策定を促し、事業者(市町村)には施設維持と修繕の義務を課して収支見通しの作成・公表を求める。官民連携は、コスト削減のため自治体が施設を保有しつつ運営権を民間に売却する「コンセッション方式」の導入を可能にするのが目玉だ。

 国会では民間参入の是非が議論になった。「利潤追求の民間に任せれば、値上げと品質低下を避けられず、国民の利益にならない」と立憲民主党の石橋通宏参院議員。水道事業の労働組合を支持基盤に持つ同党には、民営化で雇用を脅かされるとの懸念もある。

 コンセッション方式の先進地とされるフランスでは、15年時点で上水道の60%が民間委託されている。しかし、料金の値上がりが大きくなるケースが多く、1984年から「水メジャー」と呼ばれる巨大企業に委託していたパリ市は、10年に再び公営に転換。委託の間の水道料金は約4・2倍に高騰したが、翌年の上水道料金は8%下落した。

 一方、南仏ニームでは、設備更新を水メジャーが放置し漏水率が30%に上ったが、行政は専門性の高さなどを理由に、19年の契約満了を待って他の民間企業に再委託する方針を決めた。

 こうした問題に対し、政府は自治体が条例で料金幅を決められる規定や国の立ち入り調査権限を盛り込むことで、安定供給を確保できるとする。だが、水道ビジネスに詳しいコンサルタントの吉村和就(かずなり)氏は「利益を重視して手抜きをする民間会社が出てきても、技術者の減った自治体では指導できない。企業を監督する国の専門機関設置を法に明記すべきだ」と訴える。

 改正案は今年の通常国会で衆院を通過し継続審議になったため、臨時国会で参院に続き衆院でも改めて可決されることで成立する。【原田啓之、パリ賀有勇】

限界迫る過疎地
  過疎地を中心に自治体の水道事業は限界に近付きつつある。特に寒冷な北海道は設備の劣化で料金が高額化しやすく、最も高い夕張市と最安値の兵庫県赤穂(あこう)市の差は約8倍に上る。

 夕張市の西隣の由仁(ゆに)町は農業が基幹産業。水道料金は全国2番目に高い。2015年、町内の浄水場の更新を諦め、広域水道企業団の浄水場から受水する方針に切り替えたのがあだになった。人口減や資材高騰により受水単価が上がり、当初想定の倍に。町は料金収入の3倍の予算を町財政から水道事業に繰り入れるが、5年ごとの値上げの検討が必要という。事業統合などについても、町の担当者は「事業の厳しい自治体同士が集まっても苦しいのは変わらない」と悲観的だ。

 厚生労働省によると、広域連携に向けた協議会などは、17年8月現在で34道府県に設置されている。だが、足並みの乱れもある。

 埼玉県秩父地方では16年度、5市町で作る一部事務組合の水道事業統合が始まった。しかし、水道料金が最も安い小鹿野町では、町の浄水場が将来廃止されることに「地元の水が飲みたい」と異論が噴出。町は17年度の費用負担の一部を見送ったが、広域化賛成の町長が当選し、18年度は一転して予算計上した。

 国が導入を後押しするコンセッション方式も、受け止め方はさまざまだ。

 浜松市は下水道の一部を海外で事業展開する「ヴェオリア」の系列企業など6社が出資した事業者に既に運営委託している。市の試算では、水道は老朽化対策などで今後50年間に約2900億円かかるとされ、20年で5割近い料金値上げが必要になる。独立行政法人化や完全民営化も含め今後の選択肢を検討した結果、コンセッション方式が最適との結論に至ったという。

 ただ、検討報告書は、市が運営会社を監督する仕組み作りなどの課題も挙げた。鈴木康友市長は「官100%、民100%はない」としており、担当者は「海外の事例を踏まえ、どこまで民間に任せるのかを分析したい」と話す。

 大阪市では、吉村洋文市長が水道局の経営形態見直しを訴えており、改正法成立を待ってコンセッション方式の一部導入も検討する。【阿部義正、松山彦蔵、奥山智己】

◆2018年11月29日 NHKニュース
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20181129/k10011728351000.html
ー民間の参入促す水道法改正案 野党は反対 厚労相は理解求めるー

 水道事業の経営安定化のため、民間の参入を促す水道法の改正案について、29日の参議院厚生労働委員会で、野党側が、民間が運営することで安定的な水道の供給が維持できなくなると反対したのに対し、根本厚生労働大臣は、経営基盤の強化が必要だと理解を求めました。

 水道法の改正案は、水道事業の経営安定化のため、老朽化が進む施設の改修を進めるため、より多くの自治体が水道事業を連携して行えるようにすることや経営に民間の参入を促そうと事業の運営権を民間に売却できる仕組みなどが盛り込まれています。

 法案は先の通常国会で衆議院で可決され、現在、参議院厚生労働委員会で審議されていて、29日は参考人質疑が行われました。

 この中では賛成の立場から、「水道事業の経営が厳しい自治体が多い中、民間による運営で効率化が進み、コストが抑えられる」といった意見が出た一方で、反対の立場からは、「災害時の対応に不安がある」とか「企業の利益だけが追及されるおそれがある」といった指摘が出されました。

 この後の質疑で、野党側は、安定的な水道の供給が維持できなくなるおそれがあるなどとして、反対する考えを示したのに対し、根本厚生労働大臣は「持続可能な水道事業のためには経営基盤の強化が必要で、民間企業の技術や経営ノウハウを活用できる官民連携は有効な対策だ」と述べ、理解を求めました。

水道法改正案のポイントは
 水道法の改正案の主な目的は経営が厳しくなった水道事業者の経営強化です。そのために推進するのが、自治体どうしの広域連携、そして民間との連携です。このうち民間との連携では、施設を自治体が所有したまま民間業者に長期間の運営権を売却する「コンセッション方式」を導入しやすくします。

 今の制度で「コンセッション方式」を導入する場合、自治体は水道事業の認可を返上する必要がありましたが、改正案では認可を持ったままでも導入できることにしています。「コンセッション方式」によって民間のノウハウを活かした経営改善などが望めるとしています。

 一方で、民間業者が水道事業を担うことで料金の高騰や質の悪化などを招かないかと心配する声も根強くあります。

 政府は、自治体が利用料金の上限を条例で定めて業務をチェックすることで、水道料金の極端な値上げなどは防げるとしています。
水道インフラは危機的状況に
水道は私たちの生活に欠かせない社会基盤ですが、大きな危機に直面しています。

 水道事業は原則として市町村が経営することになっていますが、経営環境は厳しさを増していて各地で水道料金が値上げされています。

 日本水道協会によりますと、去年4月の家庭用水道料金は、20立方メートルの場合、全国平均で3227円。10年間で163円値上がりしました。日本政策投資銀行の試算ではおよそ30年後には、さらに6割値上げする必要があるとしています。

 水道事業の経営を圧迫する主な要因は、人口減少による水利用の低下と施設の老朽化です。国内の水道施設は高度経済成長期を中心に急速に普及したため、老朽化した施設の更新時期を一度に迎えています。厚生労働省によりますと、法律で定められた水道管の耐用年数は40年ですがこれを過ぎた水道管の割合は年々上昇していて、平成28年度はおよそ15%に上りました。

 漏水や破損の事故も全国で年間2万件を超え、地震などの災害の際には、古い水道管の破裂が相次いでいます。ところが、更新作業は追いついておらず、今のペースのままだと、すべての水道管の更新には130年かかるとされています。
各自治体 賛否さまざま
コンセッション方式の導入について、各地の自治体ではさまざまな動きが出ています。

 このうち浜松市では、ことし4月に下水道事業で全国初のコンセッション方式を導入し、フランスの上下水道会社の日本法人を中心とした企業グループが25億円を支払い20年間の運営権を持つことになりました。上水道についても導入を検討しています。

 ほかに、宮城県や静岡県伊豆の国市も上下水道事業でのコンセッション方式の導入に積極的な考えで、実施に向けた調査を行うなど水道法改正を見据えた準備を進めています。

 大阪市や奈良市も導入を目指しましたが、「市民の理解が得られていない」などとして、議会の承認が得られませんでした。

 さらに、一部の地方議会では、国会に対して慎重な議論を求める動きも出ています。福井県議会はことし9月、「日常の給水事業はもとより、災害の復旧活動においても、国民生活に少なからず影響を及ぼす可能性がある」として慎重な審議を求める意見書を可決しました。

 また、新潟県議会では先月、民間業者に対するチェック体制などに重大な懸念があるとして、「住民の福祉とはかけ離れた施策だ」と指摘し、廃案を求める意見書を可決しています。
海外では民営化の失敗相次ぐ
海外では、水道事業を民営化したものの、料金の高騰や質の悪化から再び公営に戻す動きが出ています。

 オランダの国際的なNGOの調査などによりますと、フランス・パリでは1985年に民営化されましたが、その後、水道料金が7割以上上昇し、市民からの批判を受けて、2010年に公営に戻されました。

 ドイツ・ベルリンでも1999年に民営化されましたが同じく料金の高騰により、2013年から再び公営になりました。また、アメリカ・アトランタでは、1999年にコンセッション方式で民間業者に運営権が売却されましたが、施設の維持費がかさんで水質が悪化したため4年後に公営に戻されました。さらに、南米のボリビアでは2000年に民営化による水道料金の値上げをめぐって暴動が発生しました。

 いったん民営化された水道事業が再び公営に戻ったケースは、2000年から2015年にかけて37か国の235件に上っているということです。
専門家「法案チェック体制に欠陥」
元国連環境審議官で水ビジネスに詳しい吉村和就さんは、「海外では民営化が進んだ結果、サービスの悪化や料金の高騰などさまざまな問題が生じたため、再び公営化するという揺り戻しが起きている」と指摘しています。

 そのうえで、「民間に任せたときに誰が管理監督するかが問題で、経済状況や水質まで強制的に調べるチェックに、国や自治体が関わっていかなければいけない。今回の法案はその項目が抜け落ちている点で欠陥だと言え、慎重に議論するべきだ」と話しています。