八ッ場ダム湖で水陸両用バスが運航されることは、以前からダム予定地で広報されていましたが、今朝の上毛新聞で初めて具体的な報道がありました。
◆2018年12月14日 上毛新聞
ーダム湖に水陸両用バス 県内初、長野原町が導入ー
八ッ場ダム観光を振興するため、長野原町がダム湖遊覧用の水陸両用バスと観光船を導入することが13日、分かった。ダムの完成に合わせ2020年春に運航を開始する。水陸両用バスの導入は県内で初めて。
水陸両用バス1台と観光船2隻を購入し、民間企業に運営を委託する方針。バスの車体に水没5地区の伝統行事などのイラストを入れる予定。発着場所や遊覧ルートなどを今後詰め、年度内の発注を目指す。総事業費は3億円。
町の担当者は「湖面からの景色はなかなか見ることができないので、観光客が利用し滞在時間が長くなることが期待できる。周囲の観光地とも連携して八ッ場観光の目玉の一つとしたい」と話している。
同日開かれた町議会12月定例会で、事業費の一部2億円を盛り込んだ本年度会計補正予算案が可決された。
水陸両用バスは観光アトラクションとして、湯西川ダム(栃木県日光市)や東京・お台場などで導入されている。
—転載終わり—
記事にもあるように、水陸両用バスは東京や栃木県などですでに運航されています。
(写真右=東京の下町、旧中川で運航されている水陸両用バス、スカイダック東京、2018年8月29日撮影)
長野原町では、八ッ場ダムに先行して2012年に完成した湯西川ダムの状況を何度も視察しています。国土交通省関東地方整備局による以下の資料によれば、水陸両用バスは湯西川ダムのダム湖観光の役に立っているようですが、採算が合っているかどうかは不明です。
〇「鬼怒川上流ダム群水源地域ビジョン 水源郷わくわく通信 水陸両用バスは導入から10年」
http://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000643794.pdf
ダム湖観光は八ッ場ダム事業を地元に受け入れさせるための説得材料とされてきたキーワードで、ダム事業に協力する地元・長野原町は、ダム湖観光を地域振興の柱と位置づけていますが、八ッ場ダム完成後、姿を現すことになるダム湖は観光の支障になる様々な問題を抱えています。
一つは、上流から流れ込む生活排水、農業排水、畜産排水等により、ダム湖の水質が悪化することです。多くのダムと異なり、八ッ場ダムは吾妻川の中流域に建設され、上流に観光地や農場を抱えていますので、多量の汚濁物、栄養塩類が流入します。上流から流入する汚濁物の量を人口に換算すると、ダム予定地の上流には数十万人の都市があるに等しいとされます。
また、八ッ場ダムは治水を主目的としていることから、洪水期となる夏期(7月1日~9月30日)には水位を最低でも満水位から28メートル、渇水の年には47メートル下げることになっています。水位の下がったダムでは水陸両用バスや観光船の運航は無理ですから、運航期間は渇水年には限定されますが、冬季の集客も現実的ではありません。
将来の八ッ場ダム湖について、以下のページで解説しています。
★「八ッ場ダムはどのようなダム湖になるのか?」
https://yamba-net.org/wp/problem/wazawai/damuko/
写真下=ダム湖上流から流れてくる吾妻川の水が貯められている長野原取水堰。2016年12月12日撮影。夏場にはさらに水が濁り、腐臭が漂うこともある。八ッ場ダム湖には、この吾妻川上流の水と、草津白根山麓を水源とする酸性河川の中和後の水が貯水される。