八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

2019年大寒 川原湯温泉湯かけ祭り

 今年も大寒の1月20日、八ッ場ダム予定地の川原湯温泉では湯かけ祭りが行われました。
 八ッ場ダム建設地の右岸側に造成された川原湯温泉の移転地、打越代替地で湯かけ祭りが行われるようになったのは、2015年からです。例年、湯かけ祭りの時期、ダム予定地は雪に覆われているのですが、今冬は晴天の日が多く、標高500メートル台の水没予定地にも標高600メートルを超す代替地にも雪が積もっていません。
 湯かけ祭りは、昔、川原湯温泉の源泉が枯れ、困り果てた住民がニワトリを生贄にして祈ったところ、再び温泉が湧き出したので、湯をかけ合って「お祝いだ~」と喜び合ったという故事にちなんだ行事です。ダム事業により多くの住民が川原湯を去り、1979年当時200世帯余りあった川原湯地区は世帯数が40世帯足らずに減ってしまいましたが、他地区の住民も参加して祭りが続けられています。
 季節感あふれる年中行事であるからか、祭り当日はマスコミ各社がカメラを持って取材に走り回ります。祭りの見物には、今年も八ッ場ダムの関係者の他、川原湯温泉の変わらぬファンの方たちが集まりました。

◆2019年1月19日 上毛新聞 (紙面記事より転載)
https://www.jomo-news.co.jp/news/gunma/society/106093
ー紅白の旗 合戦熱く あす「湯かけ祭り」で川原湯温泉協会青年部が設置ー

  約400年前から川原湯温泉(群馬県長野原町)に伝わる奇祭「湯かけ祭り」を盛り上げようと、同温泉協会青年部(篠原健部長)は、紅白2種類ののぼり旗を新たに作り、会場となる共同浴場「王湯」近くの駐車場に設置した。紅白のふんどし姿の男性が紅組と白組に分かれて湯を掛け合うことから、旗で合戦のような雰囲気を演出する。祭りは20日午前5時から行われる。

 のぼり旗は高さ約2メートル。同温泉を発見したとされる源頼朝にちなみ、王湯入り口にも掲げられている源氏の紋所「ササリンドウ」をあしらった。八ツ場ダム本体のコンクリート打設が約9割まで進み、完成が間近に迫った祝いの意味も込めて紅白にした。
 参加者が身に着けるふんどしと同じデザインの長さ約2メートルの紅白タペストリーも、祭りに合わせて作成。当日までに王湯の正面に飾る予定だ。

 青年部は、建設や旅館関係者の地元の若手4人が所属。湯かけ祭りを知らない温泉客もいることなどから、地域の代表的な祭りの知名度向上とブランド化を図ろうと、昨夏から準備を進めてきた。
 メンバーの一人で同温泉の山木館15代目、樋田勇人さん(24)は「祭りは地域にとっての誇りであり、世代を超えて人がつながる特別なもの。お湯に感謝する伝統を継承し、多くの人に魅力を知ってもらいたい」としている。

 祭りは、温泉が枯渇した際にニワトリをささげて祈願したところ、湯が再び湧き出し、湯を掛け合って喜んだのが起源とされる。毎年「大寒」の早朝に行われている。

◆2019年1月20日 朝日新聞 (動画あり)
https://digital.asahi.com/articles/ASM1N3HRNM1NUHNB001.html
ー群馬・川原湯温泉で「湯かけ祭り」 ダム工事で移転ー

  群馬県長野原町の八ツ場ダム建設のため高台に移転した同町の川原湯温泉で20日、湯かけ祭りがあった。水没予定の旧温泉街から会場を移して5回目。零下10度近い冷え込みの中、ふんどし姿の男性約60人が温泉の湯を掛け合った。

 約400年前、枯れかけた温泉が再び湧いたことを喜び、湯を掛け合ったのが起源とされる。会場の共同浴場「王湯会館」前で、紅白2組に分かれた参加者たちは「お祝いだ」の掛け声とともに、おけに入った湯を勢いよくぶつけ合った。

 ダムは本体のコンクリート打設が9割ほどまで進み、国は2019年度内の完成を目指す。川原湯温泉協会の樋田省三会長(54)は「場所は変わっても、若い人たちにも参加してもらって今後も祭りを盛り上げていきたい」と話した。

◆2019年1月20日 産経新聞
https://www.iza.ne.jp/kiji/life/news/190120/lif19012020580030-n1.html
ー無病息災、湯に託し…氷点下の「湯かけ祭り」 群馬ー

  大寒の20日、群馬県長野原町の川原湯温泉で、ふんどし姿の男衆が無病息災を願い豪快に湯を掛け合う奇祭「湯かけ祭り」が行われた。

 夜明け前、氷点下9度と冷え込む中、9~59歳までの53人がはちまき、下帯(したおび)、足袋姿で登場。「お祝いだ!」と叫びながら湯を掛け合うと、辺りは湯煙と熱気に包まれた。

 クライマックスでは、くす玉に向かい一斉に湯を掛け、中から落ちてきた鶏を奪い合っていた。

◆2019年1月21日 上毛新聞
https://www.jomo-news.co.jp/news/gunma/society/106392
ー大寒に熱いしぶき 長野原・湯かけー

  約400年続く奇祭「湯かけ祭り」が20日早朝、群馬県長野原町川原湯の共同浴場「王湯」で開かれ、下帯姿の男性53人が「お祝いだ」の掛け声とともに豪快に湯を掛け合った。

 大寒のこの日は氷点下8度の冷え込みだったが、総大将役の篠原健さん(42)の合図で湯かけ合戦が始まると、辺り一帯に湯けむりが立ちこめた。

 温泉が枯渇した際、ニワトリをささげて祈願したところ、再び湯が湧き出し、湯をかけ合って喜んだのが祭りの起源とされる。八ッ場ダム建設で王湯が代替地に移転し5回目を迎えた。
 久保田雄大実行委員長は「ダムの完成も間近になり、もっと多くの方から注目を集める祭りになるだろう」と期待していた。

◆2019年1月21日 
https://www.yomiuri.co.jp/local/gunma/news/20190121-OYTNT50246.html
ー湯かけ 豪快…川原湯温泉ー

  長野原町の川原湯温泉で20日、伝統の奇祭「湯かけ祭り」が行われた。ふんどし姿の男衆約60人が威勢よく湯をかけ合った。

 祭りは約400年前、温泉が枯れた際、住民が祈願して再び湧き出たことを喜び、湯をかけ合ったことが始まりとされる。

 祭りが始まったのは午前5時。会場の気温は氷点下10度近くまで冷え込んだ。湯気で周りが真っ白になる中、参加者は紅白に分かれ、「お祝いだ」と叫びながら豪快に湯をかけ合った。湯しぶきを浴びると無病息災のご利益があるとされ、観客は湯がかかるたびに歓声をあげていた。

 終盤には、宙につるされたくす玉から「縁起物」のニワトリ2羽が飛び出し、参加者が我先にと捕まえた。2年連続でニワトリを捕まえた上野村の会社員、水出力さん(25)は「昨年は子どもが生まれた。今年も縁起のいいことが起きるといい」と話した。

 八ッ場ダムの建設に伴って高台に移転した温泉街で祭りが行われるのは5回目だ。その八ッ場ダムも来年春に完成する。

写真下=代替地の川原湯温泉の貯湯タンクの背後に、湯かけ祭りの会場となっている王湯会館が見える。

写真下=水没住民の移転代替地は、切土と盛土による人工造成地。祭りの会場は切土だが、その手前は打越沢を埋め立てた大規模な盛り土造成地。ダム湛水に備えて、ソイルセメント、押さえ盛り土による安全対策工事を行っている。

写真下=湯かけ祭りの由来となった川原湯温泉の元の湯源泉(旧源泉)は、今も水没予定地から湧出している。八ッ場ダム事業では、ダム湖の水が湧出口に入らないよう、井筒工法による源泉保護対策工事を行っている。現在、祭りが行われている代替地へ引湯されているのは、ダム事業によりボーリングで掘り当てた新源泉。

写真下=地の底から湧き出る自然の恵みを寿ぐ湯かけ祭りは、2014年まで水没予定地の温泉の湧出地が会場だった。総大将の久保田雄大さん(ホテルゆうあい)が湧出口を囲む石垣に乗って、紅白の選手に掛け声をかけているところ。2008年1月20日撮影。