昨日の上毛新聞一面トップ記事がYahoo!ニュースに転載されていました。八ッ場ダム湖でバンジージャンプを試験的に実施することになったというニュースです。
記事には、「水がない時期は日本一の高さを誇る竜神大吊橋(茨城県の竜神ダムのダム湖に架けられた吊り橋)に匹敵するジャンプを楽しめる」と書かれています。「水がない時期」はダムに水を貯める前だけではありません。八ッ場ダムは洪水調節の目的をもつため、洪水期(7/1~9/30)は大雨に備えてダム湖の水位を28メートル下げることがあらかじめ決められています。渇水が来て、下流へ補給を行う場合は、最大で満水位から47メートルも水位を下げることになっています。(下図参照)
八ッ場ダムの事業者である国交省は、地元住民に対して長年、ダム完成後はダム湖観光が地元に賑わいをもたらすと説明してきました。けれども洪水期の夏場は観光シーズンでもあります。水位が下がったダム湖でボートを浮かべるなどのダム湖観光は困難です。このため、水位が下がる時期はバンジージャンプで盛り上げようというアイディアのようです。
八ッ場ダム予定地は年間を通して多くの観光客が訪れる草津温泉への通り道にあります。現在も八ッ場ダムの本体工事見学会には多くの観光客が立ち寄っていますが、国交省は今後もダム行政のシンボルとして八ッ場ダムをPRしていくことでしょう。
しかし、八ッ場ダム予定地は上流に多くの観光地や牧場を抱えており、数十万人の都市と同規模の生活排水、農業排水、畜産排水等が流れ込む吾妻川の中流域に位置しています。水質の悪い八ッ場ダム湖は、夏場、水位が下がった時、はたしてバンジージャンプをするのにふさわしい景観になるのでしょうか? 川辺川ダムが凍結されている熊本県の五木村では、水没予定地に水を貯めずにバンジージャンプが行われているそうです。
〈参照〉 「八ッ場ダムはどのようなダム湖になるのか?」
「五木村バンジー」
◆2019年1月23日 上毛新聞
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190123-00010001-jomo-l10
ー八ツ場ダム湖にバンジー 湛水前 高さ国内有数 今春から試験的に実施 ー
観光活用で長野原町
八ツ場ダム観光の一環で、群馬県長野原町が八ツ場大橋からのバンジージャンプを4月下旬から秋にかけて試験的に実施することが22日、分かった。期間中にダムに水をためる試験湛水(たんすい)が予定されるが、町によると、水がない時期は「日本一の高さを誇る竜神大吊橋(100メートル)に匹敵するジャンプ」を楽しめる。ダム完成後の2020年春の本格スタートを目指しており、観光船や水陸両用バスと並ぶ、人気レジャーになりそうだ。
みなかみ町で諏訪峡大橋の「みなかみバンジー」、赤谷水管橋の「猿ケ京バンジー」を運営しているスタンダードムーブ(東京、ボー・リタリック社長)と業務提携する。みなかみの2カ所では15歳以上を対象に料金1万円前後で実施しており、八ツ場大橋での対象や料金は今後詰める。受付事務所を吾妻川左岸の川原畑地区にある駐車場に置き、ダム完成後は右岸の川原湯地区に移す予定だ。
ダム湖に架かる橋を利用したバンジージャンプ構想は4年ほど前に浮上し、15年11月に同社と事業提携契約を結んで準備を進めてきた。ダム完成後の湖面からの高さは最大50メートル程度となる見通しで、みなかみバンジーの42メートル、猿ケ京バンジーの62メートルと遜色ない。
湖面を利用するレジャーとして、町は観光船や県内初となる水陸両用バスを導入する準備を進めており、カヌーやカヤックなどの利用も見込まれている。ダム周辺ではグランピングやグラウンドゴルフ場、屋内運動施設、公園などの建設計画が進んでおり、町はこうした施設も合わせて活用して誘客につなげる。
町の担当者は「湖面を利用したアクティビティを充実させ、八ツ場に来れば自然を楽しみながらさまざまなアウトドア体験ができるイメージを発信したい」と話している。
八ツ場大橋
八ツ場ダム建設に伴う生活再建事業の一環で整備され、2014年に開通した。県道川原畑大戸線の一部として川原湯、川原畑両地区の代替地をつなぐ、堤体に最も近い橋。湖面に架かる橋は八ツ場大橋のほかに、不動大橋、丸岩大橋などがある。
—転載—
写真下=上記の記事に掲載されている湖面橋の八ッ場大橋より下流側を望む。2019年1月21日撮影。八ッ場ダム工事事務所のフェイスブックによれば、ダム本体工事は非越流部のコンクリート打設が完了し、昨年12月26日に本体JV主催の完了式開催。現在は越流部のコンクリート打設、非常用洪水吐設備の据付作業などが行われているという。(参照:国交省関東地方整備局八ッ場ダム工事事務所facebook 2018年12月27日)
写真下=八ッ場大橋より上流側を望む。2019年1月21日撮影。この時期、例年は雪景色だが、今冬は12月から雨も雪も降らない日が続いている。吾妻川の水は、殆どが水利権を持つ東京電力の導水管を流れており、このままではダムに水を貯められない。国交省は試験湛水、さらにダム完成後の貯水のために東京電力に減電補償金を支払い、水利権を取り戻さなければならないが、東電と国の交渉は終了していないという。
写真下=八ッ場大橋。対岸の崖の上に、川原湯温泉が移転した打越代替地が見える。2019年1月29日撮影。