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ブラジルの鉱山ダム決壊についての続報

 1月25日に起きたブラジルの鉱山ダムの決壊事故についての続報を各紙が伝えています。
 この悲惨な事故による死者は、行方不明者も含め300人を上回ることが予想され、事故原因を追究する声が高まる中、ダムを管理するヴァーレ者の社員8人が逮捕される事態となっていますが、同社のファビオ・シュヴァルツマン社長は議会公聴会において、「(ブラジル国内におよそ500基の鉱山ダムを所有している)ヴァーレ社はブラジルの“宝石”だ。被害の規模がいかに大きかろうと、事故による責任を負わされるべきではない」と発言したとのことです。

◆2019年2月14日
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190214-00000018-jij_afp-int
ーブラジルの鉱山ダム決壊、周辺町村で河川汚染 死者は166人にー

【AFP=時事】ブラジル南東部で先月25日に発生した鉱山ダムの決壊事故により、周辺の10町村で河川汚染の被害が続いている。同事故ではこれまでに166人が死亡、155人が現在も行方不明となっている。

  同国ミナスジェライス(Minas Gerais)州の水資源管理当局によると、ブルマジーニョ(Brumadinho)近くの鉱滓(こうさい)ダムが決壊したことで鉱物を含む泥がパラオペバ(Paraopeba)川を120キロにわたって汚染。川沿いの町村に影響を及ぼしている。

 当局は地域住民に川の水を飲んだり、家畜に与えたり、農業用に使用したりしないよう注意を呼び掛けている。ミナスジェライス州の環境当局の調査では、パラオペバ川から鉛やクロムなどの有毒な金属類が検出されたという。

 地元メディアが当局幹部の話として報じた内容によると、汚染された泥がパラオペバ川支流沿いの水力発電所まで到達する可能性は低いという。

 鉱山ダムを所有していたのは鉄鉱石採掘世界最大手のブラジル企業バーレ(Vale)で、決壊により数百万トンもの廃棄物が流出。同州内で発生したバーレが絡む事故は過去3年間で2回目だという。【翻訳編集】 AFPBB News

◆2019年2月16日 サンパウロ新聞
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190216-00010003-saopaulo-s_ame
ー【ブラジル】ヴァーレ社員8人を逮捕 ダムの危険性認識していた疑いー

 ブラジル南東部、ミナス・ジェライス州のブルマヂーニョにある資源開発大手ヴァーレ社(Vale S.A.)の鉱山で先月25日に鉱山ダムが決壊し、周辺住民や鉱山関係者ら166人が死亡、今なお147人が行方不明(14日時点)となっている件で、捜査当局は15日朝、ヴァーレ社の社員8人をミナス・ジェライス、サンパウロ、リオ・デ・ジャネイロ各州内で逮捕した。

 同日付伯メディアによると検察庁は、「ヴァーレ社が維持・管理している鉱山ダムの決壊の刑事責任について調べる」ことが逮捕の目的だとしている。また、逮捕を決定した裁判官は、ヴァーレ社の8人の社員は「(決壊した)鉱山ダムの不安定さを十分に認識していた」、そして「行動を起こさなかった」としている。

 検察によると、逮捕された8人のうち4人は管理者(うち2人は幹部)で、他の4人は技術部門の社員。そしてこれらの中には、決壊した鉱山ダムの安全性認証に関与していたテュフズ-ド社(TUV SUD)のエンジニア、マコト・ナンバ氏による連邦警察への説明の中で、ダムは問題なく安定しているとする報告書に署名するようにナンバ氏に圧力をかけたとして名指しされた者が含まれている。

 ミナス・ジェライス州文民警察環境犯罪捜査局の捜査官によれば、この日朝にはヴァーレ社の社員8人が逮捕されたほか、社員らの住居の捜索・押収令状9通が執行され、ダム関連の文書が保管されているとみられるパソコン、携帯電話、ハードディスク、USBメモリなどが押収された。

 ヴァーレ社は、同社は当局に最大限協力しており、影響を被った各家族への無条件の支援とともに、今後も引き続き事実を明らかにするための調査に貢献するとの声明を発表した。その一方で、同社のファビオ・シュヴァルツマン社長は14日に開かれた連邦下院議会の公聴会で、ヴァーレ社は「自社のダムで起こった一つの事故によって非難されてはいけないブラジルの宝石だ」などと発言している。

◆2019年2月16日 ニッケイ新聞
https://www.nikkeyshimbun.jp/2019/190216-22brasil.html
ー《ブラジル ダム決壊事故続報》死者行方不明者300人超も、ダム管理会社社長「我が社は国の宝石、責任ない」と発言ー

【既報関連】「ヴァーレ社はブラジルの“宝石”だ。被害の規模がいかに大きかろうと、事故による責任を負わされるべきではない」――1月25日に発生した鉱山ダム決壊事故に関する議会公聴会に呼び出された鉄鋼大手ヴァーレ社のファビオ・シュヴァルツマン社長は14日そう発言して、「宝石なら、なぜ人を殺していいのか」と被害者家族から反発を受けたと14、15日付けブラジル・メディアが問題視している。
 同社長は「ヴァーレ社が事故防止のために行ってきたことが機能しなかった。そしてダムが決壊したことは認める」としつつも「ヴァーレは、ダム崩壊を望んだわけでも、崩壊させたわけでもない。事故は不可避だった」と言い訳した。
 前日の13日には、ミナス州検察が連邦高等裁に「ヴァーレは利益を安全より優先した。会社幹部たちは保身に走っている」と書かれた文書を送ったばかりだ。
 シュヴァルツマン社長は、ヴァーレ社がブラジル国内におよそ500の鉱山ダムを所有しているとし、「ダムの強度監査、事故防止策実施のプロセスにあまり煩雑な手続きを課さないで欲しい」と、まるで「早急に対応したいが、それを行政や司法は邪魔しないで」と言わんばかりの物言いだった。
 2015年11月にマリアナで事故が起きたばかりなのに、19年1月までブルマジーニョダムの対応は遅れたと詰問されたシュヴァルツマン社長は「我々にも限界がある。マリアナで決壊したのはサマルコ社所有」と責任逃れを続けた。ただし、サマルコはヴァーレの子会社だ。
 シュヴァルツマン社長はさらに、「事故後、全てのダム管理をオンラインで一元化し、モニター監視も24時間体制にした」と語った。

ヴァーレ職員8人逮捕

 シュヴァルツマン社長の発言の翌日、15日朝にミナス、リオ、サンパウロ州で、ダム決壊事故の調査関連作戦が行われ、同社社員8人が逮捕された。
 ミナス州検察は逮捕の目的を、「ブルマジーニョダム崩壊事故の刑事的責任者の追及」としている。逮捕された8人の内、2人は幹部クラスで、2人は管理職、4人は技術者だ。
 その内の一人、アレシャンドレ・カンパーニャ氏は、1月29日から2月6日まで逮捕されていた、ヴァーレの下請け会社の社員ナンバ・マコト氏から「ダム強度証明書類に署名を強制された」と名指しされた人物だ。
 ダム決壊事故発生から3週間、死者の数は166人に達し、147人の行方不明者の生存も絶望的だ。事故現場では今も遺体の捜索活動が続いている。

◆2019年2月7日 BBC
https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-47153710
ー【解説】ブラジルのダム決壊、疑問点を整理ー

デイヴィッド・シュクマン、BBC科学編集長(ブラジル・ブルマジーニョ)

ブラジル南東部ミナスジェライス州で1月25日に鉱山用のダムが決壊して以降、毎日のように新しい疑惑が持ち上がっている。
救助隊がブルマジーニョ近郊で遺体の捜索を続ける中、検察当局は鉱山を保有する資源開発大手ヴァーレを捜査し、危険性や時期について知っていたかを調べている。

これまでに確認された死者は121人、行方不明者は226人に上っている。

惨事から1週間がたち、主張と反論の嵐が吹き荒れている。事態を把握するために、いくつかの疑問点を整理してみよう。

問題のダムの検査頻度は
ヴァーレによると、ダムではドイツの契約業者によって「独立した外部検査が行われていた」という。

ダムの検査は2週間に1回で、直近では昨年のクリスマス直前に行われた。検査結果はブラジルの全国鉱業局に報告されていた。

また、1月には2件の「構造検査」が行われていたという。

これは一見、権威のある検査のように思えるが、実際にどのような検査だったのか、そして何より、どれほど総合的な検査だったのか、正確なことは明らかになっていない。

ここからさらに、鉱山検査の仕組みそのものについても問題が持ち上がった。ヴァーレの声明では、検査については鉱業局に「報告していた」とあるが、鉱業局が検査していたとは書かれていない。

ブラジルでは鉱山運営会社が検査に出資していることが、検査体制の欠陥だと批判する声もある。

また、ブラジル全土に800カ所ある鉱山用ダムの検査結果を検証する政府職員の数は非常に少なく、適切な機器や車両さえない状態のことが多いという指摘も出ている。

警報システムはあったのでは
ヴァーレはダムに監視カメラを設置していたほか、下流の居住地域にはサイレン網を敷いていた。

しかし、こうしたシステムが最も必要だった当日、警報システムは作動しなかった。

家屋15軒が泥に埋もれてしまった村の住民マリオ・フォンテスさんによると、自宅に一番近いサイレンは丘の上にあった。大量の鉱山廃棄物が迫っても、サイレンのわずか数メートル先を通過しても、サイレンはうんともすんとも言わなかったという。

ヴァーレの説明では、警報システムは自動で作動するものではなく、緊急センターから手動で動かすものだという。そして、今回の決壊では事態の進行があまりに速く、作動させられなかったと認めた。

緊急センターは鉱山地帯の外に設置されている。重要施設はいかなるダム事故からも安全な位置に置いておこうとしたのかもしれない。

つまり、緊急センターの設置場所はあまり助けにならなかったということだ。予測していなかった方向から流れてきた鉱山廃棄物によって、緊急センターも覆われてしまった。

地元メディアではこのほか、緊急センターで働いているはずの従業員2人がこの日は鉱山で働いており、緊急センターへ戻る前に決壊で亡くなってしまったという説明もされている。

どちらにせよ、下流に住む人々は誰も、自分たちに何が迫っているのか知るすべがなかった。

ヴァーレはダム決壊の危険性を評価していたのか
答えは「イエス」だ。ヴァーレは昨年、ダム下流地域の地形について詳細な分析を行うため、専門家調査団を雇っていた。

マリオ・フォンテスさんは、専門家が彼の家に来て「地理参照」と呼ばれる調査を行い、色々な場所で標高を測っていた際の様子を話してくれた。

自分や他の住民の家についてもデータを集め、建築様式や不動産としての価値を聞かれたという。

フォンテスさんは、これはダムが決壊した際の被害分析だろうと疑ったが、詳細は教えられなかった。

この調査についてその後、何か情報提供はあったのだろうか。ヴァーレは誰が危険にさらされているか、その結論を住民と共有したのだろうか。

「何もなかった」とフォンテスさんは教えてくれた。

「警告も訓練も一度もなかった。私たちがこういう危険にさらされているという情報も一切なかった」

ヴァーレは、「ダムが決壊したという仮定的状況に基づいた技術研究」を土台に、緊急時対応計画を策定していたことを認めている。

ブラジルではこうした計画を作ることが法律で定められているが、なぜ去年まで行われていなかったのかは明らかになっていない。

計画は恐らく、コンピューターで泥が流れる様子をシミュレーションし、どの地域が最も危険性が高いかを特定するものだっただろう。

しかしその結果を示した地図は公にはなっていない。多くのジャーナリストに混じって私も入手を試みているが、今のところ成功していない。

ヴァーレは、ここブルマジーニョの市役所を含む地元の自治体と計画を共有したと離している。では、自治体の反応はどうだったのか?

ブルマジーニョのアヴィマル・バルセロス市長は、ヴァーレの計画は「非常に簡潔なもの」で、同社はブックレットや地元住民への訓練を提供すべきだったと話している。

今後どうなる?
徐々に全体像が明らかになっているものの、全てが解明されるには数カ月かかるだろう。

すでに、ヴァーレ関係者が少しずつメディアに口を開くようになってきた。これは、雇用や収入をヴァーレに大きく依存しているコミュニティーとしては大きな前進だ。

現時点では、何百もの家族が悲しみに沈んでおり、多くの人が怒っていると話している。

鉱山で義父を亡くしたエリウ・カマラ・デ・シケイラ・ジュニオルさんは、「たくさんの夢が泥に埋もれてしまった」と話した。

「ヴァーレで仕事をすることを楽しみにしていた若者の夢も、定年退職して田舎で暮らすことを心待ちにしていた大人の夢も、全て今は泥の下だ」

—転載終わり—

 これまでの記事は、以下のページにまとめています。

「ブラジルの鉱業用ダム決壊、7人死亡150人行方不明」
「ブラジルの鉱山ダム決壊についてのニッケイ新聞の報道」