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駿河湾の桜エビ不漁で静岡県が富士川水系水質調査、上流ダム堆砂で満杯状態

 駿河湾では国内で唯一行われてきたサクラエビ漁の不漁が続いています。昨年は、春漁が312トンと記録的な不漁で、秋漁は漁期を設けたものの一日も水揚げできなかったとのことです。
 サクラエビ不漁の原因として、駿河湾に注ぐ富士川水系の雨畑ダムが疑われています。雨畑ダムは日本軽金属が富士川水系早川支流の雨畑川に1967年、アルミニウム製造の電力確保のために建設した発電専用ダムです。完成から半世紀以上たつ雨畑ダムは堆積が進んでいます。国土交通省の最新資料(情報開示資料)によれば、雨畑ダムは総貯水容量1365万立方メートル、堆砂容量は600万立方メートルですが、平成28年度の堆砂量は堆砂容量の二倍以上の1274.4万㎥と、総貯水容量に近づいています。
「全国のダム堆砂データの最新情報(平成28年度)を国交省が情報開示」
 現地を訪問した人のブログ等から、ダム湖の周辺では崩落しているところが多く、大量の土砂がダムに流れ込んでいることがわかります。

 2/14の静岡新聞によれば、静岡県は上流の山梨県に共同調査も含めた協議を打診するとのことです。山梨県側では、「上流域にある別のダム湖の放水や、土質による濁りを指摘する声も上が」っているとのことです。昨年12/21付けの同紙には、富士川と早川の合流点を上空から撮影した写真が掲載されており、「早川から流れ出た水が濁っていることが分かる」と説明されています。
 県境をまたぐ富士川の水質調査について、国は何も関与しないのでしょうか。

 こちらのブログでは、静岡新聞が元旦から連載したという詳しい記事の情報が載っています。
 →「早川町雨畑ダムには堆砂がいっぱい」
 
◆2019年2月14日 静岡新聞
http://www.at-s.com/news/article/politics/shizuoka/599875.html
ー富士川濁り、支流からか サクラエビ不漁で静岡県が水質調査ー

 由比港漁協(静岡市清水区由比今宿)がサクラエビの不漁との関係を指摘する富士川水系の濁りについて、降雨により富士川支流の早川(山梨県早川町)で基準値を超える強い濁りが発生し、本流の富士川に流れ込んでいるとみられることが、静岡県が13日に発表した水質調査結果で明らかになった。県は調査を継続し、必要に応じて富士川の共同調査に向けた協議を山梨県に打診する方針。
 静岡県は1月11、30日と2月4日、東京の企業が所有する山梨県の3カ所の堰(せき)と同区蒲原の工場放水路、周辺の駿河湾で水を採取、土砂など濁りの原因となる懸濁物を測定した。
 4日の調査では前日に降った雨の影響もあり、早川と富士川が合流した直後の塩之沢堰で1リットル当たりの懸濁物量が670ミリグラム(基準値は25ミリグラム)まで上昇した。一方、早川とつながりがない支流の波木井堰は33ミリグラムで、塩之沢堰と大幅な差が出た。
 同漁協は堆砂が進む早川上流の雨畑ダムが濁りの主因と見る一方、山梨県側では上流域にある別のダム湖の放水や、土質による濁りを指摘する声も上がる。静岡県の担当者は雨畑ダムと濁りの関係は「不明」とするものの、「早川の方面で何らかの濁りが発生した可能性がある」と説明する。県水産業局の中平英典局長は「必要があれば共同調査も含め協議を山梨県に打診する」などと述べた。
 塩之沢堰の水は導水管を通って複数の水力発電施設で使われ、同区蒲原の工場放水路から駿河湾に流れ出る。同放水路の懸濁物は基準値を超える427ミリグラムだった。同漁協の宮原淳一組合長(78)は、「濁りの原因が早川であれば山梨県の協力が必要。土砂の行方を知りたい」と今後に注目する。県の発表では、県内の富士川水系は降雨の影響が少なく、全5地点の懸濁物は基準値内だった。

 ■静岡県内5カ所で採水 県、5回目の現地調査
 駿河湾のサクラエビが記録的不漁となっている問題で県は13日、富士川水系の濁りについて5回目の現地調査を行った。県水産技術研究所富士養鱒場(富士宮市)の職員2人が富士、富士宮両市の富士川本流と支流の計5カ所で水を採取した。
 調査は山梨との県境付近と、富士川橋付近の本流、支流の稲子川、芝川、稲瀬川で実施。川岸で水温とpHを測定し、透視度計で濁り具合も確認した。同日は全5カ所で比較的水は澄んでいた。5地点の水は同養鱒場でさらに分析する。

◆2019年2月13日 日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO41229150T10C19A2L61000/
ー不漁のサクラエビ、春漁3月24日から予定 操業不透明 ー

 2018年に記録的な不漁だった駿河湾特産のサクラエビの19年の春漁について、漁業者でつくる静岡県桜えび漁業組合(静岡市)は漁期を3月24日から6月5日までとした。ただ資源はなお回復途上にあり、実際に漁に踏み切れるかは見通せていない。

 このほど開いた船主会の会合で漁期について決定した。例年は前年12月に決めるが、先送りしていた。

 組合幹部は「資源回復が第一だが、(漁業者の)経済的な問題も含んでいる。総合的に判断した」と説明した。

 春漁の操業方針は21日の組合総会で選ぶ新体制で検討する。漁業者や加工業者、公的機関などでつくる「情報連絡会」も2月中に会合を開いて協議する。漁業者による自主的な操業範囲の限定や総量規制なども議題に上りそうだ。

 組合は年明けから春漁開始までに計3回の資源調査を計画している。すでに初回を1月24日に実施し、県水産技術研究所が結果を分析中。2月中旬に2回目、3月の漁期が始まる直前に3回目を予定している。調査の結果を操業方針に反映する考えだ。

 サクラエビ漁は例年春と秋に約2カ月ずつ実施する。18年は春漁が記録的不漁で、秋漁は漁期を設けたものの1日も水揚げできなかった。

◆2018年12月21日 静岡新聞
http://www.at-s.com/news/article/politics/shizuoka/580396.html
ー静岡県、富士川流域濁り調査へ サクラエビ不漁への影響見極めでー

 サクラエビの記録的な不漁を受け、静岡県が富士川流域の水の濁りの調査に乗り出す。サクラエビの主な産卵場とされる富士川河口部で水の濁りを指摘する声が出ているため、川をさかのぼって濁りの原因を突き止める。また、上流域での生態系の変化がサクラエビの不漁に直接的に影響しているかも見極める。20日までに関係者が明らかにした。
 県水産業局などによると、調査は25日に行う。県水産技術研究所(焼津市)の研究員や山梨県側の関係者が参加する。川から水を採取し、濁度計を使用して調べる予定。県境をまたいだ調査を県が行うのは異例。
 関係者によると、富士川の支流の早川(山梨県)上流部には、台風などで堆砂が進んだ雨畑ダムのダム湖があり、そこから流れ出る水が下流域の汚濁の原因の一つとみられるという。早川流域には採石場などが複数あり、元々の土質がもろく、濁りやすいとの指摘もある。
 また、山梨県内の富士川中流域で取水した水を発電に利用している静岡市清水区の工場から駿河湾に注ぐ放水路から出ている排水が「黒く濁っている」との報告があり、県は併せて調査する。

  放水路付近の海には放水路から出されたとみられる砂が堆積し、由比港漁協は11月下旬に付近の泥を採取。民間の研究機関へ成分調査を依頼している。
 ただ、専門家からは「サクラエビの不漁に富士川や工場放水路からの水の濁りが影響しているかは不明」との声も出ている。

 ■春漁向け連絡会設置 19年1月関係団体
 サクラエビ春漁に向け、漁業者の自主規制の在り方や操業期間などについて専門家、漁業者、加工業者らがそれぞれの見地から意見交換する常設の「情報連絡会」が2019年1月に発足することが、20日までに分かった。静岡県が事務局を務める予定。
 サクラエビ漁の関係者が一堂に会する機関が設置されるのは初めて。操業を巡って意見対立することが多い漁業者と加工業者に同じテーブルで議論してもらう。サクラエビの生態に詳しい大学教授らもメンバーに加わり、科学的見地から意見してもらうという。
 関係者によると、実際の操業方針はサクラエビの船主約80人で構成する「船主会」で決定するが、情報連絡会での意見を参考にしてもらう。
 県桜えび漁業組合は今年の秋漁は「35ミリ以下のエビが3分の1以上いる群れには投網しない」などの厳しい自主規制を敷いて臨んだ。産卵を間近に控えたエビが多い春漁では「さらに厳しい規制が必要」との声が既に出ていて、議論は紛糾する可能性もある。

◆2018年12月31日 THE PAGE
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181231-00010000-wordleaf-soci
ー歴史的不漁のサクラエビ 駿河湾に何が起きているのか?ー

 サクラエビが生息するのは、駿河湾、相模湾、東京湾と国外の台湾周辺に限られている。漁が行われているのは国内では駿河湾だけ。由比港と大井川港の2つの港に水揚げされて競りにかけられ、静岡県内、首都圏、そして全国へと出荷される。駿河湾のサクラエビ漁は3月中旬~6月上旬にかけて春漁、10月~12月にかけて秋漁が行われているが、2018年の春漁の水揚げ量は前年の811トンの半分にも満たない312トンと記録的な不漁だった。