ダムカレー論争と八ッ場ダム

 ダムカレーの是非がネット上で議論になっていました。
 以下の記事によれば、被災地の復興に関わる土木関係者がダムカレー、ビルカレーという名のカレーがあることを知り、「ダムカレーは不謹慎だ」と感じていることを伝えた記事に多くの批判が寄せられ、記事が削除されました。ダムカレーを推奨する日本ダムカレー協会は、「多くのダムカレーは、過疎化に悩むダム水源地の方々が考えだしたものです。」とし、ダムカレーを不謹慎だとする意見を批判したということです。

 多くのダムカレーは、ごはんをダム、カレールーをダム湖に見立て、ごはん(ダム)にカレールー(ダム湖の水)をかけて崩しながら食べます。ダムカレーに怒りを覚えたという気持ちに対して、ダムカレーは水源地の方々が考え出したものだという意見の方が支持されたという結末ですが、ダムカレーに嫌悪を感じる住民も「水源地の方々」です。

◆2019年2月22日 BIGLOBEニュース
http://news.livedoor.com/article/detail/16058872/
ー「ダムカレーは不謹慎」批判記事が物議 日本ダムカレー協会が反論「過疎化に悩むダム水源地の方々が考えだしたもの」ー

 ダムをモチーフにしたカレー「ダムカレー」が「不謹慎」と訴える記事が建設系のメディアに掲載され物議を醸している。国内のダムカレーの情報を集めている日本ダムカレー協会は、この主張に「過疎化に悩むダム水源地の方々が考えだしたもの」と反論。多くの批判が集まり、不謹慎と訴える記事は削除された。

 物議を醸したのは、建設系メディア「施工の神様」に掲載された「ダムカレーは不謹慎だ、ふざけるな!被災地の土木屋が大激怒」という記事。執筆者は災害の復興工事に携わっている土木技術者で、「ダムカレー、ビルカレーという、こうした名称のカレーの存在を知った私は、実に不愉快で、怒りを感じざるを得なかった」という。

 執筆者によると、ごはんをダム、カレールーを貯水池に見立てた「ダムカレー」の壊して食べるという行為は、多くの人が亡くなり、家屋やビルが倒壊した悲惨な災害を連想させ、「悪ふざけにもほどがある」とのこと。「被災などが続いているこの状況で、あまりにも軽率な行動ではないだろうか」、被災地の状況を見ても「ダムカレー、ビルカレーを壊して食べることができるだろうか」と疑問を呈している。さらに、「GUCCIのセーターが黒人差別を連想させるとして販売中止となったが、あの事件とも似た不快感を、ダムカレーとビルカレーに感じざるを得ない」とも主張。「私にとって、ダムカレー、ビルカレーは、施工管理技士に対する侮辱であるとハッキリ言わせてもらう。やめていただきたい!」と締めくくった。

 この記事に対し、日本ダムカレー協会はTwitterで「多くのダムカレーは、過疎化に悩むダム水源地の方々が考えだしたものです。ダムカレーで、少しでも活気が取り戻せたらという気持ちから誕生しています」とコメント。他にも、「食べるときに壊れるのはあくまでライスであって、ダムじゃないぞ!」「ダムカレーは『郷土愛』『ダム愛』から生まれた芸術作品なんだ。狭量な批判など一切気にせず作り続けてほしいと思います」といった批判が寄せられ、記事は削除された。

—転載終わり—

 八ッ場ダム湖予定地でも、道の駅「八ッ場ふるさと館」が2013年に開業すると、さっそく八ッ場ダムカレーが提供されるようになりました。
 八ッ場ダム予定地もダムを抱える他の地域と同様、過疎化に悩んでいますが、上流に草津温泉、万座温泉、浅間高原などわが国有数の観光地を抱え、水没地に沢山あった食堂や土産屋が立ち退いたこともあり、道の駅は開業当初から多くの観光客で賑わっています。

 八ッ場ダムカレーは一般的なダムカレーと異なり、ダム堤が瀬戸物でできており、カレーとルーが仕切られています。食堂にはダムカレーの食べ方を詳しく解説したポスター(写真右)が貼られていますが、作法通りに食べる人はあまりおらず、大抵の観光客は邪魔なダム堤(仕切りの瀬戸物)をはずして、ごはんとルーを混ぜて食べているようです。
 八ッ場ダムカレーのメニューには、ダムカードがおまけにつきます。八ッ場ダムカレーには豚カツののったより豪華なメニューもありますが、なぜかカツカレーの方はダムカードがつきません。八ッ場ダムカレーの器は、八ッ場の名を冠した多くの商品と共に売店で販売されています。

 八ッ場食堂にはすいとんに似た「おつみだんご」というメニューもあり、こちらは国交省と連携してダム観光に力を入れている跡見学園女子大・篠原ゼミの学生らが笑顔のポスターで推奨しています。ポスターを見て、「おつみだんご」を考案したのは大学生だと勘違いする観光客もいますが、「おつみだんご」は郷土食です。

 今や全国のダムでダムカレーとダムカードが提供され、ダム観光のツールとなっています。八ッ場ダムでは国交省とダム本体業者が運営する「なるほど!やんば資料館」にも全国のダムカレーマップが置いてあります。
 ダムカードは国交省では珍しい女性のキャリア官僚、三橋さゆり氏(現・国交省利根川上流河川事務所長)が考案したということです。(参照:「【ダム協会講習会】ダムカード誕生秘話も披露! ダムを生かした地域振興の実例学ぶ」(建設通信新聞)

 ダムカレーやダムカードに目を奪われる人たちには、ダムによる地域の破壊、自然環境の破壊などのマイナス面は目に入らないかのようです。

写真下=2019年2月21日、展望台「やんば見放台」より撮影。
川原湯地区の水没予定地から打越代替地へ移転した住民に、「展望台から川原湯を見てごらん。木が伐られて丸裸にされて、山が泣いている。たまらないよ。あの景色を見なくっちゃ、みんなわからないんだ」と言われた。

名勝・吾妻峡の八ッ場ダム本体工事現場。昨年11月にはコンクリート打設高が9割に達し、12月26日に非越流部のコンクリート打設完了式が本体工事業者(清水建設JV)によって行われた。(参照:国交省発行「八ッ場ダムニュース」2019年1月号)

ダム堤の右岸側には水没予定地にあった川原湯温泉が移転した打越代替地がある。
打越代替地ではダム湛水に備え、宅地造成等規制法の基準を満たすための安全対策工事を実施している。