八ッ場ダム事業における地すべり対策と代替地の安全対策についての記者会見

 昨日26日、当会では、八ッ場ダム事業における地すべり対策と代替地の安全対策の問題を訴えるため、群馬県庁記者クラブにおいて会見を行いました。
 記者会見の配布資料はこちらにアップしています。➡ https://yamba-net.org/46170/

 八ッ場ダムは利根川支流の吾妻川中流域が建設地であるため、山奥のダムと異なり、多くの住民の居住地であったところが貯水池になります。このため、貯水池は水没住民の移転代替地を含む多くの住宅や施設に囲まれることになります。また、八ッ場ダム予定地には、地質が脆弱なところが数多くあります。
写真右=川原湯地区の水没住民の移転地としてダム堤の右岸側に造成された打越代替地。ダム湛水に備え、安全対策工事を進めている。

 このため、国土交通省は今年予定している試験湛水に備えて、現在、地すべり対策と代替地の安全対策を実施中です。これらの対策は、ダム貯水池周辺の各所で行われてきた地質調査などをもとにしており、対策工法の選択を含む経緯は、膨大な報告書としてまとめられています。

 地すべり対策についてはダム計画当初から必要とされ、代替地の安全対策は2011年のダム検証で初めて明らかにされました。この間、対策費の予算は、ダム関連事業の肥大化、総事業費の増額などの影響を受けて増減を繰り返してきました。
 2011年のダム検証と2016年の二度目の総事業費の増額(ダム基本計画第五回変更)の際には、地すべり対策と代替地の安全対策の対象箇所と工法が明らかにされましたが、現在に至るまでに、対象箇所は減らされ、対策工法もより安価なものへ変更されてきています。ダム事業の残事業費が限られる中、安全対策費用が圧縮される可能性があります。

 当会では、国土交通省への情報公開請求により、これらの対策に関する報告書を入手し、地質等の専門家に分析・検討していただきました。その結果、現在の対策工事では、ダム貯水池周辺の安全が確保できるとは言い難いことが明らかになりました。

 記者会見の記事をお伝えします。

◆2019年2月27日 上毛新聞
ー代替地や貯水池 「安全対策に問題」 八ッ場あしたの会ー

 新年度完成予定の八ッ場ダム(長野原町)について、市民グループの八ッ場あしたの会は26日、県庁で記者会見し、水没予定地の代替地や貯水池周辺で、地滑りなどが起きないようにする安全対策に問題があると指摘した。ダムに水をためる前に対応を検討すべきだとしている。

 国土交通省の地質調査や、対策工事に関する資料を情報公開請求で入手し、専門家の協力で検討した。その結果、安全対策を決める際に用いるデータの評価などについて、不適切とみられる項目が見つかったという。当初予定より安価な工法に変更されたとして「事業費を圧縮するためではないか」とみている。国土交通省に近く公開質問書を送る。

 国土交通省八ッ場ダム工事事務所は上毛新聞の取材に、同会の指摘内容を把握していないとしつつ「対策については適正に調査検討を行い、安全性を確保している」とした。

◆2019年2月27日 しんぶん赤旗
https://www.jcp.or.jp/akahata/aik18/2019-02-27/2019022701_04_1.html
ー地滑り対策地半減 八ツ場ダムに警鐘 盛り土強度にも疑問 群馬 地質研究者ら会見ー

 「いま、最低限の対策をとらないと重大な事態を引き起こしかねない」―。不要不急の大型公共事業と指摘されながら国土交通省が工事を推し進めてきた八ツ場(やんば)ダム(群馬県長野原町)。今年中にダムに貯水して機能を確かめる「試験湛(たん)水」を行う予定です。それを前に地質の研究者らが26日、群馬県内で会見を開き、同ダムの不十分な地すべり対策に警鐘を鳴らしました。

今年試験湛水へ
 会見をしたのは、伊藤谷生・千葉大学名誉教授ら地質などの専門家です。伊藤さんらは、同ダム建設の中止と建設予定地の地域再生を求めて活動する「八ツ場あしたの会」が情報公開で入手した国交省の資料を調査しました。

 その結果、2011年の計画では、10カ所にするはずの地すべり対策が17年には5カ所に減らされていました。

 また、同ダム水没予定地の住民は、ダム湖を見下ろす造成地に建設した代替地に移転しています。高い盛り土の上に造られたため、11年の時点では5カ所で鋼管杭(くい)やアンカーを打ち込んだ地すべり対策をする予定でした。

 ところが、17年に2カ所ではなんら対策をしないことになりました。さらに残り3カ所も杭の打ち込みをやめ、「押さえ盛り土」などの安価な工法に変更されていました。

 伊藤さんは「温泉地帯にダムを造るというのはあまりないのではないか。押さえ盛り土でセメントを使うが、酸性に弱い。水没することでセメントの劣化が懸念される」と指摘しました。

 さらに、伊藤さんらは、盛り土の強度について国交省の報告書に「最初に結論ありきで、恣意(しい)的に数値が操作されている疑いがある」と指摘しました。

 「あしたの会」は3月中に国交省関東地方整備局に公開質問状を提出する方針です。

 八ツ場ダム工事事務所は「調査検討を行い、必要に応じて安全性を確保しています」と、本紙の取材に答えました。同ダムは、国と1都5県で5320億円の事業費となっています。

—転載終わり—

写真下=JR川原湯温泉駅が移転した川原湯地区の上湯原では、駅の上流側に造成された代替地(赤い点線で囲まれたあたり)が2016年時点(八ッ場ダム基本計画第五回変更)では安全対策の対象とされていたが、当面住宅が建てられないことを理由に対象から外された。また、駅の下流側(黄色い点線で囲まれたあたり)は未固結堆積物による地すべりの懸念があり、2011年の八ッ場ダム検証時には地すべり対策の対象とされ、対策箇所の中で最高額の約20億円が対策工事費として試算されたが、2016年には対象から外された。