八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

川原湯温泉の代替地で来月より共同浴場の建設

今朝の上毛新聞に、川原湯温泉の代替地で来月より共同浴場の建設が始まることを伝える記事が掲載されています。
川原湯温泉の泉源である王湯は、八ッ場ダムの建設によりダム湖に沈められる予定です。
国はダム建設を住民に受け入れさせるため、もとの泉源のそばにボーリングで新たな泉源を掘り当て、これを温泉街の移転代替地に引湯する設備を昨年つくりました。

現在の王湯は、水没予定地にある温泉街の一番坂の上に位置し、入湯料300円で利用できます。王湯では、自然に湧き出る旧源泉とボーリングで掘り当てた新たな泉源から引いた新源泉と両方を湯船に注いでいます。旧源泉と新源泉はいずれも同じ湯脈なのですが、自然湧出の旧源泉の方が硫化水素の湯の香が強く、肌触りがまろやかで泉質がよいとされます。国交省は旧源泉も代替地に引湯するとしていますが、そのためには大掛かりな工事が必要であり、引湯計画は具体化していません。

温泉の泉質は、泉源に近ければ近いほど泉質がよいと温泉の専門家はいいます。代替地へ引き湯されている新源泉も含め、川原湯温泉の代替地での再建は泉質の面で現在地より大きなハンデを負うことになります。現在の川原湯温泉は、山懐に抱かれ、自然林に囲まれていますが、ダム事業によって造られた造成地は、沢を埋め立て、尾根を切って整備された人工造成地であり、安全性と環境面で多くの問題を抱えています。ダム事業では、水没する温泉の補償として、国が引湯設備をつくりましたが、設備の維持管理は国の負担とはされていません。もともと、川原湯温泉は県有泉でしたが、2010年に群馬県は長野原町の求めに応じるという形で、温泉権を町に譲渡しました。代替地での温泉街の将来にとって、引湯設備の維持管理は今後、大きな課題になります。

上毛新聞の記事を転載します。
(ネットでは記事の後半部が省略されています。)
■2013年6月21日 上毛新聞より転載
http://www.jomo-news.co.jp/ns/9413717397597624/news.html

-ダム湖臨み新「王湯」 川原湯温泉共同浴場ー

八ツ場ダム建設で水没する川原湯温泉のシンボル「王湯」の再生に向け、長野原町は7月、打越代替地で共同浴場「王湯会館」の建設工事を始める。現在の「王湯」の雰囲気を残す和風の建物で、ダム湖に突き出すような立地。大寒(1月20日)の川原湯温泉で400年続く奇祭「湯かけ祭り」の新たな会場となり、地域の伝統や活気を受け継ぐ場として期待される。

会館は鉄骨造2階建て、延べ床面積は334平方メートル。1階に男女別の内湯と露天風呂、2階に和室を設け、入浴客の休憩所や地元住民の集会所として使用する。川原湯温泉を発見したとされる源頼朝にちなみ正面入り口に源氏の紋所、ササリンドウの印を付ける。

湯かけ祭りは会館前の敷地で行われる予定。祭りのクライマックスで使用するくす玉をつるすためのポールも置く。ただ、温泉街の狭い通りで行ってきたこれまでの祭りと大きく環境が変わるため、祭りの進め方については今後、地元が模索していく。

また、会館から長さ約30㍍の橋を渡った南側に公園を整備。広さ1240平方メートルで、芝生や木を植えるほか、イベント広場を設ける。水没予定地から移転する旅館や土産物店からも近く、温泉客の憩いの場となりそうだ。
王湯会館と公園は、水源地域対策特別措置法(水特法)に基づく事業として、町が施工する。工事費は約2億2700万円。工期は本年度末まで。
王湯会館の建物は年内完成を目指すが、来年の湯かけ祭り会場となるかは未定。王湯会館は現在の王湯と同様、地元の川原湯地区が所有管理する。同区は「王湯をいつまで営業するかは、王湯会館が正式にいつ開業できるか分かった段階で検討したい」としている。

 

川原湯地区の打越代替地・王湯予定地では、共同浴場の建設に備えた工事が始まっている。

川原湯地区の打越代替地・王湯予定地では、共同浴場の建設に備えた工事が始まっている。

八ッ場ダムの水没予定地に佇む共同湯「王湯」

八ッ場ダムの水没予定地に佇む共同湯「王湯」

 

 

 

 

 

 

 

 

■ 2013年7月11日 上毛新聞21面
ー代替地の共同浴場、公園 新生川原湯 象徴に 長野原で安全祈願祭ー

八ッ場ダム生活再建事業として、長野原町が同町川原湯の代替地に整備する共同浴場「王湯会館」と公園の安全祈願祭が10日、予定地で行われた。新しい温泉街の中心施設として期待されており、高山欣也町長や地元住民約50人が工事の安全を祈った。本年度中に完成する予定。

王湯会館周辺では、土産店「お福」が3日に開業したばかり。今後は温泉旅館の移転も計画されており、高山町長は「新しい川原湯温泉街の形がようやく見え始めた」と歓迎。一方で、「本当の生活再建はダム湖あってのこと」と話し、引き続きダム本体の一日も早い完成を訴えていくとした。

王湯会館は水没予定地にある現在の「王湯」の雰囲気を残す和風の建物で、鉄骨造2階建て。1階に男女別の内湯と露天風呂、2階に和室を設け、入浴客の休憩所や地元住民の集会所として使用する。川原湯温泉で約400年前から続く奇祭「湯かけ祭り」の新たな会場となるが、来年から使用するかは未定。
公園は王湯会館南側に整備し、イベントや町民の憩いの場として活用する見通しだ。