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滋賀県の三日月知事、大戸川ダム推進へ方針転換

 滋賀県の三日月大造知事が凍結中の大戸川(だいどがわ)ダムの建設を容認する方針を表明しました。
 三日月知事の方針転換は、民主党政権におけるダム見直し→推進へのどんでん返しを思い起こさせます。政権交代の失敗が今の政治の行き詰まりをまねいているのだとしたら、ダム担当の政務官と副大臣を務めた三日月氏の役割は、限りなく大きかったと言わなければなりません。
 京都新聞は三日月知事を厳しく批判する社説を掲げました。滋賀県前知事の嘉田由紀子氏も批判声明を出しています。

◆2019年4月18日 京都新聞
https://www.kyoto-np.co.jp/politics/article/20190418000044
ー社説:大戸川ダム推進 知事の方針転換は疑問ー

 幅広い議論がないままに出された判断であり、大いに疑問だ。

 滋賀県の三日月大造知事が、凍結中の大戸川(だいどがわ)ダム(大津市)について方針を変え、国に建設を求めていく考えを示した。

 専門家との勉強会で検証し、ダムに一定の治水効果が認められたというのが理由だ。

 しかし、勉強会は3回開かれただけ。県がデータを示して説明し、専門家が意見を述べる形だが、ダム建設を前提にした議論に見える。異論を示す識者が参加していないのは、どうしたわけか。

 そもそも大戸川ダムに一定の治水効果があることは、凍結時点でも認められており、勉強会で検証するまでもない。もっと多角的な視点から議論すべきだった。

 2008年に滋賀は京都、大阪、三重を含む淀川水系流域4府県で、大戸川ダムについて「施策の順位が低い」として「凍結」を求める合意書を出している。

 1997年の河川法改正で淀川流域の河川整備計画策定に、関係知事の意見が求められたからだ。

 これからの焦点は京都、大阪が滋賀に同調するかだが、両府とも慎重な姿勢だ。というのも重い費用負担が背景にある。総事業費1080億円のうち、滋賀は8億円なのに大阪187億円、京都が129億円と多い。下流にダムの恩恵が及ぶという考えからだ。

 どこも財政状況は厳しい。ダムに一定の治水効果があっても、巨額の建設費に見合うのか。急を要する河川改修なども多く、優先順位を付けるのは当然といえる。

 一方で、国土交通省はすでに大戸川ダムの事業継続を決定しており、近畿地方整備局の有識者会議はダムをめぐる検証結果を近くまとめる予定だ。滋賀の方針転換は、こうした国の動きに伴ったものだろう。

 ダム建設への流れではないか。ならば専門家にとどまらない、住民参加の議論が必要だ。

 2003年に「ダムは原則建設しない」と提言した淀川水系流域委員会は、国交省の下であっても熱い議論を繰り広げた。治水のほか環境、まちづくりなど多様な分野の専門家、市民が加わり、情報公開を徹底した。淀川モデルといわれた理念を思い起こしたい。

 自然災害が多発している。想定外の暴風雨で、ダムや河川が決壊の危機に陥る事態も少なくない。警報や避難など防災・減災のあり方を根本から考え直す時ではないか。ダムだけを見ずに、広い観点から議論をしていく必要がある。

◆2019年4月16日 毎日新聞
http://mainichi.jp/articles/20190416/k00/00m/040/269000c
ー脱ダム」嘉田前知事、建設容認に疑問表明 滋賀・大戸川ダム―

 国が計画し、建設が凍結されている大戸川(だいどがわ)ダム(大津市)を巡り、滋賀県の三日月大造知事は16日の記者会見で、建設を容認する方針を正式発表した。一方、2008年に京都、大阪、三重各府県知事とともに建設の凍結を求める共同見解を発表した嘉田由紀子前知事も同日、会見し、三日月氏の判断に疑問を呈した。

  国は嘉田氏ら4府県知事の共同見解を受け、09年に大戸川ダムの事業凍結を決定した。その後、国土交通省近畿地方整備局は16年2月、治水対策としてダム建設が有利とする評価案を公表。滋賀県が独自に設けた勉強会も今年3月、ダムの治水効果を認める報告をまとめた。

 会見で三日月知事は、勉強会の報告を引き合いに「一定の治水効果があることが分かった。近年、全国で発生した豪雨でも、備えの重要性が認識されている」と方針転換の理由を説明した。ただ、嘉田氏が進めた、ダムだけに頼らない「脱ダム」路線には「方針は継続したい」と強調した。

 一方、嘉田氏は会見で「ダムに一定の治水効果があることは、以前から分かっている。ダムは副作用もたくさんあり、必要性は費用や環境への影響、維持管理のあり方などを含めて総合的に判断すべきだ」とし、三日月知事の判断に疑問を呈した。三日月氏は引退した嘉田氏の後継として14年に初当選。18年にはダム建設に賛成する自民党の支援も受け、再選した。

 一方、大阪府の吉村洋文知事は報道陣に「大阪府は河川の治水を強化して府民の命を守るという方向で進めてきた。巨大な公共事業であるダムがどれだけ効果があるのか検証しなければならない」と述べ、独自の検証委員会を発足させる考えを明らかにした。

 京都府の西脇隆俊知事は「コメントする立場にないが、滋賀県の動きを見守りたい」との談話を発表した。【北出昭、成松秋穂、津久井達】

◆2019年4月16日 日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO43815440W9A410C1LKA000/
ー大戸川ダム 復活の足音 滋賀知事が建設容認ー

 滋賀県の三日月大造知事は16日の記者会見で、国土交通省が本体工事を凍結中の大戸川ダム(大津市)の建設を容認する方針に転換した。洪水対策に一定の効果があると判断したためだ。環境への影響などを理由に、同県とともにダム建設に反対した大阪府と京都府の対応が焦点となる。

 三日月知事は「将来にわたって県民の命を預かる責任から、ダムは必要であると判断し、国に対して早期の整備を望む」と述べた。今後、国や淀川流域の京都府や大阪府に対して、県の考えを説明する。日程は「現時点では未定」とした。

 県が設置した有識者をまじえた勉強会で、大戸川と琵琶湖に治水の効果があるという結論を踏まえた判断だ。ただ、琵琶湖への水位抑制効果は限定的とされる。

 2008年、淀川水系に関係する大阪、京都、滋賀、三重の4府県は同ダム建設に反対。国交省は09年3月に策定した淀川水系の河川整備計画で、本体工事の凍結を盛り込んだ。滋賀県が建設を容認しても下流域の大阪府、京都府が同調しなければ本体着工できない。

 同日、大阪府の吉村洋文知事は「まず滋賀県からの報告を受けたい。府独自の専門家委員会を立ちあげて方針を決める。府の負担に見合うか検証し、すぐには容認しない」と述べた。

 京都府の西脇隆俊知事は「滋賀県内に及ぼす効果を県が検証されたものと認識している。県の動きを見守りたい」とのコメントを出した。いずれも現時点での判断は控えた格好だ。

 今後の判断材料の一つが財政負担だ。ダム事業費の負担割合は大阪府が17%、京都府が12%、滋賀県の1%に比べて多い。現時点で全体事業費は1080億円だが、18年3月末時点で付け替え道路の建設などに710億円が支出済み。本体工事で事業費が膨らめば、自治体の負担額も増える。

 ただ、建設反対で一枚岩だった08年当時と府県の政治情勢は変化している。環境への影響などを理由に反対を強く主張した滋賀県の嘉田由紀子知事のほか、大阪府の橋下徹知事、京都府の山田啓二知事はいずれも退任。京都府は国交省出身の西脇知事が就任した。

 滋賀県知事の方針転換は、いったん中止の方針だったダムの建設が復活する芽が出てきたといえそうだ。

▼大戸川ダム 大津市で国交省が建設を計画している治水ダム。事業費は1080億円だが、増える可能性がある。当初は大阪府、京都府、大津市が水道水用の水源確保のために事業費を負担していたが、水需要が伸びず撤退し、国交省もいったんは中止の方針に傾いた。その後、流水型(穴あき)ダムとして復活したのに滋賀県などが反発して凍結、という複雑な経緯をたどっている。

◆2019年4月16日 京都新聞
https://www.kyoto-np.co.jp/politics/article/20190416000048
ー工事凍結の大戸川ダム建設求める意向 滋賀県知事「治水に必要」ー

  国が本体工事を凍結している大戸川ダム(大津市)について、滋賀県の三日月大造知事は16日の定例記者会見で、「知事として大戸川ダムは必要であると考える。本体工事の早期整備を望む」と述べ、ダムの治水上の必要性を認め、国に建設の推進を求める意向を表明した。滋賀、京都を含む4府県が求めた「凍結」解除に向けて今後、下流府県に働き掛ける。県が独自に実施した勉強会の検証結果を踏まえて判断した。

 三日月知事は「全国各地で毎年のように豪雨が発生し、大きな災害への備えが指摘されている。県民の命は何より重い。実施時期を早期に検討するよう求める」と述べ、国に整備計画の変更手続きを急ぐよう求める考えも明らかにした。

 県が専門家を交えて設置した勉強会(座長・寳馨(たからかおる)京都大大学院教授)は3月、ダムが大戸川流域の水害被害を一定軽減させ、豪雨時の瀬田川洗堰(大津市)の全閉操作や制限放流の時間短縮につながる、との見解を示していた。

 三日月知事は「事業進捗や環境の変化を踏まえ、県に与える影響を科学的に検証した。一定の治水効果が期待できる」と、大戸川ダムの効果を強調した。

 大戸川ダムを巡っては、嘉田由紀子前知事が2008年12月、国の河川整備計画の策定に際し、山田啓二前京都府知事や大阪、三重両府県とともに「施策の優先順位が低い」として「凍結」を求めることで合意した。国は09年3月、計画にダム建設を盛り込んだ上で、河川改修の状況や影響を検証しながら「実施時期を検討する」としていた。

 ダムの必要性を主張してきた自民党は17年12月、県議会で4府県知事合意の撤回を求める決議を賛成多数で可決させた。

 県は知事合意から10年が経過し、桂川(京都市)や天ケ瀬ダム(宇治市)の再開発など下流の整備が進み、豪雨が続いていることを踏まえ、勉強会を設置。三日月知事は昨年5月、就任後初めて建設予定地を視察し、11月には集団移転を強いられた旧大鳥居地区の集落跡地を訪れていた。

 三日月知事はダム事業に否定的な嘉田前知事の後を継ぎ、「ダムだけに頼らない治水」を掲げてきた。会見では「ソフト、ハード両面で事前の備えや情報提供を含めた対策が必要だ。私の考えに変わりはない。今後もその考えをしっかり強化していく」と述べた。

◆2019年4月16日 毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20190415/k00/00m/040/229000c
ー計画凍結中の大戸川ダムを容認へ 滋賀県知事が方針転換ー

 国が大津市に建設を予定し、計画が凍結されている淀川水系の大戸川(だいどがわ)ダムを巡り、滋賀県の三日月大造知事はダムの建設を容認する方針を固めた。16日午前の記者会見で方針を説明する。大戸川ダムを巡っては2008年、当時の嘉田由紀子知事が京都、大阪、三重各府県知事とともに建設の凍結を求める共同見解を発表。国は09年に事業凍結を決めていた。

 大戸川ダムは治水専用ダムで、総貯水容量は約2200万立方メートル。1968年に国が予備計画調査に着手したが、08年に国土交通省近畿地方整備局の諮問機関「淀川水系流域委員会」が「効果が限定的」として建設見直しを提言。嘉田氏や橋下徹・大阪府知事(当時)らが共同見解を発表し、事業凍結に追い込まれた。現在は周辺の県道付け替えなどが行われているが、本体工事には着手していない。

 滋賀県は昨年5月から、大戸川ダムの治水効果などを検証する独自の勉強会を設置。今年3月には、氾濫の抑制などダムの効果を認める報告をまとめていた。これを受け、三日月知事は大戸川ダムに一定の効果があると判断。嘉田氏はダムだけに頼らない治水を進める「脱ダム」路線を敷いてきたが、その方針を転換することを決断した。

 ただ、1000億円以上の本体工事費の3割を滋賀、京都、大阪の3府県が負担することになっており、実際に事業の凍結が解除されるかは不透明。三日月知事は勉強会の検証結果を踏まえ、他府県に滋賀県の立場を説明する方針だ。【北出昭】