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野村ダムと鹿野川ダム、新操作で「被害大幅減」は本当か?

 昨年7月の西日本豪雨でダムからの緊急放流により、愛媛県の肱川に大規模な氾濫を引き起こした国直轄の野村ダム・鹿野川ダム。
 鹿野川ダムの改造工事が3月に完了したため、両ダムを管理する国交省四国地方整備局はダムの操作ルールを変えることを発表しました。

 ◆国土交通省四国地方整備局ホームページ
  「鹿野川ダム改造に伴う新たなダム操作ルールの考え方について」(2ページ~)
  http://www.skr.mlit.go.jp/yamatosa/kisya/pdf/190416.pdf

 四国地方整備局の説明によれば、鹿野川ダム改造によって可能となった新しいダム操作ルールでは、西日本豪雨が再来しても、被害を大幅に減らせることになっていますが、本当にそうなのか、内容をよく検証する必要があります。
 新しい操作ルールは1995年まで使われていた大洪水用の旧操作ルールに近いものです。
 肱川下流は堤防のない所があるなど河道整備が非常に遅れていて、大洪水用の旧操作ルールでは氾濫を引き起こすということで、1996年に中洪水用の操作ルールに変わりました。野村ダムと鹿野川ダムでは昨年7月、この中洪水用の操作ルールに基づいて緊急放流が行われたのですが、四国地方整備局は昨年11月に、仮に7月の豪雨時に旧操作ルールを採用したとしても、放流量が大きくは減らなかったという趣旨の発表をしました。ところが、今回の発表では被害が大幅に減少するというのですから、首を傾げざるを得ません。8人もの犠牲者を出した昨年7月の水害後、国交省四国地方整備局はそれまで放置していた暫定堤防を嵩上げする工事を行いました。このことも考慮した計算ですので、嵩上げの効果もあるように思います。

◆2019年4月19日 朝日新聞愛媛版
https://digital.asahi.com/articles/ASM4K4TBBM4KPFIB00B.html?iref=pc_ss_date
ー豪雨で緊急放流の2ダム 新操作で「被害大幅減」ー

 昨年7月の西日本豪雨で緊急放流した鹿野川ダム(愛媛県大洲市)と野村ダム(愛媛県西予市)について、管理者の国土交通省が両ダムの新しい操作ルールの案を示した。鹿野川ダムで豪雨に備えて事前に水を抜く「トンネル洪水吐(こうずいばき)」が完成することを受けたルール変更となる。西日本豪雨では両ダムとも満水に近づいて緊急放流し、その後に肱川が氾濫(はんらん)したが、同規模の豪雨が来ても浸水被害は大幅に軽減されるという。

 鹿野川ダムは水門の位置などの構造上、水位を一定の高さ以下に下げることができないが、トンネル洪水吐は水門より低い位置にあるため、大雨が予想される際は事前にダムの水位を現在の限界よりも下げることができる。国交省によると、洪水吐を運用すれば、現在の1・4倍の洪水調節容量を確保して洪水に備えられるようになる。  ・・(以下略)

◆2019年4月18日 毎日新聞愛媛版
https://mainichi.jp/articles/20190418/ddl/k38/010/466000c
ー野村ダム・鹿野川ダム 放流量増で洪水対応 操作規則変更へ案 国交省四国整備局ー

 昨年7月の西日本豪雨を受け、野村ダム(西予市)と鹿野川ダム(大洲市)の操作規則変更を検討していた国土交通省四国地方整備局は16日、規則の変更方針案を発表した。鹿野川ダムでの放流設備追加で洪水調節容量が増えたことなどに伴うもので、従来より放流量を増やして大規模洪水に対応する。西日本豪雨レベルを想定した試算では浸水世帯数は西予市野村町地区で約6%(40世帯)、大洲市東大洲、菅田、肱川の3地区では約16%(600世帯)に減るとしている。

 野村ダムは洪水の初期段階で放流量を増加させる。従来は洪水調節容量の4割に達するまで毎秒300トンを…