4/26に上毛新聞に掲載された記事の前半が、今日付けで同紙サイトに掲載されました。(右下画像)
https://www.jomo-news.co.jp/news/gunma/politics/129618
「東京五輪へ水がめ渇水防げ 関東地方整備局が貯水2割増へ素案」
記事全文はあしたの会HPの以下のページに転載しています。
★「国交省関東地方整備局、2020年東京五輪に備え渇水対策」
記事の主旨は、国交省関東地方整備局が来夏に開かれる東京五輪に備えて、群馬県にある利根川上流ダムなど七つのダムを活用し、治水容量の一部を空にせずに利水容量として確保するなどして、貯水を2割増やす渇水対策を検討しているというものです。同記事が伝える渇水対策の素案を策定について、国交省関東地方整備局は3/22に「東京2020オリンピック・パラリンピック渇水対策協議会幹事会」を3月26日に開催することを記者発表し、翌27日の記者発表で決定した「素案」を公表しました。
◆国土交通省関東地方整備局ホームページより、
「東京2020オリンピック・パラリンピックに向けた水の安定供給のための行動計画素案を決定」平成31年3月27日
多目的ダムでは、ダム計画の段階であらかじめダムに貯める予定の水を、洪水に備える「治水容量」、水道に利用する「利水容量」、水力発電に利用するための「発電容量」などと決め、ダム完成後はこの計画にのっとってダムを運用することになっています。
上記の上毛新聞の記事では、矢木沢ダムの発電専用容量の話が出ています。参考のため、矢木沢ダムの貯水容量配分図を下記に示します。
矢木沢ダムは利水用最低水位の下に、発電専用容量が3820万㎥もあります。
夏に利根川が渇水になると、ニュースでは利根川水系最大の矢木沢ダムが取り上げられます。もうすぐ巨大ダムが空になりそうだという印象を与える写真が紹介されますが、この発電専用容量3820万㎥が手つかずで残っていることはほとんど報じられません。来年3月完成予定の八ッ場ダムの夏期利水容量は2500万㎥ですから、ダム事業費は全国トップですが、八ッ場ダムによって得られる水は矢木沢ダムの発電専用容量よりはるかに少ないのです。
さらに付言すれば、矢木沢ダムの底には死水容量として2850万㎥があります。死水容量にはダムに土砂が貯まることを想定した堆砂容量が含まれますが、矢木沢ダムの堆砂容量は1470万㎥ですから、1380万㎥も余分に確保されていることになります。古いダムはこのような容量配分になっていることがあります。
利根川上流ダム群(5ダム) 定期報告書の概要(平成26年12月26日) を見ると、利根川上流ダムの中では藤原ダム、相俣ダムも死水容量-堆砂容量がそれぞれ、1660万㎥-802万㎥=858万㎥、500万㎥-255万㎥=245万㎥あります。矢木沢ダムと合わせると、3ダムで2483万㎥になります。この「死水容量-堆砂容量」は利水放流管を堆砂容量のすぐ上に設置すれば、有効利用することができます。
今年3月に完了した国交省四国地方整備局の鹿野川ダム改造事業では、鹿野川ダムにトンネル洪水吐きを設置するとともに、低水放流設備を設置して、死水容量-堆砂容量をゼロにしました。
◆参照 「鹿野川ダム改造事業」(国土交通省四国地方整備局)の10ページ
以上のことから、利根川上流ダムには矢木沢ダムの発電専用容量3820万㎥のほかに、低水放流設備を設置すれば利用可能な「死水容量-堆砂容量」が矢木沢ダム、藤原ダム、相俣ダムで合計2483万㎥あることになります。これらを合わせると6303万㎥と、八ッ場ダムの夏期利水容量2500万㎥の2.5倍にもなります。
すでにある利根川上流ダムに隠し財産というべき大量の水が確保されているのですから、渇水対策が必要なのであれば、八ッ場ダムを建設するより既設ダムを有効に活用する方がはるかに合理的であったことがわかります。
以下の画像の出典は、国交省関東地方整備局が同局ホームページに公表した渇水対策の「行動計画素案」の資料6ページ。
八ッ場ダムの利水容量が9000万立方メートルであるのは、渇水対策が必要となる可能性のある夏期以外(10月~6月まで)の期間です。