凍結中の滋賀県大津市の大戸川ダムについて今年4月に、三日月大造滋賀県知事が「一転」、ダム建設を容認したことについて、その背景を追及したニュースを関西テレビが放映しました。
要するに、三日月氏は2018年の知事選で知事に再選されるために、ダム推進の自民党県議団に寄り添ったということです。
嘉田由紀子前知事の後を引き継いだ時から2期目の知事選でそのように方針転換することは三日月氏が予定していたことであったと思います。2009年からの民主党政権で国土交通政務官(後に副大臣)として国土交通省のダム推進にブレーキをかけられなかった人ですから、この方針転換は予想されていたことですが、「容認」から「推進」へ、その変わり身の早さにはあきれます。
◆2019年5月16日 関西テレビ
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190516-00010002-kantele-l25
ー“凍結派の後継者”が…「ダム容認」に一転 各方面からも「なぜ今?」と疑問の声。滋賀県知事を直接取材ー
約50年前から建設の計画が持ち上がり、今は凍結中の滋賀県大津市の大戸川ダム。4月に、三日月知事が「一転」、ダム建設を容認すると発表しました。
なぜこのタイミングだったのか。背景を取材しました。
2008年に「事業凍結」された大戸川ダム
【三日月大造・滋賀県知事】
「滋賀県知事として、滋賀県には大戸川ダムが必要であると考えます」
4月16日、滋賀県の三日月大造知事は、長年凍結されていた「大戸川ダム」の建設について、早い時期の整備が必要と発表しました。
Q:大戸川ダムについて、滋賀県民は…
「いや、知らないです。聞いたこともないです。」
「中止になったのと今度するってことは分かってるけど、詳しいことは分かりません。」
「滋賀県の負担分が少ないなら、知事としては容認するんじゃないですか。」
滋賀県大津市を流れる大戸川では、江戸時代から水害に悩まされ、国は約50年前にダムの建設を計画しました。
しかし建設を巡り、有識者や住民などで作られる「淀川水系流域委員会」が反対。
そして2008年、当時の嘉田知事や、京都府の山田知事など、4つ府県の知事が、一定の治水効果があると認めるものの「多額の負担金」などから優先順位が高くないとして建設に反対し、事業は凍結されました。
【山田啓二・京都府前知事】
「施策の優先順位を考慮して、河川整備計画に位置付ける必要はないという結論になっています。」
ところが2013年の台風18号など、近畿各地で豪雨災害が相次ぎます。
嘉田前知事から県政を引き継いだ三日月知事は、去年5月から専門家を交えて、必要性の検証を重ねてきました。
そして4月、「滋賀県内に一定の治水効果がある」と判断して、これまでの方針を転換し、建設を容認すると発表したのです。
一定の効果はあるが…費用負担の問題も
淀川水系流域委員会で当時委員長も務めた、京都大学名誉教授の今本博健さん。今でもダム建設には慎重です。
【京都大学 今本博健名誉教授】
「たしかに大戸川ダムの流量が減って大戸川が氾濫しなくなったとしても、浸水はするわけです。いわゆる内水ということで流域に降った雨が川にはききれなくて浸水する。住民にとってはどちらの理由で浸水しても浸水は浸水なんです。たとえダムが出来ても浸水がなくなるわけではない」
三日月知事が開いた3度の勉強会では、過去に発生した台風や大雨など、いくつものケースを想定して検証しました。
例えば2013年の台風18号では、大戸川流域の建物などが浸水被害に見舞われましたが、ダムを作ることで浸水被害の面積が約60%減少すると結論付けました。
検証結果で大戸川ダムは、浸水被害が減り、氾濫するまでの時間を延ばすなど、一定の効果はあるとしたものの、被害をゼロにできないと判断しています。
一方、ダムの建設費は約1080億円。3割を地方が負担しますが、国の取り決めで滋賀県の負担額は「約8億円」、残りは下流域の大阪府と京都府が「100億円以上」の費用を負担することになるのです。
【京都大学 今本博健名誉教授】
「雨の降り方によってはほとんどダムの効果ない場合があります。そんなためにやるよりかは、私はやはり河川改修とそれから非常に低いところにある家は少なくとも建て替えるきっかけのときにはもう少し安全なところに住みましょうと。ダムといっても永久にじゃないですからね。」
凍結派の後継として当選…2期目は推進派の支持も
当時、凍結の判断をした嘉田前知事は、三日月知事がダム建設の容認を発表する前に話したといいます。
【嘉田由紀子・滋賀県前知事】
「大戸川ダムを推進したいという言い方をしていました。それに対して私は本当にたった3回の勉強会でのその結論でいいんですか、と」
「たしかに直下には一定の効果はありますけど、ダムを作っても水害をゼロにはできないんです。環境破壊の問題、財政負担の問題、下流が負担するから国が負担するからいいって問題ではないですよね。私たちは県民であると同時に国民ですから」
三日月知事は嘉田前知事の後継として、5年前、「チームしが」から出馬し初当選。嘉田さんの後を引き継いだはずの三日月知事が一転して、なぜダム建設容認と発表したのでしょうか。
【嘉田由紀子・滋賀県前知事】
「色々な社会的、政治的背景もあるんじゃないですか、私はそこは知りえないところです。分かりません」
Q:正直裏切られた気持ち?
【嘉田由紀子・滋賀県前知事】
「それはもう知事の判断でしょう。私も知事の時代、2期8年命がけで判断しましたから、今、三日月さんは命がけで判断していると思います。自分の政治生命もかけ
て。」
去年6月の2期目の知事選挙では、ダム建設を推進する自民党などからも支援を受けました。これで構図が大きく変わったという声も…。
【チームしが・塚本茂樹滋賀県議】
「去年の知事選の時に三日月知事はもともと我々チームしがも応援してたけど、自民党も応援しまっせってなったやんか、大戸川は応援するための条件の一つになっとったかもしれへんよな。
【共産党・杉本敏隆滋賀県議】
「少なくとも自民党県議団がダム推進の立場があるのでそれになびいてるってことは事実であって、自民党と一体で県政を進めるというような証になってるのではないかなと思います」
ダム建設の容認について、事前に県議会での説明がなかったという議員たち。
さらに自民党関係者からもこんな声が…
(自民党関係者)
『三日月知事と自民党が、お互い選挙のために利用したのではないか』
(自民党関係者)
『三日月知事が生きやすい、生きのびやすい判断をしたのではないか』
選挙で当選するために三日月知事はダム建設の再開を容認したのでしょうか。
直接、疑問をぶつけました。
Q:自民党に寄り添った判断?
【三日月大造・滋賀県知事】
「人の見方やとらえ方、ご評価っていうのは様々ですので、そういったものに我々は右往左往致しません。私はダム事業の在り方、治水のあり方、県民にとって滋賀県にとって最良・最善だと思うことをすぐにやるべきことはすぐにやる、すぐに言うべきことを言っていくということを心掛けてるつもりです。」
Q:自民党は関係ないと明言できる?
【三日月大造・滋賀県知事】
「どの政党から言われるとかではなくて、この間の変化や進捗、さらには県でやった勉強検証の結果を踏まえて、県としての方向性を出させていただいた」
「滋賀県はこういう勉強し、こういう検証し、こういう効果や影響があると考えたのでこういう表明をさせていただいたとしっかりと丁寧に説明をしながら、ご理解ご協力を得られるように努めてまいりたいと思っています。」
6月からの議会で紛糾が予想されるこの問題。
今後、県民に対して丁寧に説明する必要があります。
※カンテレ「報道ランナー」2019年5月14日放送より
◆2019年5月22日 京都新聞
https://www.kyoto-np.co.jp/top/article/20190522000164
ー「工事凍結のダム早期整備を」 滋賀知事が国交相に要望ー
滋賀県の三日月大造知事は22日、国土交通省で石井啓一国交相と面談し、大戸川ダム(大津市)の早期整備を要望した。ダム建設に必要となる国の淀川水系河川整備計画の見直しについて「国としても進められるようにしたいといった趣旨の答えをもらった」とし、県も下流府県への説明を急ぐ考えを示した。
面談は来年度の予算編成に向けた中央省庁への政策提案の一環で、生田邦夫県議会議長も同席した。三日月知事は「県として大戸川ダムは早期整備する必要があるという結論を出した。国も検証の上、できるだけ早く次の段階に進めていただきたい」と求めた。
要望を終えた三日月知事は、石井国交相が「滋賀県からも下流府県に県の考え方を説明してほしい」と述べたことを受け、「すでに担当部局が説明に入っているが、できるだけ早くしたい」と強調した。
面談では、園児らが死傷した大津市の交通事故を受けた安全対策への支援も要望した。