昨年7月の西日本豪雨では、広島県は、治山ダムが壊れるなどして、土砂災害が多発しました。広島県は昨年の災害を踏まえ、「コアストーン」と呼ばれる巨大な花崗岩に対応できるよう、治山ダムの構造を補強するなどの新たな治山対策方針をまとめました。
昨年の西日本豪雨では広島県内の治山ダムのうち、計6基が全壊しました。しかし、問題は治山ダムの強度だけの問題ではありません。
広島市安芸区矢野東地区の梅河(うめごう)団地では、昨年2月に治山ダムが完成したばかりであったのに、土石流が治山ダムを乗り越えて、12人の死者・安否不明者が出ました。
災害が起きると、治山ダム(砂防ダム)の建設に拍車がかかることになりますが、治山ダムに依存する治山行政で本当によいのか、治山行政の在り方を科学的に検証する必要があると思います。
砂防ダムの問題に取り組む「渓流保護ネットワーク」によれば、砂防・治山ダムは全国に9万基を超える数がすでに作られているそうです。同ネットワークは土石流災害を減らすためには、土地利用の規制や撤退、避難対策などのソフト対策を重視する必要性があると訴えています。
◆2019年5月19日 中国新聞
https://www.chugoku-np.co.jp/local/news/article.php?comment_id=535028&comment_sub_id=0&category_id=256
ー治山ダム、構造補強へ広島県が新方針 コアストーン対応ー
昨年7月の西日本豪雨で広島県内の治山ダムが壊れるなどした問題で、県は土石流をはじめとする山地災害の被害を抑えるための新たな治山対策方針をまとめた。「コアストーン」と呼ばれる巨大な花こう岩に対応できるよう、ダムの構造を補強。山地災害の危険性を住民により分かりやすく伝える取り組みも盛り込んだ。
県によると西日本豪雨では県内に7734基ある治山ダムのうち、呉市3基、東広島市2基、神石高原町1基の計6基が全壊し、土石流がダムからあふれる事例も相次いだ。現地調査では埋もれていたコアストーンが流れ出したことなどが原因と確認できたという。
方針では、被災地の復旧でダムを整備する場合、現地調査で判明した石の大きさの2倍の衝撃に耐えられるよう設計する。堤のコンクリートを厚くしたり、鉄筋を差し込んだりして強度を確保する。流木が下流の橋に詰まって川の水があふれるケースも相次いだため、状況に応じて流木を捉えやすい工法も採用する。
堤は壊れなかったものの基礎部分などが大きくえぐられたダムでは、同じ規模の土石流に耐えられる補強や対策を取る。
住民向けの周知では、航空機からレーザーを使って地形を測量し、危険度をつかむ手法を活用する。従来の地形図を使った手法と比べて、より精度が高まるという。解析結果を基に立体図などの視覚的に分かりやすい資料を作製して市町に提供し、住民の防災活動に役立ててもらう。
方針は、林野庁の有識者チームが昨年11月に公表した中間とりまとめを参考にした。県森林保全課は「県の実情を反映させ、ハードとソフト両面で対策を充実させると盛り込んだ。土石流や森林崩壊を防ぎ、住民の命を守る」としている。