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自民党県連重鎮の南波県議(吾妻郡選出)、突然の辞職 県議選で陣営公選法違反か

 4月の県議選で七選を果たしたばかりの南波和憲(なんば・かずのり)県議が辞職とのニュースが、25日付の群馬版各紙に大きく取り上げられています。南波氏は自民党県連の重鎮であり、今夏の参院選では群馬選挙区の自民党候補の選対本部長となっていることもあり、県内の自民党関係者は影響を危惧しているようです。
 右の画像=南波氏のホームページより

 八ッ場ダム予定地を抱える吾妻郡では、前回2015年の選挙で二人の現職(南波氏と萩原渉氏)が無投票で再選されましたが、今年4月の県議選では、現職に加え、元中之条町長の入内島道隆氏が立候補したことから、三つ巴の闘いとなりました。
 これまでの選挙では、原町を地盤とする南波県議が吾妻渓谷の下流部(群西部)を、草津町を地盤とする萩原県議が上流部(群東部)を抑え、吾妻渓谷を挟んで票を分け合ってきましたが、今回は原町と隣接する中之条町を地盤とする有力新人、入内島氏が参戦した為、人口の多い下流部で激しい票の奪い合いが行われたと言われます。
 選挙戦中、南波県議の苦戦が伝えられましたが、結果は新人の入内島氏がトップ当選、南波氏が二位当選でした。南波氏の辞職で、同じく自民党の萩原氏が繰り上がることになります。

 南波氏が実質的なオーナーを務める南波建設は、八ッ場ダムの関連事業を数多く受注しています。南波氏は群馬県議会において、八ッ場ダム予定地の地質や住民の生活再建に問題が山積していることを最もよく知っている議員と思われますが、ダム事業にブレーキをかけかねない問題を県議会で取り上げることはありませんでした。
 以下の3/31付けの産経新聞によれば、選挙戦中、水没住民の移転代替地で「ダム後の開発を始めなければならない時代を迎えた。」と訴えたということですが、ダム予定地を抱える長野原町での得票数は最下位でした。

 上毛新聞、朝日新聞、毎日新聞、読売新聞の記事を紙面より、産経新聞の記事をネットより転載します。

◆2019年5月25日 上毛新聞 一面トップニュース
https://www.jomo-news.co.jp/news/gunma/politics/134047
ー南波和憲氏が県議辞職 7期当選 「関係者が選挙違反疑い」ー

 自民党群馬県議の南波和憲氏(71)=吾妻郡区、7期=は県議の辞職願を狩野浩志議長宛てに提出し、24日の県議会本会議で許可された。辞職理由について「県議選を巡り、自らの関係者が公職選挙法違反の疑いで県警から取り調べを受けているため」と自民県連に説明した。南波氏の辞職により、同郡区で次点だった萩原渉氏(65)が繰り上げ当選する見通し。重鎮県議の突然の辞職を受け、県連は2カ月後に迫る知事選や参院選に向けた態勢の立て直しを急ぐ。

 同日会見した県連の星名建市幹事長によると、南波氏は23日に狩野議長宛てに辞職願を提出、星名幹事長には辞職理由を記した書面を渡した。
 星名氏に手渡した文書では、4月の県議選を巡って関係者が県警の取り調べを受けているため、「知事選や参院選を前に、県連に多大な迷惑を掛ける懸念がある」と説明。持病の悪化による体調不良も理由としていた。
 星名幹事長は「我が党や県議団、県議会にとっても重要な方で大変な痛手」とし、「こういった時期なので県議団として改めて一致協力し、選挙に向けて組織を固めていく」と述べた。

 南波氏は議会基本条例推進委の委員長のほか、参院選群馬選挙区に自民公認で出馬予定の清水真人氏陣営の選対本部長を務めるなど、党内外で複数の要職にある。議員辞職に伴い、党内の前役職も退く意向で、県連は今後、後任選びなど対応を急ぐ。
 大沢正明知事は24日「県議会の中でも要となる議員だった。突然の辞職は私にとってもショックだ」と述べた。

 萩原氏は「驚いている」と述べ、今後については「県政で再び活動できる機会を頂けるのであれば、引き続き中山間地域の過疎化を食い止めるために力を尽くしたい」と語った。

 公職選挙法の規定では、県議選の実施から3か月以内に辞職などによって欠員が生じた場合、法定得票数を得て次点となった立候補者が繰り上げ当選する。南波氏の辞職を受け、同郡区の選挙会が同法に基づいて20日以内に開かれ、萩原氏の繰り上げ当選が決まる。

 
社会面(紙面記事より転載)
ー南波県議が辞職 地元に戸惑い、不満広がる 「ショック」「説明を」ー
 「真面目な人だったのでショックだ」―。自民党の南波県議の突然の辞職に対し、選挙区の吾妻郡内の有権者には24日、戸惑いや不満が広がった。三つどもえの激戦となった4月の県議選を巡り、陣営関係者に公選法違反容疑が浮上していることが辞職理由の一つとされ、不信感を募らせる人も。7期目の重鎮だっただけに、早期開通が求められる上信自動車道など地域の事業への影響を懸念する声もある。

 新聞で辞職の意向を知った中之条町の70代男性は、「選挙中から体調が悪そうだと聞いており、体調不良での辞職だと思っていた。選挙違反するとは考えられない」と驚いた様子。長野原町のパート女性(64)は「地域の催しに代理を立てることなく出席してくれた。辞職は驚き」とした。

 捜査関係者によると、南波氏の関係者が当選後、複数の支援者に金券を贈ったなどの疑いが浮上し、県警は同法違反の疑いを視野に、慎重に捜査を進めているもようだ。

 県議選で対立候補を応援していた中之条町の60代男性は「以前からうわさはあった。陣営に広がっているのであれば大きな騒ぎになる」と懸念した。東吾妻町の60代男性は「相当厳しかったのだろうか」として、8年ぶりの選挙戦となった状況を推し量った。

 支持した人には憤りも強い。中之条町の70代男性は「寝耳に水。懸命に応援して激戦を勝ち抜いたのに、何の連絡もなく辞めるとは頭にくる」と話した。東吾妻町の40代男性は「当選してすぐに辞職するのは理解に苦しむ。思いを託した有権者のために、本人の口からきちんとした理由を説明してほしい」と注文を付けた。草津町の男性(66)は「選挙違反が本当なら残念」と肩を落とした。

 吾妻郡町村会長の熊川栄嬬恋村長は「(南波氏は)上信自動車道の整備や八ッ場ダムの建設促進はもちろん、福祉や教育など郡内の住民に寄り添った政策を進めた。政治的でまじめな人だったのでショック」と話した。別の首長も「郡内の要望を県に伝え、調整する大きな役割を担っていた。県との太いパイプが失われることは非常に残念だ」と肩を落としていた。

 辞職の理由には、体調への不安もあったとされる。東吾妻町の自営業男性(80)は、「(南波氏は)年中、病院に行っていたようだ。選挙に出馬しなければよかったのではないか」と話していた。

◆2019年5月24日 朝日新聞群馬版
ー重鎮の南波県議辞職 「陣営に公選法違反の疑い」-

 4月の県議選をめぐる公職選挙法違反の疑いで陣営関係者が県警の事情聴取を受けているとして、県議会議長や自民党県連幹事長などを歴任した南波和憲県議(71)=吾妻郡区=が24日、辞職した。同日の県議会本会議で、前日に南波氏から出された辞職願を賛成多数で許可した。

 本会議では辞職理由は明らかにされなかったが、本会議後に取材に応じた自民党県連の星名建市幹事長が南波氏本人から23日に受け取った文書の内容を紹介。「県議選で公職選挙法に抵触した関係者の取り調べが行われている。知事選や参院選を前に自民党県連などに多大な迷惑をかける恐れがある」「持病が悪化し、治療が必要で議会にも大変な迷惑をかけてしまう」などを理由としていたと説明した。

 南波県議は当選7回。小渕優子衆院議員(群馬5区)の選挙も支え、県政界の重鎮的存在だった。4月の県議選吾妻郡区は4年前の無投票から一転、有力新顔の入内島道隆・元中之条町長の参戦で三つどもえの激戦となった。健康不安説も流れ、南波氏陣営は引き締めに懸命だった。当選はしたものの、11年の前々回より7千票余り減らしていた。

 辞職について、後援会の一場貞会長は「選挙期間中は私たちも一生懸命推しただけに残念。(辞職理由を聞くと)責任も感じる。本人とは会えていないが、そのうち説明があると思う」と話した。
 
 県選管によると、選挙から3か月以内のため、同じ吾妻郡区で次点だった自民前職の萩原渉氏(65)が繰り上げ当選する。(金井信義、泉野尚彦)

◆2019年5月25日 毎日新聞群馬版
https://mainichi.jp/articles/20190525/ddl/k10/010/005000c
ー県議会 南波県議が辞職 「買収容疑親族捜査」理由か 7期ベテラン突然ー

  自民党県連幹事長や県議会議長を務めた南波和憲県議(71)=吾妻郡、7期=が狩野浩志議長に辞職願を提出し、24日の県議会本会議で許可された。4月の県議選に絡み、公職選挙法違反容疑で親族が県警の捜査を受けていることが理由とみられる。ベテラン県議の突然の辞職に県議会に激震が走った。【西銘研志郎、鈴木敦子、神内亜実】

 自民党県連の星名建市幹事長によると、南波氏は23日、狩野議長に辞職願を提出し、星名幹事長にも辞職理由を記した書面を手渡した。書面には「4月の県議選で、関係者が公職選挙法に抵触し警察から取り調べを受けている」「知事選、参院選を控え県連や県議団に迷惑がかかる」などとして責任を取る旨が記載されていた。

 関係者によると、南波氏の親族が、県議選で当選した見返りに支持者らに金品を配った事後買収の疑いで県警から任意の事情聴取を受けているという。
 南波氏は1995年に県議選に初当選。4月の県議選は定数2に3人が出馬する激戦となり、次点候補に1604票差で当選した。

 南波氏の辞職について星名幹事長は「大きな痛手」と話し、南波氏が務めていた県連内の役職の後任の選定を急ぐ方針を示した。
 県選管によると、南波氏の辞職に伴い、時点の萩原渉氏(65)が繰り上げ当選する。

ー「残念だ」「説明責任は」 議会に波紋ー

 南波氏の突然の辞職を受け、大沢正明知事は「非常に残念。県議会の要になる議員だったのでショックです」と声を落とした。
 県議会内にも波紋が広がった。県議50人のうち7期目は2番目に長く、南波氏は議長と自民県連幹事長の両方を経験した重鎮だ。公明の福重隆浩代表は「最大会派の指導的立場だったから辞職は残念」と動揺を隠さず、第2会派「リベラル群馬」の後藤克己代表は「自民のまとめ役で『ドン』という印象。自民党にとって時代の転換点になるのかもしれない」と話した。令明の阿部知世代表は「いったい何があったのか分からず驚いている」困惑した様子を見せ、共産の伊藤祐司代表は「説明責任を果たしていない」と話し、本会議で辞職願の許可に反対した。ある自民党関係者は『知将』であり、『重し』の役割を果たしていた。党全体を見渡し、行政に物申せる人物の不在は心配だ」と漏らした。別の党関係者は「党内の権力闘争の影響を受けたのでは」との見方も示した。(鈴木敦子)

 地元、驚きの声
 南波氏の地元でも驚きの声が上がった。
 東吾妻町の事務所前で取材に応じた南波氏の長男は「申し訳ないとしか言えない。時期がきたら父から説明すると思う」と言葉少な。後援会長の一場貞さん(87)は「一生懸命応援した一人として残念」と話した。70代男性は「お世辞抜きで良い方。地元への貢献度も高かった」と肩を落とし、80代女性は「当選したばかりでどうしたのか」と驚きを隠せない様子だった。(菊池陽南子)

◆2019年5月25日 読売新聞群馬版
ー陣営選挙違反か 県議辞職 自民・南波氏 県警、関係者を聴取ー

 4月の県議選で公職選挙法に違反する行為があったとみて南波和憲氏(71)の関係者から任意で事情を聞いていることが24日、わかった。これを理由に南波氏は議員辞職を狩野浩志議長に提出し、辞職が同日許可された。南波氏は吾妻郡区で7選されていた。県議会議長も務めるなど自民党県議団の重鎮だけに、同党を中心に動揺が広がっている。

 南波氏は24日の県議会本会議に欠席し、読売新聞の取材にも応じていない。
 自民県連の星名建市幹事長によると、南波氏は23日午後4時頃に辞職願を提出。星名氏に手渡したという文書には、地震の陣営関係者が公選法に違反した疑いがあり、取り調べを受けている、などとあった。辞職理由として、知事選や参院選が迫る中で迷惑をかけたくないとも記していたという。持病の悪化も挙げていた。

 辞職願の許可は本会議で採決され、共産党の2人を除き、議員46人が賛成した。

 南波氏は東吾妻町にある建設会社の元社長で、旧吾妻町議を経て1995年に吾妻郡区選挙で県議に初当選し、その後、自民県連幹事長や県議会議長を歴任。小渕恵三元首相を支える「番頭」としても知られていた。

 4月7日に投開票された県議選で同区は、3人が2議席を争う構図となり、南波氏は9807票を獲得。新人で元中之条町長の入内島道隆氏(56)に次ぐ2位で当選した。8203票で落選した自民党の萩原渉氏(65)との獲得票差は5.3ポイントだった。

 選挙運動をした陣営幹部らが買収などの悪質行為で有罪になると、公選法の規定で連座制が適用され、本人の当選は無効となるうえ、同一選挙、同一選挙区からの立候補も5年間禁じられる。

 南波氏は同区東部が地盤で、地元の首長らも支援した。南波陣営で選挙事務庁代行を務めた中沢恒喜・東吾妻町長は取材に対し、「対立候補の一人は若く、危機感を持って臨んだのは確かだが、選挙違反についてはよくわかrなあい」と語った。元旧吾妻町長で後援会長の一場貞氏(87)は「本人や親族から連絡がない。実績もあり、一生懸命に応援した方だったのに」と、辞職に落胆した様子だった。
 

◆2019年5月24日 産経新聞
https://www.sankei.com/affairs/news/190524/afr1905240032-n1.html
ー群馬の南波県議 関係者聴取で引責辞職ー

 4月の統一地方選で行われた群馬県議選をめぐり、自民党の南波和憲県議(71)=7期、吾妻郡区=の関係者が公職選挙法違反の疑いで県警から任意で事情聴取を受けていることが24日、分かった。南波氏は23日、狩野浩志議長に辞職願を提出。24日開会した県議会本会議は、賛成多数で同日付の辞職を認めた。

 南波氏は平成7年の県議選以来7期連続で当選し、県議会議長や党県連幹事長などの要職を歴任したベテラン。捜査の行方によっては、夏の知事選と参院選に影響する可能性もある。県選挙管理委員会によると、次点の萩原渉氏(65)が繰り上げ当選する見通し。

 南波氏は23日、辞職について説明する書面を党県連の星名建市幹事長に提出。「県議選で公職選挙法に抵触する関係者に取り調べが行われている」とし、「知事選と参院選を控えており県連などに迷惑がかかる」として引責辞職する意向を伝えた。

 文書では、取り調べの対象となった人物や具体的な違法行為については「調査中」として明かしておらず、持病が悪化していることも辞職の理由に挙げていたという。

 星名氏は報道陣の取材に「県議団の重鎮であり(辞職は)痛手だ」とし、知事選と参院選に向けて「組織態勢をしっかりと固めていきたい」と語った。

 3期目の今期限りでの政界引退を表明している大沢正明知事は「重要なポジションにいた県議だっただけに辞職はショックだ」と述べた。

◆2019年3月31日 産経新聞
https://www.sankei.com/politics/news/190331/plt1903310019-n1.html
ー群馬県議選 選挙サンデーで舌戦 吾妻郡区は現職2人と元町長が激突ー

  統一地方選前半戦の県議選(7日投開票)告示後の日曜日となった31日、選挙戦に突入した12選挙区では、立候補者が選挙区内を駆け回り支持を訴えた。吾妻郡区(定数2)では平成19年から、東吾妻町など郡東部を地盤とする南波和憲氏(71)と、草津町など郡西部が地元の萩原渉氏(65)の自民現職2人が票を分け合ってきたが、今回は郡東部から元中之条町長の無所属新人、入内島道隆氏(56)が立候補。一転して、激戦区となっている。

 郡東部を地盤とする南波氏は、郡西部での本格的な選挙戦を開始。八ツ場ダム建設に伴い移転した長野原町の川原湯温泉では「ダム後の開発を始めなければならない時代を迎えた。観光の目玉として地域を新しく発展させたい」と声を高めた。

 嬬恋村や草津町でも遊説と街頭演説を続け、選挙カーから「また力添えをお願いします」と呼びかけた。

 中之条町出身の入内島氏とは因縁がある。

 南波氏は小渕恵三元首相、優子衆院議員の親子を支えてきた「大番頭」だが、16年の中之条町長選で現職だった小渕元首相の兄、光平氏を破り、初当選したのが入内島氏だ。

 入内島氏は、7月の知事選へのくら替え出馬を表明した山本一太参院議員とも親しく、ある事情通は「今回の選挙の構図を『小渕VS山本』と評する人もいる」と話す。

 南波氏陣営の選挙事務長に就いた中之条町の伊能正夫現町長は「『中之条から県議を』という声も強い。中之条が最大の激戦区となる」とみる。…(以下略)