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雨畑ダム放流で汚泥流出 山梨県が業者に月内撤去指導

 駿河湾でのサクラエビの記録的不漁の原因の一つとして、山梨県にある雨畑ダム下流に不法投棄された汚泥(ヘドロ)の流出が問題視されています。雨畑川は早川の支流で、早川は富士川に合流するため、雨畑川の汚泥が富士川が注ぐ駿河湾に影響を与えたのです。報道によれば、不法投棄と見られる行為が2011年以降継続して行われてきているとのことです。

 汚泥の不法投棄が問題とされているのは、ダムを管理する日本軽金属(株)が出資している採石業者ニッケイ工業です。
 先日の大雨で雨畑ダムから緊急放流が行われ、投棄場から汚泥が流出しました。山梨県は業者に汚泥を月内に撤去するよう、指導することになりました。産卵期を迎えつつあるサクラエビへの悪影響を危ぐする由比港漁協では、謝罪を求めたい、としています。

 汚泥流出問題はサクラエビの不漁に悩む静岡県の地元紙が継続して積極的に取り上げてきました。静岡新聞は5月14日に不法投棄の現場映像もYouTubeに掲載しています。
       
 なお、雨畑ダムは 日本軽金属㈱ の発電用ダム(1967年 3月竣工)で、総貯水容量1365万㎥に対して2016年度末の堆砂量は1274万㎥になっており、堆砂でほぼ満杯になっています。

◆2019年5月29日 静岡新聞
https://www.at-s.com/news/article/social/shizuoka/639236.html
ー雨畑川の汚泥、山梨知事「流出残念」 業者に月内撤去指導ー

  山梨県早川町の雨畑川に産業廃棄物の汚泥(ヘドロ)が不法投棄されたとみられる問題で、上流の雨畑ダムが雨による増水で放水したためヘドロが川に流出したことを受け、長崎幸太郎知事は山梨県庁で28日開かれた定例記者会見で「大変残念」と述べ、投棄したとされる業者に月内に河川内のヘドロを撤去させる考えを示した。
 長崎知事は「ダムが増水して放流を行わざるを得なかった」と強調。一方、不法投棄したとみられる同社から「5月中にヘドロを河川外の仮置き場に搬出する」との内容の計画書が出ていることを明らかにし「実現してもらうべく指導していく」と語った。
 同県は同社に対し、過去にヘドロを産業廃棄物として適正に処理した履歴を示す書類を提示するよう求めているが、今のところ提出されていないという。
 関係者によると、ダムの放水で砂利プラント内のヘドロ沈殿装置が壊れた2011年夏以降、不法投棄とみられる行為は継続して行われた。毎月1~2回、250~300トンのヘドロを投棄してきたとの指摘がある。
 雨畑川は、駿河湾サクラエビの不漁を受けて静岡、山梨両県が濁りの調査を進めている早川の支流。

◆2019年5月23日 静岡新聞
https://www.at-s.com/news/article/politics/shizuoka/636821.html
ー雨畑ダム放流で汚泥流出 山梨県が現場調査ー

 駿河湾サクラエビの不漁を受け、静岡、山梨両県が濁りの調査を進めている早川(山梨県早川町)の支流・雨畑川に汚泥(ヘドロ)が不法投棄されたとみられる問題で、上流にある雨畑ダムが21日未明からの雨による増水で緊急放流し、ヘドロの一部が下流に流出したことが22日、明らかになった。同県は同日、現場を調査した。
 ヘドロは流出後、水力発電用の導水管を経て、日本軽金属(東京都品川区)の工場放水路(静岡市清水区蒲原)から駿河湾に流れたとみられる。ダムと導水管の管理は同社。
 山梨県は21日、投棄現場がダムの約1キロ下流にあるためヘドロ流出を不安視し、放流しないよう要請。しかし1967年に完成した同ダムのダム湖は堆砂が進んで土砂で埋まっているため、同日午前に放流を始めた。
 放流が続く22日午前8時半ごろ、現場付近は河川内に新たな流れができ、ヘドロの流出が見られた。ヘドロは日軽金出資の採石業者ニッケイ工業が投棄したとみられ、同県は撤去を指示していた。同社はダムから数百メートル下流の雨畑川で砂利プラントを運用している。
 不法投棄とみられる行為は2011年夏ごろ、ダム放水でプラント内のヘドロ沈殿装置が壊れて以降継続してきたとの見方がある。ニッケイ工業は毎月1回程度、250~300トンを不法投棄してきたとの指摘がある。
 日軽金の担当者は取材に「大雨に見舞われ放流せざるを得ないことを心苦しく思う」とコメント。産卵期を迎えつつあるサクラエビへの悪影響を危ぐする由比港漁協(静岡市清水区)の宮原淳一組合長は「影響を非常に心配している。謝罪を求めたい」と述べた。

◆2019年5月16日 毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20190516/k00/00m/040/063000c
ー川沿いに汚泥野積み サクラエビ不漁との因果関係調査 山梨ー

  山梨県早川町の雨畑川沿いに産業廃棄物の汚泥を投棄したとして、県は廃棄物処理法に基づき、同町の砂利採取業者に撤去するよう行政指導した。県が15日明らかにした。雨畑川が早川と合流した後に注ぐ駿河湾ではサクラエビの記録的不漁が続いている。県は汚泥と不漁の因果関係は「現時点で不明」とし、調査を継続している。

 県環境整備課などによると、県に10日、「汚泥が不法投棄されている」との情報が寄せられた。県が調べると、この砂利採取業者が上流の雨畑ダムで採取した土から販売用の砂利を選別した後の汚泥を川の横に放置していた。一部の汚泥は川に流れ出しているのも確認された。河川法は河川区域内での盛り土などを禁じており、県は同法違反に当たる可能性もあるとみて、放置された時期や汚泥の量を調査している。

 駿河湾でのサクラエビの記録的不漁を受けて、県と静岡県は今月上旬から雨畑川を含む早川水系と富士川の計14カ所で共同調査をしている。

 長崎幸太郎知事は15日の定例記者会見で「業者に速やかに是正を求めていく。今回の事案とサクラエビの不漁の間に因果関係があるかは分からない」と述べた。

 砂利採取業者は毎日新聞の取材に対し「行政指導を受けたのは事実。県の指導に従いたい」と答えた。【野呂賢治】

◆2019年5月16日 静岡新聞
https://www.at-s.com/news/article/politics/shizuoka/634015.html
ー雨畑川汚泥投棄、計画的か 山梨の採石業者、土管埋設流れ変えー

  山梨県早川町の雨畑川に採石業者が汚泥(ヘドロ)を不法投棄していたとみられる問題で、投棄現場付近で違法に川の流れを変える「瀬回し」が行われていた疑いが判明し、同県が計画的投棄の可能性を視野に現地調査を続けていることが15日までに分かった。
 雨畑川は、駿河湾のサクラエビの不漁を受け静岡、山梨両県が5月以降に濁りの合同調査を実施している早川水系にある。下流域で富士川に合流するほか、発電用の導水管を通って駿河湾に注ぎ込む。
 同県治水課によると、現場は無許可でコンクリート製の土管が埋設され、川の流れが改変されていた。河川法違反の恐れがあり、同課はヘドロ投棄をしやすいよう周辺を造成していた可能性があるとみている。
 同課の担当者は「埋設された土管の上はダンプカーの進入路が作られている。(約1キロ上流の)雨畑ダムは雨期には放水する。その際にヘドロが下流に一緒に流れる構造になっていた可能性もある」と指摘した。
 同県によると、聞き取り調査に対し業者は「一時的に保管するつもりだった」と説明。ただ、外部に搬出した痕跡が見当たらないことから、治水課や環境整備課は「汚泥が産業廃棄物であるという認識を持ちながら、雨畑川に投棄していた可能性が非常に高い」とみている。
 現場周辺には、本来砂利プラント内に設置されているはずのヘドロ沈殿装置の一部も確認された。2011年夏ごろ、ダムの放水によりプラントから流出したままといい「装置は再稼働しておらず、これ以来投棄が繰り返された」との指摘もある。

◆2019年5月14日 静岡新聞
https://www.at-s.com/news/article/politics/shizuoka/633195.html
ー山梨・雨畑川に汚泥投棄 採石業者、廃棄物処理法に抵触かー

 静岡、山梨両県がサクラエビの不漁などを受け濁りの調査を進めている早川水系の雨畑川(山梨県早川町)で、砂利プラントを運営する採石業者が産業廃棄物の汚泥(ヘドロ)を河川に不法投棄してきた疑いが浮上、山梨県が13日までに、現地調査と業者からの聞き取りを開始したことが分かった。廃棄物処理法や河川法などに抵触している可能性がある。

 投棄しているとみられるのは、販売用に直径数センチ程度に石を砕いた後の洗石工程で出る微粒子分を多く含むヘドロ。両県が実態を調べている流域全体の濁りにどの程度影響しているかは不明。雨畑川を管理する山梨県治水課の清水宏課長は「違法の可能性が高い行為で調査を進める」とコメント。業者の担当者は取材に対し「違法性の有無は不明だが、県の指導には従う」と話した。
 同社は堆砂が著しい雨畑ダム上流の土砂を、地下トンネル内のベルトコンベヤーを経て、ダム下流の砂利プラントに搬出し、砕石を製造しているという。廃棄物処理法などによると、ヘドロは微粒子を分離し、固形物にして産業廃棄物として処理することが義務付けられている。
 関係者によると、同社は数年前からプラント内でこの分離作業を行わず、ショベルカーで砂利プラント内の水槽からヘドロをかき出し、複数台の大型ダンプカーで搬出していたという。
 取材した4月下旬、雨畑川の河川内にダンプがヘドロを投棄している様子が確認できた。関係者によると、月に一度程度、各回100トン以上が投棄されてきた可能性があり、山梨県は、こうした経過や同社の関与について詳しい聞き取りを行っているとみられる。
 山梨県側に早川水系の濁りの実態調査を打診した静岡県水産業局の中平英典局長は「事実とすれば、大変遺憾だ」と話した。

<メモ>汚泥 事業活動により生じた産業廃棄物の一つで、含水率が高く粒子の微小な泥状のものを指す。廃棄物処理法は汚泥を含む20種類を産業廃棄物に指定し、処理方法などを厳格に規定している。