八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

鹿野川ダム改造事業完成、愛媛県大洲市で式典

 愛媛県・肱川の治水対策として国土交通省が進めてきた鹿野川ダム改造事業が完成し、6月9日にダム下流の愛媛県大洲市で完成式が開かれました。
 鹿野川ダム改造事業は昨年度中に完了する予定でしたが、昨年の西日本豪雨で現場が被災し、完了が遅れたとのことです。

 この改造事業の主たる内容は、トンネル洪水吐を設置して、治水容量1650万㎥を2300万㎥に増やすものです(発電容量を転用)。
 しかし、昨年7月の鹿野川ダムの貯水量の変化をみると、右図のとおり、鹿野川ダムは事前放流を行って(発電用の放流管(最大毎秒28トン)を使用)、豪雨直前は貯水量を749.8万トンに落としていました。有効貯水容量が2980万トンですから、差し引き2230万トンの空き容量が確保されていました。改造後の2390万トンと大差がありません。したがって、改造後であっても、昨年の緊急放流は避けられなかったことになります。

 鹿野川ダム改造事業の総事業費費は487億円にもなります。肱川ではダム優先の河川行政が進められて河道整備がなおざりにされ、かなり長い無堤区間が放置されてきました。必要性が希薄な鹿野川ダム改造の事業費を肱川の河道整備を回していれば、西日本豪雨の被害を大きく軽減することができたと思います。

 6月6日の参議院国土交通委員会では、山添拓議員が今後5年で国土交通省が肱川の河道整備を実施すること、昨年までの5年間の肱川の河川改修の予算はダム事業の予算の5分の1以下であったことを指摘し、ダム偏重の河川行政が肱川水害の根本的な原因であったことを取り上げました。
https://youtu.be/aVoT6Ejt_V4

 しかし、国交省四国地方整備局は肱川において、新たに山鳥坂ダムを建設する計画を進めており、河川行政を改める気配はありません。各メディアも、国交省による巨大事業のPRを無批判に流す報道がほとんどです。

〈関連情報〉「国交省四国地方整備局、野村・鹿野川ダム新操作規則の運用開始」
      https://yamba-net.org/wp/47327/

◆2019年6月9日 愛媛新聞
https://www.ehime-np.co.jp/article/news201906090053?utm_medium=social&utm_content=%2Farticle%2Fnews201906090053
ー洪水調整容量1.4倍に増強 鹿野川ダム改造、全事業完成 大洲で式典ー

 肱川流域の治水対策として国が進めてきた愛媛県大洲市肱川町山鳥坂の鹿野川ダム改造事業で、最後に残っていた「トンネル洪水吐(こうずいばき)」がこのほど完成し、9日、同町予子林の風の博物館で全事業の完成式が開かれた。改造でダムの洪水調整容量を2390万トンと従来の約1.4倍に増強。トンネルの運用で洪水をため始める水位を従来より4.7メートル下げ、下流の洪水被害軽減を図る。

 国土交通省山鳥坂ダム工事事務所によると、改造事業は洪水調整機能の増強や貯水池の水質改善などを目的に、2006年度着手。下流の状況を見ながらよりきめ細かな放流量の増減(開閉操作)を可能にするクレストゲートの改良や、水質悪化の原因となるアオコの発生を抑制する曝気(ばっき)循環装置の設置、任意の深さの水を放流できる選択取水設備の新設などの工事を実施した。総事業費は487億円。

 洪水吐のトンネル部分は全長457メートル、内径11.5メートルで、高い水圧に耐えられる鉄筋コンクリート部分と、世界最大級の鋼製放流管からなる。低い水位の放流能力が向上し、増強した洪水調整容量を有効活用できるようになった。

 完成式には国や流域自治体の関係者ら約200人が出席。大洲市の二宮隆久市長は「鹿野川ダム改造事業の完成で、肱川流域住民の生活を守る治水対策が一歩進んだ」と述べた。

◆2019年6月9日 テレビ愛媛
http://www.ebc.co.jp/news/data/index.asp?sn=7259
ー鹿野川ダム改造事業完成式 洪水対策が強化ー

 肱川の洪水対策として進められていた大洲市にある鹿野川ダムの改造事業がこのほど完成し、9日、記念の式典が行われました。大洲市肱川町で行われた完成式には関係者約100人が出席、事業の完成を祝いました。鹿野川ダムの改造事業は洪水調節機能を強化するため国が2006年から進めてきたものです。このうち新たに設置された「トンネル洪水吐」は大雨の際などにあらかじめトンネルを使い放流することでダムの空き容量をこれまでの1.4倍に増やすものです。この事業の完成に伴い鹿野川ダムと野村ダムでは操作ルールを変更、西日本豪雨クラスの大雨が降っても洪水被害は大幅に軽減できるとしています。