八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

国交省による球磨川治水対策協議会、開催の真の目的は川辺川ダムの復活か?

 「東の八ッ場 西の川辺」と称され、問題のあるダム事業として知られる熊本県の川辺川ダム。
 2009年の政権交代の際には、民主党が「八ッ場ダムと川辺川ダムの中止」を政権公約(マニフェスト)に掲げたものの、その後、八ッ場ダムは建設され、川辺川ダムは事業が凍結され、明暗が分かれました。
 八ッ場ダムにおいては、ダムの共同事業者である利根川流域一都五県がダム中止に強く反発したのに対して、川辺川ダムを巡っては、球磨川流域住民の反対運動が熊本県知事を動かし、熊本県がダムの白紙撤回を国に求めたことがその背景にありました。球磨川流域住民にとって、川は身近なもので、過去に建設された上流のダムのせいで、河川環境が悪化したことや、洪水被害がむしろ拡大したことは、誰もがよく知る生活の一部であったのに対して、利根川流域の住民の殆どは、自分たちが八ッ場ダムの「受益者」とされていることすら知りません。

 しかし、国交省九州地方整備局は川辺川ダム事業をあきらめていません。この間、事業中止の手続きを取らず、川辺川ダムに代わる治水対策を検討する場として、球磨川治水対策協議会を維持してきたのはこのためと見られています。

 6月7日、球磨川治水対策協議会が1年4ヶ月ぶりに開かれました。

 球磨川治水対策協議会などの一連の会議資料は国土交通省 九州地方整備局 八代河川国道事務所のホームページに掲載されています。
 http://www.qsr.mlit.go.jp/yatusiro/river/damuyora/index.html

 そのうち、「球磨川治水対策協議会第9回 令和元年6月7日開催」が今回の資料です。
 その中で、資料5に10通りの治水案の概要が示され、8ページにおおむねの事業費と工期が示されています。 
 右の画像をクリックすると、資料5が拡大表示されます。

 最も安いのは、組み合わせ案④「(C)堤防嵩上げを中心対策案とした組み合わせ」ですが、それでも約2800億円もかかり、引堤や堤防嵩上げなどで移転戸数が 約340戸にもなるというのですから、実現の可能性はほとんどありません。国土交通省が考える枠組みの範囲では、このような検討結果しかでてきません。有効な治水策は川辺川ダムを中心するものしかない、という結論になるように、国土交通省が練っている長期的な戦略が透けて見えるようです。

 国交省関東地方整備局が2010年~2011年に行った八ッ場ダムの検証でも、利水、治水における八ッ場ダムの必要性を前提として、富士川から首都圏に水を導水するなどの荒唐無稽な代替案と比較して、八ッ場ダム事業を「継続妥当」と結論づけました。
 国土交通省の各地方整備局が組織を維持するために巨大ダム事業を必要としているのですから、事業主体が検証作業を行う限り、結論ありきの「検証」になってしまいます。

 関連記事を転載します。

◆2019年6月9日 毎日新聞熊本版
 https://mainichi.jp/articles/20190609/ddl/k43/040/354000c?pid=14516
ー球磨川治水対策協議会 会合で国と県、10案示す 知事・流域首長会議で検討へ /熊本ー

 熊本県・球磨川水系の国営川辺川ダム(同県相良村)計画が白紙撤回された後、国と県、流域市町村がダムに替わる治水策を協議してきた「ダムによらない治水を検討する場」を引き継いだ「球磨川治水対策協議会」の第9回会合が7日、同県人吉市であり、事務局を務める国土交通省九州地方整備局と県が複数の対策を組み合わせた10通りの治水案を提示した。

 提示したのは、球磨川本流を3区間、支流の川辺川を3区間の計6区間に分け、引堤(ひきてい)(堤防を移動させて川幅を広げる)▽河道掘削▽堤防かさ上げ▽遊水地▽市房ダムのかさ上げ▽放水路--などの対策を組み合わせた数百通りの治水策の中から、概算事業費や環境・地域社会への影響、実現可能性などを考慮して絞り込んだ10案。

 堤防のかさ上げをメインに川辺川上流と球磨川上流の河道を掘削し、球磨川中流に造る輪中堤(わじゅうてい)や宅地かさ上げを組み合わせる案は事業費が約2800億円で最も安上がりではある。しかし人吉地区の景観を損ねる上、移転戸数が340戸に上る難点がある。

 川辺川上流部から直接、八代海に水を流す放水路の整備をメインに、球磨川上流部の河道掘削を組み合わせる案は家屋移転の必要がない。しかし事業費が約8200億円に上る上、関係漁協などとの調整が必要。このようにそれぞれの案の利点と課題も報告された。

 示された10案は流域市町村が持ち帰って意見をまとめ、その結果を踏まえて国交省九州地方整備局長や蒲島郁夫知事、流域首長らのトップ会議で検討する。【福岡賢正】

◆2019年6月8日 熊本日日新聞
https://kumanichi.com/feature/kawabegawa/1069569/
ー治水策10案提示 国交省と熊本県が球磨川対策協でー

 川辺川ダムに代わる球磨川水系の治水対策を国と県、流域12市町村が検討する「球磨川治水対策協議会」の第9回会合が7日、人吉市であり、事務局の国交省九州地方整備局と県が、河川を6区間に分けて複数の対策を組み合わせる10案を提示した。

 前回の会合で、(1)引き堤(2)河道掘削(3)堤防かさ上げ(4)遊水地の設置(5)市房ダム再開発(6)放水路の整備-の6対策を軸に、組み合わせ案を検討することを申し合わせていた。

 今回の10案では「引き堤」を柱に、球磨川上流部と川辺川の県管理区間上流部は「河道掘削」とするなど、複数の対策を組み合わせた。国交省は対策の組み合わせについて「費用や地域への影響などを踏まえ選んだ」と説明。市町村長会議を開催して報告し、意見を聴く。一昨年の意見公募で提案されたコンクリートと鋼矢板による堤防のかさ上げと地下遊水地の設置は、10案の対象外となった。
 同協議会は昨年2月以来の開催。12市町村の副首長ら約50人が出席した。(小山智史)

◆2019年6月11日 建設通信新聞
https://www.kensetsunews.com/archives/330187
ー10案提示、方向性検討へ/中心対策に放水路整備など/球磨川治水対策協ー

 川辺川ダム(熊本県)に代わる治水対策を検討している球磨川治水対策協議会の第9回会合で、事務局の九州地方整備局と熊本県は、複数の治水対策を組み合わせた10案を提示し、概算事業費や実現性、おおむねの工期など課題ごとに評価した。今後、整備局長・知事・市町村長会議などを通して、議論の方向性を検討する。同協議会は、球磨川流域において「戦後最大の洪水被害をもたらした1965年7月洪水と同規模の洪水を安全に流下させる」を治水安全度に設定し、ダムによらない治水対策を検討している。

 球磨川本川、川辺川筋の各3区間に分け、中心対策となる▽引堤▽河道掘削など▽堤防かさ上げ▽遊水地(17カ所)▽ダム再開発▽放水路ルート1▽放水路ルート4--の6案に、補完対策を組み合わせて計10案とした。

 完成までの費用が最も高いのは遊水地(17カ所)を中心に、人吉地区と川辺川筋の直轄管理区間で引堤(両岸)などを組み合わせる案で1兆2000億円。最低額は堤防かさ上げを中心とする案で2800億円となる。

 最短で効果発現するのは、川辺川上流部から球磨川中流部(八代市)に放水する放水路ルート1(長さ15㎞)、川辺川上流部から八代海に放水するルート4(長さ25㎞)をそれぞれ中心とする2案で、いずれも45年となる。2案は、用地買収面積や、移転戸数も最も少なくなる。ただ、地質調査を実施していないため技術的な実現性は判断できないとした。残り8案は50年以上となり、引堤を中心とする案は200年となる。

 会議では、堤防のかさ上げ案について、水位の上昇を許容するため氾濫した場合のリスクが拡大するなどといった意見や、放水路ルート1案では放流地点の八代市から懸念が示され、ルート4についても漁業への十分な説明が必要などとした。