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川棚町議会に反対地権者の声届く 石木ダム

 さる6月16日、石木ダム予定地を抱える長崎県川棚町の町議会では、日曜議会が開かれて石木ダム問題についての議論が行われました。
 石木ダム予定地では、今も13世帯の住民がふるさとでの生活を続けています。春の町議選では地権者である炭谷猛さんがトップ当選を果たしました。今回は炭谷さんが一般質問に立ち、石木ダムの問題を追及するということで、傍聴席は満席になったとのことです。

 川棚町当局は石木ダムは必要との立場です。町内にはダム予定地から転出した住民もおり、川棚町では石木ダムはタブー視されてきたということです。しかし、ダム予定地に残る住民の反対運動は、全国で支援の輪が広がっており、炭谷さんの当選もあり、町は石木ダム問題を直視せざるをえなくなっています。

 下記の朝日新聞によれば、川棚町の水道は現在は水質の良い地下水を使っていますが、石木ダムができると河川水を使わなければならなくなるということです。山口町長は「水中に空気を送り込んで対流させ、水質保全に努める」と議会で説明しましたが、石木ダムがダム予定地以外の住民の生活にとってもマイナスなのは明らかです。
 推進派の町議は、「(ダム予定地に暮らし続ける住民が立ち退きやすくなるように、)移転宅地をあっせんすべきだと迫った」とのことですが、「移転宅地のあっせん」など、ダム事業を推進したい長崎県がとうにやっていることです。議会でのこの発言からも、推進派と呼ばれる町会議員がダム事業を巡る状況をまったく把握できていないことがわかります。

 一方、長崎県議会では、社民党と共産党の議員7人がダム予定地の強制収用を行わないよう、県に申し入れました。

 関連記事を転載します。

◆2019年6月17日 朝日新聞
https://digital.asahi.com/articles/ASM6J5746M6JTOLB003.html?iref=pc_ss_date
ー長崎)川棚町議会に反対地権者の声届く 石木ダムー

 長崎県と佐世保市が川棚町で進める石木ダム計画が16日、同町議会(定数14)で議論された。計画に反対する地権者として初めて4月の町議選に立候補し、トップ当選した炭谷猛氏(68)が一般質問に立ち、1975年の事業採択以来初めて、反対地権者が議会で主張を語った。

 ダムは町内の石木川に建設予定で、本流・川棚川の洪水防止(治水)と、佐世保市の水道用水の確保(利水)が目的。県収用委員会は5月、予定地の土地家屋を強制収用できる裁決を下した。

 炭谷氏は「(水没予定地の)川棚町岩屋郷の我が家の仏壇には、宝暦3(1753)年からの位牌(いはい)が並んでいる。この間、世代をつなげて、いま私がいる」と切り出した。

 そして、建設に抗議する住民を県警機動隊が排除する中で県が強制的に実施した測量以来、4代にわたる町長はいずれも「事業に対する知識と、地元住民への思いやりを欠いてきた」と批判。さらに、ダムからの取水となると、現在は地下水が主の町民の水道水は質が低下するのではないかとただした。これまで佐世保市の水道水確保の目的の陰に隠れて、ほとんど議論されてこなかった視点だ。

 山口文夫町長は「すべてをダムから取水するわけではないが、安定的に取水できるのは町にも有益だ」としつつも、「水中に空気を送り込んで対流させ、水質保全に努める」と述べ、暗に水質への懸念を認めた。

 一方、推進派の田口一信氏(70)は「町がダムの必要性を積極的に説明してこなかったから町民の理解が進んでいない」と批判。予定地の土地明け渡し期限が示されたことを踏まえ、反対地権者13世帯の移転宅地をあっせんすべきだと迫った。

 山口町長は「反対地権者の思いを逆なでするようなことはすべきでないと考えた」と語り、これまでダムのPRに消極的だったことを認めたうえで、移転宅地のあっせんについては「時期尚早」と述べた。

 町議会は1995年、2008年、13年の3度、ダム推進決議をしたが、本格的な賛否の議論はされず、今春引退した共産党町議は「反対派だ」として、議会のダム対策調査特別委員会入りを認められなかった。今回、炭谷氏は特別委入りが認められている。(原口晋也)

◆2019年6月17日 長崎新聞
https://this.kiji.is/513151806548526177?c=39546741839462401
ー石木ダム巡り議論 一般質問 川棚町で日曜議会ー

 定例東彼川棚町議会は16日、「日曜議会」を開き、一般質問に8人が登壇。県と佐世保市が同町に計画する石木ダム建設事業を巡り、推進派と反対派双方の議員が質問した。山口文夫町長は「町にとって最重要課題」と述べ、あらためて推進の立場を強調した。

 4月の改選後、初めての一般質問。町議会石木ダム対策調査特別委員長で推進の立場の田口一信氏は「ダムの必要性について町民の理解が不十分」と指摘し、「町長から積極的な情報発信を」と注文した。

 4月に初当選した反対地権者の炭谷猛氏は冒頭30分以上にわたり、ダム反対運動の経過を説明し「歴代町長の勉強不足、思いやりや政治力の欠如のため、住民は翻弄(ほんろう)されてきた」と批判。反対地権者13世帯の宅地を強制収用できる県収用委員会の裁決に触れ「なぜ住民を守ろうとしないのか」と迫った。

 山口町長は「一般質問は事前通告制だ」として、炭谷氏が事前に通告していたダムの水質などについての質問だけに答えるにとどめた。

 傍聴席はほぼ満席で、ダム問題への関心の高さをうかがわせた。傍聴した町民の1人は「町長の答弁があいまいでふに落ちなかった。事態が緊迫しているのに、それでいいのか」と不満を示した。

◆2019年6月18日 長崎新聞
https://this.kiji.is/513517835303011425?c=174761113988793844
ー石木ダム 行政代執行しないで 社民と共産、県に要望ー

 長崎県と佐世保市が東彼川棚町に計画する石木ダム建設事業について、社民党県連(吉村庄二代表)と共産党県委員会(山下満昭委員長)は17日、家屋の撤去や住民の排除といった行政代執行に踏み切らず、反対地権者と話し合うことなどを長崎県にそれぞれ申し入れた。

 石木ダムを巡っては、家屋13世帯を含む約12万平方メートルの明け渡しを地権者に求める裁決を、県収用委員会が5月21日付で出した。期限までに応じなければ、県と佐世保市は知事に行政代執行を請求でき、知事が対応を判断することになる。

 社民県連は県地方自治研究センター(舟越耿一理事長)と連名で、「強制収用の手続きを直ちに取りやめ、工事を中断」することなどを求める申し入れ書を中村法道知事宛てに提出。吉村代表は県が過去に実行した強制測量が住民の不信感を招いたことに触れ、「(行政代執行になれば)県政の汚点。本当にダムが必要かどうかから検討し直してほしい」と求めた。舟越理事長は「地権者の気持ちになって、話し合いで解決してほしい」と述べた。

 共産県委員会は中村知事宛てに「(反対地権者の願いは)行政運営においても最大限尊重されるべき」などとする申し入れ書を提出。堀江ひとみ県議は「明け渡し期限が明確になり、切羽詰まっている。知事には行政代執行しないという立場に立ってもらいたい」と要望した。

 双方の申し入れに応じた平田研副知事は「石木ダムは必要不可欠な事業。行政代執行はあらゆる選択肢の一つで、さまざまな状況を見極めながら総合的に判断する」と述べるにとどめた。

◆2019年6月18日 長崎放送
https://www.nbc-nagasaki.co.jp/nbcnews/detail/2573/
ー石木ダム土地の強制収用やめてー

 東彼・川棚町に計画されている石木ダム事業をめぐり、社民党県連の代表らが、17日、県に対し、土地の強制収用に向けた手続きを止めるよう申し入れました。

 申し入れをしたのは社民党長崎県連の吉村庄二代表ら7人で、17日、平田副知事に対し申入書を手渡しました。石木ダム事業をめぐっては、5月、県の収用委員会が、反対地権者全員の土地や家屋を含む全ての用地の収用を認める裁決を出しています。これを受けて吉村代表らは、土地の強制収用はせず地権者との話し合いで解決するよう県に求めました。これに対し平田副知事は「石木ダムは必要不可欠な事業」とした上で、環境が整えば知事が地権者と面会することもありえるとの認識を示しました。