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霞ヶ浦導水事業:魚類への影響調査試験を開始

 霞ヶ浦導水事業の工事中止を求める裁判は、昨年4月末に東京高裁で那珂川漁協と国土交通省との間で和解が成立し、漁業への影響がないようにする条件が和解条項に盛り込まれました。

 これを受けて、国土交通省関東地方整備局は7月2日、那珂川からの試験通水を行って、魚類への影響を調査することを発表しました。
 那珂川から霞ヶ浦への計画導水量は15㎥/秒ですが、その導水路は一部しかできていないので、完成済みの桜川への導水路を使って3㎥/秒の規模で取水試験を行うというものです。

 那珂川から霞ヶ浦への取水施設は半分程度しかできていないので、試験通水の結果を見て、取水施設の残りの工事に取りかかることになっています。
 那珂川から霞ヶ浦への那珂導水路は1/3しかできていませんが(43.1kmのうち、14.2km完了)、那珂導水路の残りの工事を試験通水と並行して進めるので、導水事業の完成予定は今のところ、2023年度となっています。導水事業の実際の完成はかなり遅れるのではないかと思いますが、東京高裁の裁判で那珂川の漁協が折角、和解に持ち込んだのに、事業がどんどん進んでいくようで、先行きが心配されます。

 試験の内容についての国交省の資料と関連記事は以下の通りです。

◆記者発表資料 国土交通省関東地方整備局 霞ケ浦導水工事事務所
「魚類迷入試験(那珂川から桜川への試験通水)を開始します。」 
https://yamba-net.org/wp/wp-content/uploads/2019/07/d8fe5c6b6868823b5e411c31de357d0c.pdf

下画像=国交省・記者発表資料より

 

◆国土交通省・霞ヶ浦導水事務所の発表 
 http://www.ktr.mlit.go.jp/kisha/dousui_00000034.html
 
魚類迷入試験(那珂川から桜川への試験通水)を開始します。

霞ヶ浦導水事業において、那珂川の魚類迷入試験施設が完成したことから、令和元年7月8日に魚類迷入試験(那珂川から桜川への試験通水)を開始します。

                     霞ヶ浦導水工事事務所

1.試験の目的
 霞ヶ浦導水事業において、那珂川からの導水の本格運用の方法を決定するに当たり、魚類の迷入(吸い込み)を防止する魚類迷入防止対策(案)について、魚類迷入防止効果を科学的に評価・検証することを目的として実施するものです。

2.試験の実施時期
 令和元年7月8日(月)~(3年間程度を予定)

3.試験の実施場所
 茨城県水戸市渡里町字枝内地先

以下略

 関連記事を転載します。
 

◆2019年7月9日 朝日新聞茨城版
https://digital.asahi.com/articles/ASM784VT8M78UJHB01M.html
ー魚類の吸い込み防止試験を開始 霞ケ浦導水事業ー

 那珂川と利根川を霞ケ浦を経て地下トンネルでつなぎ、水を行き来させる霞ケ浦導水事業で、国土交通省は8日、取水時に魚類を吸い込まないための試験を始めた。那珂川から桜川や千波湖に送水し、3年程度かけて有効な対策を探る。

 霞ケ浦導水工事事務所(土浦市)によると、この日午前、水戸市渡里町の那珂機場に建設した施設で、那珂川からの取水を始めた。取水口は4門あり、前面に稚魚を吸い込まないための網のほか、川底の部分に底生魚が入り込まないような「魚返し」などを設けている。

 試験期間中は、アユやサケ、サクラマスのほか、ウナギ、モクズガニといった魚種を対象に、どれほど取水口の中に入り込むのかや、迷い込み防止にはどのような対策が効果的なのかを探るという。

 霞ケ浦導水事業は、那珂川から霞ケ浦までの延長約43キロと、霞ケ浦と利根川をつなぐ約2・6キロの導水路からなる。両河川の水をやりとりすることで、渇水時に飲み水や工業用水を確保したり、霞ケ浦や桜川などの水質浄化をはかったりする狙いがある。2023年度の完成見込みで、工事の進捗(しんちょく)状況は約40%という。(庄司直樹)

◆2019年7月9日 茨城新聞
https://ibarakinews.jp/news/newsdetail.php?f_jun=15625875841442
ー霞ケ浦導水 那珂川から初の取水 魚吸い込み試験開始ー

 霞ケ浦と那珂川、利根川を地下トンネルで結ぶ霞ケ浦導水事業で、国土交通省は8日、那珂川から初めて取水した。取水による魚の稚魚などの吸い込み量を調べる「魚類迷入(吸い込み)試験」を開始し、那珂川と桜川を結ぶ那珂導水路水戸トンネル区間(6・8キロ)で水を通した。試験は月に数回ずつ、午前8時から午後6時までの時間帯に行う。1984年の建設着手から35年を経て、初めて那珂導水路に水が流れた。

 同日午前10時半、水戸市渡里町に完成した那珂川の取水口が開門されると、直径約4メートルの導水管に水が流れ込んだ。同市河和田の桜川の放流口の水門も同時に開かれ、那珂川の水が桜川に勢いよく放出され始めた。初日の通水は5時間半行われ、水門は午後4時に再び閉じられた。

 国交省関東地方整備局霞ケ浦導水工事事務所によると、事業計画水量は最大で毎秒3トンの導水だが、当面は1・5トン。9月に3トンまで増やす予定だ。