きたる参議院選では、石木ダム問題を抱える長崎選挙区でも、他の一人区と同様、野党統一候補が立候補していますが、県内最大の政治問題である石木ダムに触れていないとのことです。ダム事業が利権となる自民党が推進一辺倒なのはわかりますが、野党統一候補がダム問題に腰が引けている状況はなんとも残念です。
長崎県はダムで水没する道路の付替え工事を強引に進めており、工事現場では雨が降り続く中でも、反対住民と支援者がいつもと変わらず座り込みを続けています。
◆2019年7月8日 長崎新聞
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190708-00000001-nagasaki-l42
ー石木ダム 重大局面も選挙運動で触れず 明け渡し期限迫るー
長崎県と佐世保市が東彼川棚町に計画する石木ダム建設事業。県収用委員会が5月、反対地権者13世帯の宅地を含む未買収地の明け渡しを求める裁決をし、家屋の撤去や住民の排除などの行政代執行が現実味を帯びる重大局面に入ったが、参院選長崎選挙区(改選数1)に名乗りを上げた候補者らの積極的な論戦は見られない。「既に決まったこと」「真正面から議論して」-。有権者の意見は分かれている。
公示翌日の今月5日、自民現職の古賀友一郎候補(51)、国民民主新人の白川鮎美候補(39)がそれぞれ選挙運動で川棚町に入ったものの、演説で石木ダム問題に触れることはなかった。県が進める付け替え道路の工事現場では、反対住民と支援者がいつもと変わらず抗議の座り込みをしていた。「選挙中だろうが容赦なく工事は進む。私たちの闘いの場所はここ」と住民女性は語る。
2009年に誕生した民主政権(当時)は「コンクリートから人へ」をスローガンに掲げ、全国でダム事業の見直しに乗り出したが、石木ダムは結局「継続」となり、自民の政権奪還後の13年、国は土地収用法に基づく事業認定を告示した。地権者らは国に認定取り消しを求め訴訟を起こしたが、一審長崎地裁は昨年7月、請求を棄却。時代が令和に変わった今年5月、県収用委は宅地を含む明け渡し裁決を出し、ダム建設に必要な全ての用地を強制的に収用することが可能になった。先の住民女性は「政治や司法が救ってくれなくても、私たちが古里を諦めることはない」と奮い立つ。
こうした中、ダム問題への地元の関心は高まっている。6月の定例川棚町議会では、推進の立場の議員と、4月の統一地方選で初当選した反対地権者の議員が一般質問に登壇し、満員の傍聴者が詰め掛けた。町民有志が企画し、反対地権者の暮らしを追ったドキュメンタリー映画の上映会も川棚、東彼杵の両町で相次いで開かれ、いずれも盛況ぶりを見せた。
川棚の上映会に参加した地元の女性は「候補者には国政の課題や政党の主張だけでなく、地域の課題についての考えを語ってほしい」と注文。一方、別の地元男性は「石木ダムは国が公益性を認めた事業。無責任に政治家が方針転換しても、地元が混乱するだけ」。裁決が示した明け渡し期限は、家屋などの物件がない土地が9月19日、物件がある土地が11月18日。参院選での活発な議論がないまま、その時が迫る。