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スーパー堤防訴訟、住民側ふたたび敗訴

 東京都江戸川区のスーパー(高規格)堤防の必要性・公共性を問う控訴審で7月16日に東京高裁の判決がありました。まことに残念ながら、住民側の敗訴でした。

 都築政則裁判長は判決言い渡しを瞬時に終わらせるのではなく、判決文の要旨を述べる姿勢を示しましたが、敗訴には変わりはありませんでした。判決文は22ページの短いものです。住民側が主張した項目は一通り取り上げているものの、国と江戸川区に勝たせるための結論が先にある、論理性がない判決文でした。

 スーパー堤防事業では、堤防をつくる土地の住民が一旦立ち退きを余儀なくされ、堤防をつくった後、住民が堤防の上に家を建て直すことを前提として進められます。ところが、この裁判で問題となった江戸川区のスーパー堤防では、盛り土でつくった堤防の強度不足が明らかになり、住民は当初予定された堤防上での再建を遅らせなければなりませんでした。都築裁判長は国に対して地耐力関係の全データの文書提出命令を出すなど、訴訟指揮はよかったのですが、判決は行政に忖度するものでした。

 水問題研究家(当会運営委員)の嶋津暉之さんは、今年1月の裁判でスーパー堤防事業の不要性・欺瞞性を証言しました。江戸川下流部で延べ22kmの計画区間を整備するのに700年もかかる事業は、治水対策として無意味であると指摘しましたが、判決文では「全体の完成がおよそ不可能であると認めるに足りる証拠はない」として退けました。

 住民側は上告する方針です。

 江戸川・生活者ネットの稲宮須美さんが裁判のレポートを掲載しています。

「司法でも忖度?~江戸川区スーパー堤防差止等訴訟控訴審不当判決①」

 関連記事を転載します。

◆2019年7月17日 朝日新聞
https://digital.asahi.com/articles/CMTW1907171300001.html
ー高規格堤防訴訟 住民側再び敗訴ー

 ◆高裁「必要性ある」

 国が進める高規格堤防(スーパー堤防)の整備事業で、江戸川区の住民4人が、国と区に計400万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が16日、東京高裁(都築政則裁判長)であった。判決は、一審・東京地裁判決と同様に、住民側の請求を退けた。

 一般的な堤防は断面が山型になっているが、スーパー堤防は住宅地側へさらに土を盛って、傾斜をなだらかにして、裾野部分を長くする。裾野部分を道路用地などとして活用でき、川の水があふれても決壊の危険が少なく、被害を軽減できるとされる。

 住民側は、一部でしか整備が進んでいないスーパー堤防で洪水は防げないと主張。土を盛る際に転居や仮住まいを強いられたのは不当だと訴えていた。

 判決は、「整備には必要性、公共性がある」などとして訴えを退けた。