さる7月17日)は午前と午後にわたって、長崎地裁佐世保支部で石木ダム工事差し止め訴訟の証人尋問がありました。
午前中の2時間、全国のダム問題に取り組む嶋津暉之さんが出廷し、石木ダムを必要とする川棚川の治水計画が虚構であることを証言しました。午後はダム予定地住民ら6人の証言が行われました。
この訴訟は次回の11月18日の口頭弁論で結審となります。
◆2019年7月18日 朝日新聞長崎版
https://digital.asahi.com/articles/ASM7K6J3WM7KTOLB01V.html?iref=pc_ss_date
ー石木ダム工事差し止め訴訟 原告住民ら7人証言ー
長崎県と佐世保市が川棚町で進める石木ダム建設事業を巡り、反対地権者らが県と同市を相手に工事差し止めを求めた訴訟の証人尋問が17日、長崎地裁佐世保支部(平井健一郎裁判長)であった。水問題を研究する専門家や地権者など、原告7人が証言した。
水源開発問題全国連絡会共同代表の嶋津暉之氏(75)は、ダム計画の問題点を治水面から指摘。氾濫(はんらん)の危険には「(ダムを造らなくても)河道整備で対応できる」と述べた。
県は、ダムを「100年に一度の大雨」に対応する規模と設定している。嶋津氏は、県が測量した1975年の川幅を当時の航空写真から分析。実際の川幅は県の資料より最大33メートル広く、「氾濫時の被害を大きく見せるために『創作』したのではないか」と指摘した。
県の資料をもとに疑問点を次々に突きつける嶋津氏に対して、県側が「あなたの主張は予測に過ぎないのでは?」とただすと、「県は(誤った)予測でダムを造るんだろう!」との声が他の原告から漏れ、裁判長が注意する一幕もあった。
水没予定地の川原(こうばる)地区に嫁いで46年になるという岩下すみ子さん(70)も証言台に立ち、今年32回を数えた地元の「ほたる祭り」について語った。山から木を切り出し、春先から集めた山菜の料理でもてなす地域総出の祭りのにぎわいぶりを紹介。「川原に住むことが一番の幸せ。(県や市から)納得のいく説明は受けたことがない」と訴えた。
弁護士から「重機で家が取り壊されるイメージをしたことは?」と問われ「したこともないし、したくもない」と声を詰まらせた。
反対地権者を支援してきた松本美智恵さん(67)はダムで利水の恩恵を受けることになる佐世保市民として証言した。市は「水不足」を主張しているが、そもそも漏水が他都市と比較して多いのに対策が手薄だと指摘。「漏水対策が優先だ」と証言した。(横山輝、原口晋也)
◆2019年7月18日 長崎新聞
https://this.kiji.is/524415267483616353?fbclid=IwAR2ArwM0DmsxnCo1lN9IAOze22FMLCfGqKJ37kNCvx5vTE7nEvOWMKi56vM
ー「力づくで古里奪うな」 石木ダム地権者ら尋問 地裁佐世保支部ー
東彼川棚町に石木ダム建設を計画する県と佐世保市に、反対地権者らが工事差し止めを求めた訴訟の第12回口頭弁論が17日、長崎地裁佐世保支部(平井健一郎裁判長)であった。水没予定地の住民ら原告7人が当事者尋問に出廷し「力づくで古里を奪わないでほしい」と訴えた。次回期日の11月18日に結審予定。
石木ダムを巡っては、県収用委員会の裁決で宅地を含む全ての未買収地の強制収用が決まっている。住民の岩本宏之さんは「崖っぷちに立たされ、眠れない夜もある」、石丸勇さんは「大変な人権侵害だ」と怒りをあらわにした。岩下すみ子さんは「地域の人たちとのつながりを長い年月をかけて築き上げてきた。失いたくない」と声を詰まらせた。
このほか石丸穂澄さんと松本好央さんは、イベントや会員制交流サイト(SNS)などを通じて、事業への疑問や反対の声に対する共感が全国で広がっていると主張した。
水源開発問題全国連絡会の嶋津暉之共同代表と市民団体「石木川まもり隊」の松本美智恵代表も出廷。嶋津共同代表は、石木ダムの治水効果は川棚川下流域にしか及ばず、上流域には氾濫のリスクが残っているとし「費用対効果が小さい」と強調。松本代表は人口減少による水需要の低下などを指摘し「誰のための公共事業か。県と佐世保市は現実を直視してほしい」とダム以外の利水対策を検討するよう求めた。