7月17日、石木ダム工事差し止め訴訟の証人尋問が長崎地方裁判所佐世保支部で行われました。
原告7人の証人尋問で、午前の2時間は嶋津暉之さん(元・東京都環境科学研究所研究員)、午後の3時間はダム予定地、川棚町の川原(こうばる)に住む岩本宏之さん、石丸勇さん、岩下すみ子さん、松本好央さん、石丸穂澄さんと佐世保市民の松本美智恵さんの尋問が行われました。
当会の運営委員でもある嶋津さんより、証言内容について、以下の報告がありましたので、紹介させていただきます。
行政のハザードマップや治水計画、洪水流量などを詳細に分析した嶋津さんの証言内容を見ると、長崎県が石木ダムを治水面で必要と主張する根拠がことごとくでたらめであることがわかります。
———————————————–
私は、1/100洪水(100年に1回の最大洪水)のために石木ダムが必要だという川棚川の治水計画は虚構でつくられており、科学的に検証すれば、石木ダムは治水面で不要であることを証言しました。
具体的には次の5点について証言しました。
1 石木ダムができても川棚川流域において1/100洪水で溢れない範囲はほんの一部である。
2 川棚川治水計画では石木川合流点下流は1/100で計画されているが、この1/100は恣意的に設定されたものであり、川棚川の計画規模を科学的に求めれば、1/50が正しく、石木ダムは不要となる。
3 川棚川の計画規模1/100を前提としても、治水目標流量(基本高水流量)の計算の誤りを修正すれば、長崎県の数字よりかなり小さくなり、石木ダムは不要になる。
4 長崎県が示す1/100治水目標流量(基本高水流量)が石木ダムのない状態で流下した場合も余裕高(堤防高-水位)が半分になるだけであり、決して氾濫するような状態にはならない。
5 石木ダムは費用便益比計算の恣意的な設定を改めれば、費用便益比が1を大きく下回り、見直しすべき事業になる。
この証言の骨子についての詳しい説明は、水源開発問題全国連絡会ホームページの以下のページに掲載しています。
http://suigenren.jp/wp-content/uploads/2019/07/6aa2ace98148ef838cb0d3a3c97c9d96-1.pdf
石木ダム差し止め訴訟の証言骨子「石木ダムの治水面の虚構」
以下に目次を掲載します。
1 石木ダムができても川棚川流域において1/100 洪水で溢れない範囲はほんの一部
1-1 計画上も石木ダム完成後に 1/100 に対応できるのは流域の 8.8%
1-2 河口部から川棚大橋までの最下流約1kmの港湾管理区間は堤防整備の計画がない
1-3 川棚川下流部市街地の公共下水道計画区域は1/10 の雨で計画
1-4 川棚大橋下流の港湾管理区間と、川棚町低地部の内水氾濫域を除くと、石木ダム完成後に1/100 に対応できるのは流域のほんの一部
2 川棚川治水計画では石木川合流点下流は 1/100 で計画されているが、この 1/100 は恣意的に設定されたものであり、科学的に検証すれば 1/50 が正しく、石木ダムは不要
2-1 川棚川治水計画の計画規模 1/100 の求め方:原始河道の氾濫計算結果を使用
2-2 川棚川の原始河道(昭和 50 年当時の河道)はフィクション
2-3 現況河道を前提にして氾濫計算を行えば、計画規模は 1/50 になり、石木ダムは不要に
3 川棚川の計画規模1/100 を前提としても、治水目標流量の計算の誤りを修正すれば、石木ダムは不要に
3-1 1/100 を前提とした治水目標流量 1400 ㎥/秒は佐世保観測所の毎時雨量×0.94 から計算
3-2 治水目標流量 1400 ㎥/秒の計算の元になった昭和 42 年 7 月洪水は川棚川流域の雨量が佐世保観測所の雨量よりかなり小さかった
3-3 昭和 42 年 7 月洪水の計算を棄却すると、治水目標流量は 1400 ㎥/秒よりかなり小さくなり、石木ダムは不要に
4 長崎県が示す治水目標流量が石木ダムのない状態で流下した場合も川棚川は溢れない
5 石木ダムは費用便益比計算の恣意的な設定を改めれば、費用便益比が 1 を大きく下回り、見直しすべき事業になる
5-1 石木ダムの費用便益比 1.25 の内訳をみると、洪水調節の川棚川下流分はわずか 0.12
5.2 不特定利水の便益計算の問題点:便益がダム完成前に発生するという非現実的な仮定
5-3 不特定利水の便益計算の問題を改めると、石木ダムの費用便益比は1を大きく下回る
なお、証言はスライドを使って行いました。スライドは以下のページに掲載しています。
http://suigenren.jp/wp-content/uploads/2019/07/5f3f2213918366b3d544963e6d41a214.pdf
各スライドの解説は以下のページに掲載しています。
http://suigenren.jp/wp-content/uploads/2019/07/863aa767e73d26af4de9b051da5f8960.pdf
合わせてお読みいただければと思います。
——————————————-
嶋津さんが証言を行った裁判の報道は、以下のページに掲載しています。
https://yamba-net.org/wp/47939/