八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

富士川水系・雨畑ダムの堆砂状況など(静岡新聞)

 駿河湾産サクラエビの不漁は、駿河湾に注ぐ富士川上流の雨畑ダムによるものであることが明らかになってきました。静岡県はさる7月30日、サクラエビ不漁の原因を学術的に調査するための有識者会議を立ち上げたということです。

 この問題を精力的に取材している静岡新聞が、雨畑ダムの堆砂状況や、堆砂洪水を心配するダム上流域住民のアンケート調査結果を報道しています。雨畑ダムの堆砂量は総貯水容量の93%に達しています。サクラエビの不漁に端を発した取材ですが、これまで雨畑ダムのある山梨県ではあまり触れられてこなかった問題が表に出てきています。
 新聞記事に掲載されている雨畑ダムの堆砂のグラフ(右画像)は、水源開発問題全国連絡会が作成したものです。静岡新聞のネット記事には、このグラフの他、現地の動画や地図も掲載されています。雨畑ダム上流の昨秋の水害、すさまじい堆砂の状況も映像で確認することができます。

◆2019年7月30日 静岡新聞
https://www.at-s.com/news/article/social/shizuoka/663642.html
ー埋まるダム、迫る危機 山梨・雨畑川、静岡新聞社ルポー

 駿河湾産サクラエビの不漁問題で、早川水系の濁りの一因として注目される日本軽金属の発電用貯水ダム「雨畑ダム」(山梨県早川町)。ダム下流の雨畑川では汚泥やコンクリートの産業廃棄物の不法投棄が発覚する一方、ダムそのものも堆砂率が93・4%(2016年度)に達し、ほぼ埋まった状態。著しい堆砂は昨秋、上流側の集落に浸水被害をもたらした。今月、上空から状況を確認し、現地を訪ね歩いた。

 【動画】堆砂著しいダム上流部、えん堤…
 (関連動画集【サクラエビ 異変】)

 静岡市から北へ約50キロ。日本一人口の少ない町、早川町。山々の間に雨畑ダムが見えてくる。緑に濁ったダムの湖水はわずかで、上流は間もなく干上がる。辺り一面の土砂はフォッサマグナ西縁(糸魚川―静岡構造線)近くのもろい地質構造の山から流れ込む。
 雨畑地区の中でも最も川からの影響を受けやすい場所にある本村集落(約40世帯)を訪ねた。土砂で河床が上昇し道路より川底が高くなった「天井川」。水害に対する危機感を募らせていた住民は昨秋、台風で集落の一部が床上浸水し、恐れていた事態を目の当たりにした。
 「濁流とともに、大きな石がゴロンゴロンと転がる音が聞こえた」と70代女性。大雨のたびに町外の親戚宅に自主避難するといい、「ダムを誰が管理しているのか知らないが、早く安心して暮らせるようにしてほしい」と切実だ。集落と対岸を結ぶつり橋は土砂にのみ込まれる寸前。ダム湖には橋脚上部まで埋まった奥沢橋もあり、かつてそこが谷だったことは想像しにくい。
 雨畑ダムから約5キロ上流。古くは修験者が往来し、竜神様をまつる“聖域”。ここに国土交通省が02年に整備し「東洋一の規模」と称された稲又第三砂防堰堤(えんてい)がある。この堰堤上流も上空から見ると大量の土砂に埋まる。
 駿河湾に注ぐ濁り水の源をたどると、そこには、先代が「地域活性化のため」と受け入れたダムの負の遺産に耐え忍ぶしかない住民の姿があった。

 <メモ>雨畑ダム 富士川水系雨畑川(山梨県早川町)に日本軽金属が所有する“自家発電”用のアーチ式ダム。同社「三十年史」によると、地元の陳情を背景に1965年着工。「困難な地質条件」のもと2年で完成。日本のアルミニウム製錬の一翼を担った同社蒲原製造所(静岡市清水区)に電力供給。一方、同社などによると、活発な土砂流入で100年分の設計堆積量にわずか10年で達し、総貯水量の9割以上が埋まる。

◆2019年7月30日 静岡新聞
https://www.at-s.com/news/article/social/shizuoka/663652.html
ーダム堆砂 水害不安、9割超 静岡新聞社・雨畑地区住民調査ー

 アルミ加工大手日本軽金属(東京都)が管理し、土砂で埋まる雨畑ダム(山梨県早川町)について、静岡新聞社がダム周辺の住民35人を対象に7月2~3日に行った意識調査で「水害が不安」と答えた人が9割を超えた。同県など関東甲信地方は29日に梅雨明けしたが、秋の台風シーズン前に抜本的な対策が必要になっている。
 今回の調査でダムがもたらす水害の可能性を聞いたところ「非常に不安」「不安」と答えた人は計94・3%に上った。理由に「(地区の中には)前の台風で床上浸水した住民がいた」「集落につながる橋が洪水で通れなくなったら地元は孤立する」が挙がった。1人暮らしの高齢女性から「文句は言いたいが1人で反対しても仕方ない。我慢している」との声もあった。
 ダム湖のほとんどを覆う土砂についてどうすべきか聞いたところ、「日軽金に除去してもらう」を選んだ人が「その他・分からない」とした答えと同じ39・5%。理由は「(上流からの土砂流入はあるが)ダムによって結果的にこうなってしまった」「全責任は管理者の日軽金にある」などだった。
 一方、「日軽金だけでは無理。国や山梨県にも責任がある」との声も出た。「その他・分からない」を選んだ人の中にも「誰でもいいので早くやってほしい」との意見があった。雨畑ダムが完成した1967年前後の地元を知る21人に対し、ダム建設を今どう思うか尋ねたところ「後悔している」と答えた人は約5割に達した。
 住民意識調査結果を受け静岡新聞社は日軽金、山梨県、国土交通省富士川砂防事務所に対し雨畑地区の水害対策をどのように行うかなどを聞いた。日軽金は「一企業の対応だけでは難しい状況になりつつある」と回答。同県は「地元から要望がある旨を国に対して伝えている」とし、同事務所からは「関係者間で情報を共有し、それぞれの立場で対策を行っている」との回答が29日までにあった。
 ダム問題に詳しい明治学院大の熊本一規名誉教授(環境政策)は「雨畑ダムの水で発電された電力は日軽金が全て使用してきた。堆砂問題解決の法的義務は日軽金にある。ただ、水害危機は差し迫っており、国や山梨県は長期的な助成の仕組み作りなどが必要だ。深刻な財産権の侵害の恐れに対し、住民も立ち上がるべきだ」と解説した。

◆2019年7月31日 静岡新聞
https://www.at-s.com/news/article/social/shizuoka/664087.html
ーサクラエビ不漁原因、3年かけ探る 静岡県有識者研究会が初会合ー

 駿河湾サクラエビの深刻な不漁を受け、静岡県が設置した有識者による「『森は海の恋人』水の循環研究会」の初会合が30日、静岡県庁で開かれ、今後3年かけて不漁の原因などを探ることを確認した。南アルプスが源流の富士川、大井川と駿河湾の相関について多分野の専門家らが研究し、生物多様性の保全や資源の持続的利用について考える。
 冒頭あいさつした川勝平太知事はサクラエビ不漁を念頭に「漁師から『海が濁っている』との叫びがある」と指摘。富士川の濁りの一因とされ、日本軽金属が管理する堆砂率93・4%の雨畑ダム(山梨県早川町)に触れ「こうなるまで放っておいたのはざんきに堪えない」と批判した。
 研究会顧問の秋道智弥・山梨県立富士山世界遺産センター所長は「各分野の特性を生かし、他分野とコラボレーションしてほしい」と学際的なアプローチを委員らに指示した。
 10月下旬に2回目を開き、各委員が専門分野ごとに研究成果などを発表する。一方、研究会の目的や進め方について話し合った委員からは「提言ではなく、実践的な活動にすべき」との意見や期間の短さを指摘する声が相次いだ。
 議事の取りまとめを担う委員長の鈴木伸洋・水産研究教育機構フェローは「地方自治体がこれほど広い分野を扱う研究会の設置を実現できた例はない。多角的な議論で県民の暮らしに資するようにしたい」と述べた。

 ■「濁り、海底湧水ふさぐ」 顧問の秋道氏
 深刻な不漁にあえぐ駿河湾サクラエビ。日本軽金属蒲原製造所(静岡市清水区)の放水路から駿河湾に流れ出る強い濁りとの関係を漁師らが心配する中、「濁り成分が長年海の底に沈殿し、海底湧水の出口をふさいでいるのでは」との仮説が30日の「『森は海の恋人』水の循環研究会」で新たに指摘された。
 唱えたのは研究会顧問の山梨県立富士山世界遺産センター所長の秋道智弥氏。「森と海をつなぐ水循環」と題した基調講演で、河川から流入する強い濁りにより海底湧水の噴き出し口が目詰まりを起こし、海洋生態系に影響が出た播磨灘の例を挙げ、「駿河湾でも長年泥がたまり湧水が出なくなっている可能性がある」と述べた。
 放水路沖にも海底湧水の噴き出し口があることから、秋道氏は「河川などとともに海底湧水には非常に注目している。調査してもらいたい」と訴えた。