スーパー堤防の差し止めを求める控訴審の判決文と弁護団声明

 さる7月16日、東京都江戸川区で進められているスーパー堤防の差し止めを求める控訴審で、東京高裁の判決がありました。残念ながら、住民側の敗訴でした。

 スーパー堤防事業では、堤防をつくる土地の住民が一旦立ち退きを余儀なくされ、堤防をつくった後、住民が堤防の上に家を建て直すことを前提として進められます。このため、堤防をつくるのに長期間を要しますが、事業は流域の所々でしか行われていないため、実際に洪水が襲ってくれば、スーパー堤防のないところから水があふれるため、千須の役には立たないと言われます。現在の事業の進捗状況からすれば、スーパー堤防事業が完了するには何百年もかかります。
 この裁判で問題となった江戸川区のスーパー堤防では、盛り土でつくった堤防の強度不足が明らかになり、住民は当初予定された堤防上での再建を遅らせなければなりませんでした。都築裁判長は国に対して、地耐力関係の全データの文書提出命令が出すなど、訴訟指揮はよかったのですが、判決は河川行政をめぐる他の裁判と同様、行政への忖度が伺える残念なものでした。

 判決文は以下のURLをクリックすると表示されます。 
 http://suigenren.jp/wp-content/uploads/2019/08/19dc9d804614d0f1829c8349e0a2d172.pdf

 判決要旨はこちらです。
 http://suigenren.jp/wp-content/uploads/2019/08/a2588861ebd2c72ad097ccf3795d86f1.pdf

 弁護団は7月26日にスーパー堤防差止訴訟東京高裁判決に対する弁護団声明を発表し、最高裁判所に上告兼上告受理申立を行いました。
 http://suigenren.jp/wp-content/uploads/2019/08/e7a4442df4de2148669937734e125ea7.pdf

 弁護団事務局長の大江京子弁護士が「裁判支援の会たより」に書かれた文章を引用します。

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 2019年7月27日
 弁護団事務局長 弁護士 大江 京子

1 はじめに
 2019年7月16日、東京高等裁判所民事第19部(裁判長都築政則)は、江戸川区スーパー堤防事業差止め等請求訴訟について、控訴棄却の不当判決を言い渡しました。判決の問題点について詳しくは別紙の弁護団声明をご参照ください。

2 控訴審の成果について
 判決の結論は不当であり、とりわけ行政追随型司法(行政に対して違法と言えない裁判所)の姿勢に対して、強く抗議したいと思います。

 しかし、本件控訴審の審理は大きな成果を生みました。成果の第1は、何といっても国に対して地盤調査結果のデータ等の文書提出命令を出した画期的な決定です(平成30年3月27日)。本決定が、「土地に関する情報は、国民の生命、身体及び財産に関わるものとして公共性を有する」としたことは、個人情報を盾に地盤の情報開示を拒否してきたこれまでの行政の在り方に大きな影響を及ぼすものと期待します。

 成果の第2点目は、控訴人らが要求した証人のすべてを採用して十分な証拠調べが行われた点です。スーパー堤防の必要性については、嶋津暉之証人、国の青野正志証人の尋問が行われ、その結果、治水事業としてのスーパー堤防事業が完全に破綻していること、国もその必要性については、結局のところ高台事業としか言えなかったことなどが誰の目にも明らかになったといえます。また、盛り土の安全性についても、国側の青野・金沢裕勝証人に対する反対尋問により、重要な事実が次々と明らかになりました。これらの立証の結果、控訴人らが、国らを圧倒していたと思います。国や行政を相手にする訴訟は、はじめから証拠の偏在があり、原告としては不公平な戦いを余儀なくされるのが通常です。本件の都築裁判長の訴訟指揮は、他の裁判体とは異なり、高く評価されるものです。

 また、成果といえるかは疑問ですが、判決言い渡しの法廷で、裁判長自ら判決理由を口頭で述べたことも、今の裁判所の実情から見れば異例のことでした。

 都築裁判長は、本件スーパー堤防訴訟の控訴人らの主張に真摯に耳を傾けて、公正な訴訟指揮を行ったと思います。

3 今後に向けて(最高裁)
 それだけに、判決の内容は非常に残念です。国を勝たせる結論ありきの判決という点では、1審判決と同様でした。違うのは木で鼻を括るような1審判決と違い、控訴人らの主張に対して、一応ひとつひとつ答えようとしている点でしょうか。しかし、法的権限論のところはいかにも自信なさそうに書いていたり、スーパー堤防の必要性のところでは、裁判所自体が証拠の矛盾や不合理を分かっていながら理由を書いたとしか思えない箇所が散見されました。

 控訴人ら4名は、本東京高裁判決を容認せず最高裁に上告いたしました。今後、弁護団としては、最高裁に提出する上告理由書等で徹底的に判決の矛盾を追及していくつもりです。

 2011年11月に第1次訴訟を提起して以来これまで本当に多くの方に応援をいただきました。改めて深く感謝を申し上げます。今後とも、ご支援のほどよろしくお願い致します。