駿河湾の海底湧水、泥で目詰まりか 富士川河口周辺、生態系に影響の恐れ

 駿河湾のサクラエビ不漁問題を精力的に取材してきた静岡新聞が、日本軽金属蒲原製造所の放水路から拡散する濁水が海底湧水を目詰まりさせていることを指摘した地質学者の論文を紹介しています。
 豊饒の海を支えてきた自然環境が無残に破壊された原因が明らかになりつつあります。

◆2019年8月14日 静岡新聞
https://www.at-s.com/news/article/topics/shizuoka/669159.html?page=2
ー海底湧水、泥で目詰まりか 富士川河口周辺、生態系に影響の恐れー

 日本軽金属蒲原製造所(静岡市清水区)の放水路から駿河湾に濁水が流れ込み、サクラエビ不漁との関係が指摘されている問題で、地質学者の塩坂邦雄氏(74)=同市葵区=は13日までに、「泥が海底湧水口に目詰まりを起こさせ、生態系に変化が起きている可能性がある」との論文を県地学会に提出した。海底湧水は栄養塩を多く含み、サクラエビの餌となる植物プランクトンの生育に欠かせないとされる。

 提出は7月上旬。論文によると、富士川河口周辺は富士山の伏流水が湧き出る海底湧水口が、水深150メートル付近の溶岩層の亀裂などに豊富に存在している。一方で、富士川断層により1万3800年前から100~150メートル以上も隆起した放水路沖周辺は、水深20メートル付近の砂れき層から水が湧き出ているため、泥などによる目詰まりを起こしやすい環境が元来あるという。

 塩坂氏は、2014年1月に国の産業技術総合研究所が富士川沖で実施した調査結果を示した論文の一部も引用。それによると、海底湧水の存在を示す元素の一つ「ラドン」が富士川断層以東の低層水で高い値を示したのに対し、放水路沖を含む以西では低い値しか示さなかった。このため、「本来水深20メートル付近にあった地下水の湧水口が細粒分で覆い隠され、海底の湧水が供給されていない可能性がある」と結論付けた。

 塩坂氏は「地質学上、日軽金の放水路沖はもともと海底湧水口が浅い場所にあるうえ、砂れき層で目詰まりを起こしやすい」と分析。水力発電用の導水管の取水口があり、駿河湾の濁りの元になっているとみられる雨畑ダム(山梨県早川町)についても「周辺は南アルプスの造山活動により崩壊地も多い地質構造。元々ダムの建設には適さない場所だった」と述べた。

 ■他の専門家も指摘
 日軽金蒲原製造所の放水路から駿河湾に流れ出る濁水。1971年から同放水路で取水した水を浄水し、東駿河湾工業用水としている県企業局によれば、強い濁りは台風15号の被害のあった2011年度以降続く。

 塩坂氏の論文を基に7月上旬に開かれた、県議会6月定例会の危機管理くらし環境委員会で関連質問した小長井由雄県議(静岡市葵区)は「県としてもきちんとした調査に乗り出すべき。場合によっては海をしゅんせつする必要が出てくる」と述べた。

 サクラエビ不漁などを受けて設置された県の「『森は海の恋人』水の循環研究会」の初会合の席上、顧問の秋道智弥氏も瀬戸内海東部の播磨灘の例を引用し、海底湧水が泥で目詰まりを起こし、海洋生態系が崩れている可能性を指摘した。

 県水産業局の中平英典局長は「これまで議論してこなかった論点なので勉強をしていきたいと考えている」と述べた。