国交省近畿地方整備局の大戸川ダム事業をめぐり、三日月大造滋賀県知事は建設促進への転換を表明しましたが、滋賀県の市長会からは「(ダム凍結の)四府県知事合意の重要性をしっかり抑えるべきだ」との指摘があったと報道されています。
三日月知事は最初の知事選では、前知事の嘉田由紀子知事の政策の継承を掲げて当選しましたが、昨年の知事選では、自民党の支援を受けるために大戸川ダム推進に方針転換しました。
滋賀県では7月の参院選で、淀川水系四府県知事による大戸川ダム凍結合意を主導した嘉田由紀子前知事が当選し、これを機に、三日月知事は嘉田氏が代表を務める政治団体「チームしが」の特別顧問を退任することを明らかにしました。政治のめざす方向性が異なる両者の距離は、今後さらに広がっていきそうです。
大戸川ダム事業にゴーサインが出れば、巨額の費用を負担しなければならなくなる大阪府、京都府は、今もダム建設に賛成していません。国交省や三日月知事の思惑通りには進んでいないようです。
◆2019年8月29日 中日新聞
https://www.chunichi.co.jp/article/shiga/20190829/CK2019082902000008.html
ー大戸川ダム、説明努力を 市長会議で知事に意見ー
県内の市長が広域課題を話し合う定例の市長会議が二十八日、大津市内のホテルであり、三日月大造知事が建設推進への転換を表明した大戸川ダム(大津市)について説明した。市長らからは、建設中止を求めた二〇〇八年の四府県知事合意との整合性が問われるとして、国や下流府県への説明努力を果たすよう求める意見が出た。
建設凍結からの方針転換について、三日月知事は「県議会の議論や近年の雨の降り方、国の方向性から、県としても勉強会をした上で、結論に達した」と説明。四府県知事合意との整合性を問われ、三日月知事は「合意から十年たっている。見直しも一つの形として、前向きな議論ができれば」と述べた。これに対して、出席した市長からは「四府県知事合意の重要性をしっかり抑えるべきだ」との指摘があった。
会議後に三日月知事は、報道陣に「長い経過があり、さまざまな利害がある。国や下流府県にどのように伝え、実現していくのか、意見を糧にしていきたい」と述べた。(芳賀美幸)
◆2019年8月29日 京都新聞
https://www.kyoto-np.co.jp/top/article/20190827000021
ー嘉田氏代表「チームしが」の特別顧問を辞任 滋賀・三日月知事ー
滋賀県の三日月大造知事が、自身を支える地域政党「チームしが」の特別顧問を辞任する意向をチームしが幹部に伝えていたことが、このほど分かった。代表を務める前知事の嘉田由紀子氏が7月の参院選で立憲民主党、国民民主党、共産党、社民党の推薦を受けて初当選したことを受け、「国政政党とは中立でありたい」と考えたためだ。
チームしがは2014年7月の知事選で、嘉田氏の後継候補として立った三日月氏の選挙母体となり、知事に押し上げた。ただ18年知事選以降、三日月知事は新生美術館計画を入札不調などを理由に断念したり、嘉田氏が「凍結」に導いた国の大戸川ダム(大津市)を建設推進に方針転換したりするなど、嘉田県政が敷いた路線を相次いで変更しており、「嘉田離れ」に一層拍車がかかりそうだ。
三日月知事は参院選投開票後の7月下旬、嘉田氏と会って「7月末をもって辞したい」と伝えたという。取材に対し、三日月知事は「国会議員が関わる団体に知事として役職を拝命していることは、偏りを指摘されかねない」としている。これに対し、嘉田氏は「チームしがは三日月県政誕生のためにつくられた政策集団。役員会に諮る」と結論を保留している。
一方で、嘉田氏は自身の代表継続についても「役員会の意見を聞いて決めたい」としている。チームしがは国政に関与しない方針で、嘉田氏が17年衆院選に立候補した際にはいったん代表を退いた経緯もある。
チームしが幹部は「知事に役職を続けてほしい役員も当然いるだろう」と話しており、近く役員会を開き対応を検討する。
三日月知事は「チームしがとはこれまで以上にコミュニケーションを図っていく。(慰留の声に)知事としての責務や使命を果たすことで応えたい」と話している。