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「水メジャー」目指す 東京水道サービスの野田数社長

 東京都多摩地域の各市は、未統合の武蔵野市、昭島市、羽村市以外は現在は水道担当部門がなく、東京水道サービス㈱と㈱PUCが水道の業務を行っています。多摩地域では、八ッ場ダムの運用が開始される来年度から、現在は水道水源として利用している地下水を河川水に切り替えることになっています。

 5月に東京水道サービス㈱の社長に就任した野田数氏(小池百合子・都知事の元・特別秘書、元・都民ファーストの会代表)は、「東京水道グループには、120年の歴史に裏打ちされた世界最高レベルの技術力があるので」、日本版「水メジャー」を目指すとの”大志”を明らかにしたと報道されています。
 今年10月に改正水道法が施行され、水道民営化の道が開かれます。野田氏はこの水道民営化の受け皿を狙っているように思います。
 https://www.iza.ne.jp/kiji/politics/news/190913/plt19091310480004-n1.html

 東京水道労働組合が8月28日に発行した「東水労情報」より、関連情報を転載します。

「6月7日、東京水道サービス株式会社は、2019年度の経営方針と目標~未来に向けた進化のためのアクションプラン~を発表し、株式会社PUCとの統合を見据えて、統合後に日本最大級の水道トータルサービス会社として、東京、そして国内外の水道事業に対する貢献への期待に応えるとして、国内の事業者の包括受託や広く世界に向けた事業展開をするとしています。またプランの発表に伴い、日経や都政新報の取材に対して、野田数社長は「将来的に和製の水メジャーになるための土台を作る」との考えを明らかにしています。

 しかし、会社の現状は職場内でのパワハラの横行とプロパーが育ちにくい昇任制度、企業体質もあって、離職率が極めて高いのが実態です。まずは社員や労働組合に対して真摯に向き合い、企業体質を改善させていくことが急務です。その上で、安易な民営化、コンセッション方式導入に肩入れするのではなく、労働組合や市民との対話により持続可能な水道事業を考えていく必要があります。

 「公共サービスの産業化」は、収益の上がる部分については企業が利益をむさぼる一方、不採算部門が切り捨てられたり、その負担が住民に押し付けられ、あるいはサービスに格差が生まれるなどの問題を引き起こしかねません。国鉄分割民営化によるローカル線の切り捨て、JR北海道脱線事故で浮き彫りになった検査データ改ざんなどの安全軽視がそのことを如実に物語っています。
 自然災害が相次ぐ中で、災害時の地方自治体の役割はますます重要になっています。いうまでもなく、非常時の対応は日常業務の延長にあり、災害時に何よりも力になるのは日頃の業務で培った技術とノウハウです。「公共サービスの産業化」は、災害時の迅速・適切な対応を脅かしかねません。」

◆2019年9月13日 産経新聞
https://www.iza.ne.jp/kiji/politics/news/190913/plt19091310480004-n1.html
ー「水メジャー」目指す 東京水道サービスの野田数社長ー

 【令和をつくる】

 日本の水道は危機を迎えている。水道事業を経営するのは小さな事業体が多い。設備の老朽化は著しく、人口減少でますます財源も厳しくなる。官民連携や民営化が叫ばれている中、5月に社長に就任した東京水道サービスの野田数さん(46)は日本版の「水メジャー(巨大企業)」を目指すとの“大志”を明らかにした。(天野健作)

 --どのような水道事業を目指すか

 「(料金の徴収業務などを担う会社)PUCと統合し、水道トータルサービス会社として日本最大規模になる。東京水道グループには、120年の歴史に裏打ちされた世界最高レベルの技術力があるので、国内外の水道事業に貢献していく『日本版水メジャー』を目指して、大きく飛躍したい」

 --ヴェオリアやスエズなど海外の水メジャーは強い。伍(ご)してやっていけるか

 「今年10月の改正水道法の施行を機に、それぞれの水道事業体で広域連携や官民連携の検討がさらに進む。より一層の外資の参入が想定される。東京水道には多摩地区の都営水道一元化による広域化のノウハウがあるので、国内の水道事業体に積極的に協力していきたい」

 --海外展開はどのように行っていくのか

 「これまでも海外展開はしており、途上国への支援事業的な取り組みが多かった。海外事業に豊富な経験を持つ水道関連企業と、情報の共有を行いながら途上国以外も検討していきたい」

 --都の「団体」から脱却するのか

 「それはない。都民への水の安定供給に取り組むのが私たちの役目だ。東京都はいわゆる水道民営化を予定していない。私たちは都からの受託事業を主体としつつ、自主事業として国内外の水道事業体への貢献を行っていく。今年4月からの新制度で『政策連携団体』に位置付けられたので、都に対して政策提言を積極的に行っていく」

 --巡回点検で虚偽報告があったとして2月に指摘を受けた。厳しい目が向けられているのでは

 「研修会を実施し、コンプライアンス(法令順守)推進会議も定期的に開催するようにして意識を定着させていく。意識改革だけでなく、懲戒処分の指針を明確にし、厳格化した」

 --都の職員の天下り機関との批判もあるが、プロパー(生え抜き)社員の底上げは

「プロパー社員の待遇改善を行っている。具体的には、昇進に要する期間を短縮し、初任給を上げ、プロパー社員の給与の底上げを図る。都の職員OBは高度な技術を持っているので、都からの受託事業の幅を広げ、プロパーへの技術継承を推進する」

 --社長就任までの経緯は

 「小池百合子・東京都知事から話を頂いたとき、即断即決、即答した。私自身が知事特別秘書や議員時代に水道に関わることが多く、やりがいと問題意識を強く持っていたからだ。地元には、貯水池や浄水場があり、東京水道の関係者が多く住んでいた。自身の生い立ちにおいて東京水道グループは欠かせない存在だった」

 ◆のだ・かずさ 東京都東村山市出身。平成9年、早稲田大卒業後、衆議院議員時代の小池百合子氏の秘書を経験している。平成15年、東村山市議になり、2期目の21年に辞職、同年の都議選で当選。28年に小池知事の特別秘書に任命され、29年「都民ファーストの会」の代表に就任。31年3月に特別秘書を退任し5月から現職。

〈参考記事〉「世界中で進む水道の民営化!! 今こそ日本の水道を見直すとき」