三重県伊賀市で独立行政法人・水資源機構が進めている川上ダムのコンクリート打設が始まったことが報道されています。
川上ダムは八ッ場ダムと同様、半世紀以上の歴史があるダム事業で、これまで何度も必要性に疑問が投げかけられきたことで知られています。
川上ダムに利水で参画しているのは、現在は伊賀市水道だけです。かつては奈良県水道と西宮市水道も参画していましたが、必要性がなくなったとして2011年に撤退しました。
伊賀市も川上ダムが不要であることは同様です。伊賀市民による「水と緑の会」などが不要なダムによる費用負担や環境破壊を訴え、反対運動を行ってきました。
右画像=(独)水資源機構記者発表より、川上ダム堤体コンクリート初打設式(令和元年9月20日)
しかし伊賀市は、豊水暫定水利権という恣意的な水利権許可制度に縛られ、参画を余儀なくされてきました。伊賀市ゆめが丘浄水場の木津川水源は、川上ダムなしで今まで取水に支障をきたしたことがなく、実質的に安定水利権と変わらないものなのですが、水利権許可権者である国交省近畿地方整備局は、川上ダムの建設を進めるため、川上ダムを前提とした豊水暫定水利権としてしか許可せず、伊賀市に川上ダム事業への参画を強要してきました。
(独)水資源機構のダム建設は、水資源機構法によって「水資源開発」を目的とすることが明記されています。川上ダムは「洪水調節」や「伊賀市の水道用水の開発」などを目的にした多目的ダムですが、「水道用水の開発」を目的とする伊賀市の参画がなくなると、(独)水資源機構は川上ダムの事業主体であり続けることができなくなります。(独)水資源機構にとっては、伊賀市の参画が川上ダム事業を推進する生命線になっているわけです。
貧乏くじを引かされた伊賀市水道は、本来は不要な川上ダムへの参画で、法外に高い費用負担を強いられつつあります。
〈参考ページ〉(独)水資源機構 川上ダム 公式サイト
◆2019年9月21日 朝日新聞三重版
https://digital.asahi.com/articles/ASM9N555JM9NONFB00P.html?iref=pc_ss_date
ー川上ダム 堤体の建設スタートー
独立行政法人水資源機構が建設する川上ダム(三重県伊賀市)で20日、堤体の建設をスタートする「コンクリート初打設式」が開かれた。1967年に建設計画が持ち上がってから52年。曲折を経た事業は、2022年度の完成をめざして、いよいよ水をせき止めるダム本体の建設工事に入った。
川上ダムは、木津川支流の川上川、前深瀬川の合流地点に建設する重力式コンクリートダム。流域の治水と伊賀市の利水が目的で、完成時の堤高84メートルは宮川ダム(大台町)に次ぎ県内2番目の高さになる。
総貯水量は3100万立方メートル。総事業費1180億円のうち、今年度分を含めると、792億円が投入されている。
初打設式には、水資源機構の職員と工事を請け負う「大林組・佐藤工業・日本国土開発JV」の作業員ら計約130人が参加。合図とともに、コンクリートを詰めた大型容器が高さ約60メートルのタワークレーンでつり下げられ、川底と山肌を掘削して露出させた基礎の中心部まで運ばれると、容器の底を開いてコンクリートを流し込んでいった。
堤体工事では、約100万トンの骨材で作ったコンクリート約45万立方メートルを積み上げていくという。
川上ダム建設所の渕上吾郎所長は「工事が一つの節目を迎え、これからは日ごとに変化し、目の前でダムの形がつくられていく」とあいさつ。JVの代表者は「厳しい工程だが、入念な施工計画のもとで安全と品質を確保し、環境にも配慮していく」と述べた。(中田和宏)
◆2019年9月21日 毎日新聞三重版
https://mainichi.jp/articles/20190921/ddl/k24/010/274000c
ー川上ダム、堤体「打設」始まる 計画から50年超、関係者ら感慨 伊賀ー
伊賀市川上などで水資源機構が建設を進める川上ダムで20日、水をせき止める本体(堤体(ていたい))を築く作業が始まった。コンクリートを流し込む最初の作業は「初打設(だせつ)」と呼ばれ、1967年に予備調査に着手して以降、半世紀を超えて完成に向けた節目を迎えた。【大西康裕】
川上ダムは重力式コンクリートダム。堤体は底に近づくほど分厚くなり、底の大きさは長さ約90メートル、厚さ約60メートル。高さは84メートルで堤頂部は長さ334メートル、厚さ7メートル。この堤体を45万立方メートルのコンクリートで築き上げ、県内のダムで2番目の高さになる。(以下略)
◆2019年9月20日 伊賀タウン情報
https://www.iga-younet.co.jp/2019/09/20/18714/
ー川上ダム建設 堤体コンクリートの初打設 伊賀市でー
川上ダム(伊賀市川上)の建設現場で9月20日、本体の堤体部分にコンクリートを流し込む初打設があり、独立行政法人「水資源機構」の職員や施工業者ら約130人が節目を祝った。【堤体コンクリートの初打設があった川上ダムの建設現場=伊賀市川上で】
洪水調整や伊賀市の水道用水などを目的に木津川支流の前深瀬川に造られる川上ダムは、総貯水容量が約3100万立方メートルで、総事業費1180億円。堤体は長さ334メートル、高さは宮川ダム(大台町)に次ぐ県内2番目の84メートルで、52年前の1967年に予備調査が始まった。
初打設を前に、川上ダム建設所の渕上吾郎所長らがあいさつし、その後にタワークレーンを使って「祝」の文字などを掲げたバケットから4・5立方メートルのコンクリートが流し込まれた。ダム堤体にはコンクリート約45万立方メートルが使われ、打設は2021年3月に完了、ダム完成はその2年後の23年3月末を予定している。