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サクラエビ、秋漁解禁決定するも、駿河湾奥部で産卵改善見られず

 静岡県の漁協では、サクラエビの秋漁を解禁することを正式に発表したと報道されています。
 しかし、20日に開かれた静岡県の情報連絡会では、主な産卵場とされる駿河湾の奥部では改善は見られなかったとの調査結果が示され、主な産卵場とされる富士川沖と蒲原沖で漁師らが実施した産卵調査によると、産卵数は昨年に比べ半分以下に減少しているとのことです。
 駿河湾におけるサクラエビ不漁と富士川水系の河川環境の影響を継続して報道してきた静岡新聞は、情報連絡会で県が富士川河口域の濁りとサクラエビ不漁との関係に触れなかったことを踏まえ、「資源が回復したと手放しで喜べる雰囲気はない」との船主の言葉を伝えています。

◆2019年9月23日 静岡新聞
https://www.at-s.com/news/article/economy/shizuoka/684826.html
ーサクラエビ秋漁解禁10月23日 組合決定、一部に慎重論もー

  静岡県桜えび漁業組合(実石正則組合長)は22日までに、秋漁について協議し、10月23日をめどに解禁することで正式決定した。春漁と同様、自主規制を敷くことも確認し、同日までに規制策をまとめるとした。
 由比・蒲原(静岡市清水区)、大井川(焼津市)各地区の漁師でつくる船主会で決めた。ただ、一部の漁師には「本当に漁ができるのか」と慎重論もある。
 ある船主は20日の情報連絡会について、「県の説明は根拠が曖昧だし、報道への説明にはっきりと答えず疑問ばかりが残った。『資源が回復した』と手放しで喜べる雰囲気はない」と語った。
 組合は今後、解禁までに行う駿河湾全体での資源調査の結果を踏まえ、県水産技術研究所(焼津市)と規制内容を詰める。秋漁の漁期は12月23日までだが、調査結果や操業の状況次第で前倒し終了も検討する。
 同研究所は情報連絡会で、「湾全体の資源状況は回復傾向」と産卵調査の結果を報告。これを受け、実石組合長は秋漁実施の方針を示していた。

◆2019年9月21日 静岡新聞
https://www.at-s.com/news/article/economy/shizuoka/684196.html?news=684200
ーサクラエビ、富士川沖など産卵改善見られず 秋漁は近く判断ー

 記録的不漁となっている駿河湾サクラエビ漁について、漁業者や加工業者、学識者らが話し合う情報連絡会が20日、由比港漁協で開かれ、主な産卵場とされている湾奥部の富士川沖や蒲原沖の産卵状態は、焼津沖などの湾南部と比べて改善は見られなかったとの調査結果が示された。ただ、「駿河湾全体として資源状況は回復の兆し」(県水産技術研究所の花井孝之研究統括官)にあるとし、県桜えび漁業組合の実石正則組合長は自主規制を敷いた上で秋漁を行う方針を示した。近く開く船主会で最終決定する。
 湾全体の産卵状況は2018年7~9月の調査では湾全体で19兆粒だったのに対し、今年は7月の調査だけで326兆粒が確認されたという。
 調査は同研究所と由比港漁協が湾内で実施。富士川沖などの湾奥部は、今年の春漁は禁漁区にして保護していた。全面休漁した昨年の秋漁から1年以上、漁はしていない漁場。しかし、由比港漁協が行った産卵調査によると、産卵数(5~9月)は富士川沖が前年比で半減し、蒲原沖は約4分の1といずれも激減した。
 花井統括官は「産卵場所が焼津沖などの比較的南側に偏っているが、総卵数としては増加している」とした。産卵調査は今後も継続し、漁況改善の進ちょくを見極める。

◆2019年9月21日 静岡新聞
https://www.at-s.com/news/article/economy/shizuoka/684200.html
ー富士川の濁りとの関連触れず サクラエビ資源回復で静岡県ー

 駿河湾奥の富士川沖でサクラエビの資源回復が進んでいないことが明らかになった20日の情報連絡会。一方で静岡県水産技術研究所の花井孝之研究統括官は、富士川沖以外の漁場では「回復傾向」にあることを強調。これまでの漁規制の取り組みを念頭に「(漁師ら)皆さんの努力のたまもの」と高く評価した。
 花井統括官によると、サクラエビは本来、湾奥で産卵する。「何らかの理由で産卵が遅れ、親エビが湾奥まで北上できていない」と南に偏っている理由を説明。不漁との関係が指摘される富士川河口域の濁りとの関連性は「解析していない」と明言を避けた。
 主な産卵場とされる富士川沖と蒲原沖で漁師らが実施した産卵調査によると、産卵数は18年に比べ半分以下に減少している。ことしの春漁で禁漁にしたにもかかわらず減ったことに関し、花井統括官は「エビはいろいろな場所で産卵している。特定の地点の数字を見て多い少ないを論じてはいけない。特定部分だけを見たら判断を見誤る」などと述べた。
 サクラエビ研究で知られる大森信・東京海洋大名誉教授は一般論としつつ「湾外に流される心配の少ない湾奥で産卵することが重要。全体の多い少ないで(漁の操業を)決めるのはおかしい」と話した。

◆2019年9月24日 日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO50150060U9A920C1L61000/
ーサクラエビ秋漁解禁へ、10月23日メド 卵数は回復傾向ー

 静岡県特産サクラエビの漁業者でつくる静岡県桜えび漁業組合(静岡市)は、10月23日をメドに秋漁を解禁する。記録的不漁が続いており慎重論もあったが、夏に実施された産卵調査で資源が回復傾向にあることが分かったため「捕りながら増やす」方針を維持する。2018年秋漁以降、続けてきた自主規制の具体的な内容は今後詰める。

 静岡市内でこのほど開いた船主会で決定した。解禁数日前に駿河湾の広い範囲で資源調査を行う予定で、結果次第ではスタートがずれ込む可能性もある。漁期は12月23日までだが、資源状況によって前倒しで打ち切る。

 漁業者や加工業者、公的機関でつくる「情報連絡会」の20日の会合では、県水産技術研究所が産卵調査の結果を報告した。これによると湾内の推定総卵数は7月のみで326兆粒に上った。調査開始(1994年)以来の最低だった18年7~9月の19兆粒から急回復した。18年秋漁、19年春漁と自主規制で資源を温存した成果が出ている。

 一方で、卵が主産卵場の湾奥だけでなく湾全体に分布していることは懸念材料だ。湾南部の卵は湾の外に流出してしまうためだ。産卵の時期が遅れたことが理由とみられ、過去の不漁でも同様の分布が観測されている。「卵が多いからと手放しでは喜べない」(県担当者)

 サクラエビは2018年以降、記録的な不漁に見舞われている。19年春漁では水揚げ量が計85.3トンと過去最低に落ち込んだ。不漁の原因は分かっていないが、捕りすぎや海の濁りなどが指摘されている。実石正則組合長は「産卵調査では一筋の光が見えた。ただ資源回復は道半ばだ。慎重にあたらなければいけない」と気を引き締める。