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長崎県の石木ダム、原告住民側、二審敗訴

 11月29日、石木ダム事業の事業認定の取り消しを求めた訴訟の控訴審判決で、福岡高裁(西井和徒裁判長)が住民らの控訴を棄却しました。住民側は上告する方針です。
 行政の誤りを正すのが司法の役目であるはずなのですが、司法は本当に無力です。特に福岡高裁の西井和徒裁判長は、2018年7月30日の諫早干拓訴訟で潮受け堤防排水門の開門命令を無効にする判決を出した裁判官ですので、最初から期待することができませんでした。
 しかし裁判後の記者会見でも明らかにされたように、ダム予定地の住民13世帯は立ち退くつもりはありません。司法が自らの判断を放棄することで、住民にとっては蛇の生殺しのような状況が続きます。利権と保身のために住民の暮らしも人も破壊することが法的に認められるーわが国のダム行政の惨さは、まだまだ一般にはよく知られていません。

 石木ダムに反対する「石木川まもり隊」のブログに今回の判決と裁判の報告集会についての詳しいレポートが掲載されています。
 http://ishikigawa.jp/blog/cat01/5595/
 「二審の判決は一審のコピペ!?」
 

◆2019年11月29日 NHK長崎放送局
https://www3.nhk.or.jp/lnews/nagasaki/20191129/5030006145.html
ー石木ダム2審も住民側訴え退けるー

 長崎県川棚町で建設が進められている石木ダムについて、建設に反対する元地権者の住民などが国に事業認定の取り消しを求めた裁判の2審で、29日、福岡高等裁判所は「国の事業認定の判断に裁量を逸脱し、乱用した違法はない」として、1審判決に続いて住民側の訴えを退ける判決を言い渡しました。

 石木ダムは、長崎県と佐世保市が水道水の確保や洪水対策を目的に285億円をかけて長崎県川棚町に建設を進めているダムで、4年前、反対する住民など100人余りが、「ふるさとが奪われる」などと国に事業認定の取り消しを求める訴えを起こしました。
 1審の長崎地方裁判所は「石木ダム事業は水道用水の確保や洪水調整のため必要がある」として訴えを退ける判決を言い渡し、住民側が控訴していました。

 2審では、これまで住民側が「石木ダム事業は、建設に必要な費用に対して、実際に生じる社会的利益が非常に乏しい」などと主張する一方、国側は請求を棄却するよう求めていました。
 29日の判決で、福岡高等裁判所の西井和徒裁判長は「石木ダム事業は公益性の必要性があるうえ、経済性と社会性の両面で最も優れているとした長崎県と佐世保市の判断は不合理とはいえないことから国の事業認定の判断に裁量を逸脱し、乱用した違法はない」などとして、1審に続いて住民側の訴えを退ける判決を言い渡しました。

 判決のあとに開かれた会見で、住民側の馬奈木昭雄弁護士は「きわめて不当な判決だ。おかしいことはおかしいと世間に声を上げていく」と話していました。
 また、住民の岩下和雄さんは「判決は受け入れられず、ふるさとを離れるつもりは少しもない。これからも住民たちと力を合わせていく」として、引き続きダム建設に反対していく考えを強調していました。
 住民側の弁護士によりますと、原告側は判決を不服として最高裁判所に上告する方針だということです。

 判決を受けて中村知事は、報道陣に対して「第1審に続き、石木ダム事業についての公益上の必要性が認められたものと受け止めている」と話しました。
 そしてダム事業の進捗を引き続き、図っていかなければいけないとしたうえで「皆様の理解が得られるように努力していく」と話していました。
 また、事業をめぐっては、強制的な家屋の撤去などを伴う行政代執行の手続きに入れるようになっていることについて「ほかに方法がないという段階で、慎重に判断をしなければいけないものなので、今後の事業の推移や進捗状況などを総合的に判断していく必要がある」と述べました。

【石木ダムとは】
 石木ダムは、川棚町の洪水対策や佐世保市の水道水確保を目的に40年余り前の昭和50年度に旧建設省が事業を採択し、建設が決まりました。
 ダム本体の高さは55.4メートル、総貯水量は548万立方メートルで、完成すれば県が管理するダムの中で、3番目に大きいダムになります。総事業費は285億円。長崎県と佐世保市が国土交通省や厚生労働省の補助を受けて川棚町に建設を進めています。

 一方、県と佐世保市は建設に反対する住民との土地の買収交渉が難航したことから、土地を強制的に収用しようと、県の収用委員会に「裁決申請」を行いました。ことし5月、県の収用委員会は、ダム建設に必要なすべての土地を強制的に収用できるようにする裁決を下し、今月18日、すべての土地の明け渡し期限を迎えました。これにより県は、すでに強制的な家屋の撤去などを伴う行政代執行の手続きに入れるようになっています。

 県によりますと、建設予定地には、いまも13世帯・およそ60人が住んでいて、こうした大規模の家屋の撤去などを伴う行政代執行は、全国的にも例がないと見られるということです。行政代執行について、中村知事はこれまでに「最後の手段だと思っている。事業の進み具合などの事情も考えて慎重に判断すべき課題だ」と述べています。

 一方、建設に反対する住民らによる座り込みの影響などで、ダムに水没する県道の付け替え工事などに遅れが出ています。このため、県はダムの完成時期を3年延期し、令和7年度に見直す方針を有識者らによる「県公共事業評価監視委員会」で説明。治水の面から事業の再評価を行った結果、「継続すべき」とした対応方針案を示しました。これに対し、委員会はこの方針案を認める意見書を中村知事に手渡したことから、県は、27日、ダムの完成時期を3年延期し令和7年度に見直す方針を正式に決定しました。
 県によりますと、令和7年度にダムを完成させるためには、遅くとも来年中には本体工事を始める必要があるということで、今回の判決が県の判断にどのように影響を与えるか注目が集まります。

◆2019年11月29日 共同通信
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO52766300Z21C19A1ACYZ00/
ー長崎の石木ダム、二審も住民敗訴 国認定取り消し請求ー

 長崎県川棚町に県と佐世保市が計画する石木ダム建設を巡り、反対する住民らが国の事業認定取り消しを求めた訴訟の控訴審判決で、福岡高裁は29日、「ダム建設による公共の利益は損失より大きい」として、請求を棄却した一審長崎地裁判決を支持し、住民らの控訴を棄却した。住民らは上告する方針。

 西井和徒裁判長は一審に続いて利水・治水面でのダムの必要性を認めた上で、移転対象の住民に代わりの宅地を用意するなどの生活再建措置があり、土地収用法の要件も満たすと判断。「国の判断が合理性を欠くとは言えず、裁量を逸脱していない」と結論づけた。

 水の需要予測が実態と懸け離れているとの原告側主張は「非常時の需要を予測する必要があり、不合理とは言えない」と退けた。

 馬奈木昭雄弁護団長は判決後、福岡市内で記者会見し「最高裁はこのような判断を許してはならない」と訴えた。

 長崎県の中村法道知事は取材に「事業の公益上の必要性が認められた。(反対住民の)理解が得られるよう粘り強く取り組む」と話した。

 石木ダムは、需要増加が予測される佐世保市の水不足解消や川棚町の治水対策を目標に計画され、1975年に建設が決まった。住民の一部が立ち退きに応じず、強制収用に向けた手続きの一環として国が2013年に事業認定した。

 今月、水没予定地に住む13世帯の明け渡し期限が過ぎ、県は行政代執行で土地や建物の強制収用ができるようになった。

◆2019年11月29日 毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20191129/k00/00m/040/345000c
ー石木ダム訴訟 1審を支持 取り消し求めた住民らの訴え棄却 福岡高裁ー

 長崎県と同県佐世保市が計画する石木ダム事業(同県川棚町)を巡り、反対する住民ら106人が国に事業認定の取り消しを求めた訴訟の控訴審判決で、福岡高裁(西井和徒裁判長)は29日、「国の判断に裁量の逸脱など違法はない」として1審・長崎地裁判決を支持し、住民らの控訴を棄却した。住民側は上告する方針。

 石木ダムは佐世保市の水不足解消と治水を目的に建設が計画され1975年に国が事業採択。2013年に国が土地収用法に基づき事業認定した。水没予定地の住民らが提訴し、「(人口減の中で)市の水需要予測は過大で、治水面も河川改修などで対応できる」などと主張していた。

 判決は、生活用水や工業用水などで需要が増え、24年度に1日4万トンが不足するとした市の予測(12年度算出)について、市民1人の使用水量を全国平均(09年度)より低く設定しているなどと指摘し「明らかに不合理な点があるとはいえない」とした。県の洪水想定についても国の基準などに従っているとし、石木ダムを必要とした判断を妥当とした。

 また、移転が必要となる住宅の代替宅地が造成され、地域コミュニティーを一定程度再現することも不可能ではないとし「ダム建設の利益より、失われる利益が大きいとはいえない」と判断した。【宗岡敬介】

原告怒りあらわに「ダムは必要ない」
 1審に続く敗訴に、原告らは怒りをあらわにした。

 原告団は判決後に記者会見。水没予定地の住民で原告代表の岩下和雄さん(72)は「佐世保市の水需要予測は(算出のたびに)大幅に変わっていて信用できない。ダムは必要ないと確信している」と訴えた。水没予定地は今月18日の明け渡し期限が過ぎ、県による強制排除も可能な状況となっているが、「私たちはこれからも闘い抜き、ふるさとを離れるつもりはない。ただちに上告して、判断を正してもらいたい」と力を込めた。

 馬奈木昭雄・弁護団長は「高裁の判断は事実誤認で合理性を欠いている。1審判決を上書きしたようで、自分たちの判断はない。極めて不当な判決だ」と批判した。

 原告の住民や支援者ら約60人は判決後の集会で、今後も工事現場などでの抗議活動を続けることを誓い合った。【浅野孝仁】

◆2019年11月29日 テレビ長崎
http://www.ktn.co.jp/news/20191129283880/
ー石木ダム事業認定取り消し訴訟 高裁も棄却ー

 長崎県と佐世保市が東彼川棚町に建設を計画している石木ダム事業。建設に反対する住民が国に事業認定の取り消しを求めた裁判で、福岡高裁は29日、ダム事業の必要性を認め、原告の請求を棄却しました。
 福岡高裁の前で開かれた集会には、建設に反対する住民や支援者など約50人が集まり「ダムは必要ない」と訴えました。

 石木ダムをめぐっては、国が2013年、土地収用法に基づき公益性があることを確認し、土地を強制的に取得することを認める「事業認定」を告示しました。その後、反対住民は事業認定の取り消しを求め提訴しましたが、去年7月、長崎地裁は長崎県の治水計画や佐世保市の水需要予測などは合理性を欠くとはいえないとして、請求を棄却。住民側は控訴し、利水と治水の両面からダムの必要性などについて争っていました。

 そして、29日、福岡高裁はダム事業は「土地を収用、使用する公益上の必要性があり、行政の判断が合理性を欠くものとはいえない」と、一審を支持する判決を言い渡し、住民側の請求を棄却しました。

原告弁護団 馬奈木 昭雄 弁護士
「極めて不当な判決といわざるを得ません。一審判決のそのまま上書き、自分たちの新しい判断何もない」

ダム建設予定地の住民 岩下 和雄 さん
「私たちは今後とも長く力強く闘い抜く、ふるさとを離れるつもりはひとつもない、いかに行政が力があろうと私たちは弱いがみなさんとともに闘っていく」

 原告はこの決定を不服として、来週中にも上告する予定です。
 石木ダムの予定地には今も建設に反対する13世帯が暮らしていますが、11月18日、家屋を含むすべての土地の明け渡し期限を迎え、長崎県は強制的に立ち退かせる行政代執行の判断も可能となっています。

 一方で、石木ダムの完成時期をさらに3年延期し、2025年度とすることを正式に決めています。

◆2019年11月30日 長崎新聞
https://this.kiji.is/573339196492432481
ー石木ダム 二審も事業取り消し認めず 原告住民ら憤りと落胆ー

 石木ダムの事業認定を巡る訴訟で、福岡高裁は29日、原告の請求を退けた一審判決を支持した。水没予定地で暮らす13世帯は、土地収用法に基づく手続きで先祖代々の土地の所有権を失い、明け渡し期限も過ぎている。公権力による行政代執行が現実味を帯びる中での高裁の判断に、原告や支援者らの間には憤りと落胆が広がった。一方、事業推進の行政や市民は「必要性が認められた」と安堵(あんど)した。
 控訴棄却の短い主文を読み上げ、裁判官たちは足早に法廷を後にした。わずか数秒で言い渡された判決。「これで終わり?」「こんなのおかしい」。マイクロバスに乗り合わせ、朝から2時間近くかけて裁判所にやってきた住民や支援者らは口々に不満をもらした。
 住民の岩下すみ子さん(71)は「これが裁判って言えるのか」と肩を落とし、傍聴席から立ち上がった。厳しい判決は予想していた。昨年12月に口頭弁論が始まった控訴審。今度こそは、という願いとは裏腹に、原告側が求めた証人尋問などはことごとく却下され、わずか3回の弁論で結審。代理人弁護士からも「勝てる見込みは少ない」と聞いていた。
 ダム建設に伴う付け替え道路工事現場で毎日抗議の座り込みをしていたが、股関節を痛め、手術のために約1カ月入院した。退院後も本調子とはいかないが、いちるの望みを託して裁判所に足を運んだ。結果は再びの敗訴。それでも、「裁判官に理解してもらえなくても、古里に住み続ける私たちの気持ちは変わらない」と固い決意を口にする。
 「まるで私たちから逃げているようだった」。住民の川原千枝子さん(71)は裁判官たちの態度を当てこすった。生活の基盤である土地の権利を失った今、「もう少し丁寧に向き合ってくれてもいいのでは」。判決に納得はできない。
 石丸勇さん(70)は控訴審第1回口頭弁論で意見陳述に立った。事業で地域コミュニティーが破壊され、住民が翻弄(ほんろう)された歴史を語り、「代替地に移れば、地域コミュニティーは再現できる」とした長崎地裁の判決を「事実から目を背けている」と批判した。だが高裁判決も全く同じだった。「自分の頭で考えていない。多くの住民が暮らしている土地を強制収用した、過去(のダム事業)にも例がない事態。住民の心の痛みや問題の大きさを見ているのか」と吐き捨てた。
 「上告に向け、みんなで引き続き頑張っていこう」。判決後の反対派の集会。弁護団の一人が声を上げると、原告や支援者らから大きな拍手が起きた。

https://this.kiji.is/573339904459801697?c=39546741839462401
ー石木ダム 二審 「改めて必要性認められた」 推進派、安堵ー

  「改めてダムの必要性が認められた」-。石木ダム建設事業を巡る控訴審判決を受け、事業を推進する県や佐世保市、市民団体からは安堵の声が上がった。
 同事業を巡っては、県が今月、完成目標を2022年度から25年度に延期する方針を正式決定。延期で、県側は反対住民側との話し合いを進めたい考えだ。
 判決を受け、中村法道知事は県庁で報道陣に、「一審に続き、事業の公益上の必要性が認められたと受け止めている」と述べ、反対住民への説得を粘り強く続ける考えを示した。家屋撤去などの行政代執行については、「どうしても他に方法がないという段階で最終的に慎重に判断していかなければならないと思っている」とした。朝長則男市長は「司法判断として、改めて石木ダムの必要性が認められた。事業の進展に向けて、県とともに尽力する」とのコメントを出した。
 「石木ダム建設促進佐世保市民の会」の寺山燎二会長は「佐世保市民は渇水に苦しんできた。事業が認められ、ほっとした」と安堵。同市議会石木ダム建設促進特別委員会の長野孝道委員長は「県や市と連携し、(反対派の)事業への理解が深まるよう取り組んでいきたい」と話した。

https://this.kiji.is/573327339876942945
ー石木ダム 二審も住民側敗訴 福岡高裁「公共の利益優越」ー

 長崎県と佐世保市が東彼川棚町に計画する石木ダム建設事業を巡り、反対住民ら106人が国に事業認定の取り消しを求めた訴訟の控訴審で、福岡高裁(西井和徒裁判長)は29日、ダムの公益性を認めた一審長崎地裁判決を支持し、原告側の請求を棄却した。原告側は上告する方針。
 西井裁判長は判決で「ダム建設事業によって得られる公共の利益は、失われる利益に優越する」と認め、国土交通省九州地方整備局(九地整)の判断に「裁量の逸脱や濫用はない」と原判決をほぼ全面的に踏襲した。利水に関する専門家の意見書は「判断を左右しない」と退けた。
 一審は、同市の利水と川棚川の治水を主目的とする同ダムの必要性などが争点となった。原告側は利水、治水、いずれの面でも建設の必要性はなく、水没予定地の反対住民13世帯の土地を強制的に収用する公共性を欠くと主張。これに対し、長崎地裁は昨年7月、県の治水計画や同市の水需要予測などは合理性を欠くとは言えず、事業認定した九地整の判断は適法と結論付けた。
 控訴審で原告側は引き続き、ダムは不要と訴えた。利水面では、同市の水需要予測や保有水源の評価の問題点を指摘した専門家2人の意見書を新たに提出。国側は原判決が適正として棄却を求めていた。
 判決後の集会で、住民の岩下和雄さん(72)は「約50年間闘ってきた私たちに対し、判決(の読み上げ)はたった3秒間だった」と憤り、「古里を離れるつもりはない。上告し、事業の不当性をただしていく」と言葉に力を込めた。
 石木ダムを巡っては、住民らが県と同市に工事の差し止めを求めた訴訟も長崎地裁佐世保支部で係争中。3月24日に判決が言い渡される予定。

◎馬奈木昭雄・原告弁護団長の話
 国民の声に耳を傾ける裁判所の役割を放棄した不当判決。最高裁では必ず勝てると確信し、土地収用法の運用の仕方の違憲性などを訴える。

◎国土交通省九州地方整備局担当者の話
 国の主張が認められたものと理解している。住民側が上告し、最高裁で争うことになった場合も、関係機関と協議して適切に対応していく。

◆2019年11月30日 西日本新聞
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/564042/
ー石木ダム、二審も住民敗訴 福岡高裁「事業利益、損失上回る」ー

 長崎県と同県佐世保市が計画している石木ダム(同県川棚町)を巡り、反対する住民ら106人が国に事業認定取り消しを求めた訴訟の控訴審判決が29日、福岡高裁であり、西井和徒裁判長は「事業認定の判断に裁量を逸脱した違法はない」として、一審長崎地裁判決を支持し、原告側の控訴を棄却した。原告側は上告する方針。

 石木ダムは1975年に事業採択されたが、移転対象のうち13世帯は土地の買収に応じず、建設予定地に残った。国は2013年に事業認定。今月18日には全ての事業予定地が明け渡し期限を迎え、行政による強制撤去が可能な状態となっている。

 判決で西井裁判長は、佐世保市が生活用水や工業用水の需要が増加すると見込んだ試算について「不合理な点があるとはいえない」との一審判決を踏襲。また、移転対象の住民には代替宅地が用意されていることを踏まえ「事業による公共の利益は生活用水の確保や洪水調節という地元住民の生命に関わるもので、原告らの失われる利益を優越している」と述べた。

 石木ダムを巡っては、水没予定地の住民ら約600人が長崎県と佐世保市に工事差し止めを求める訴訟を起こしており、来年3月に判決が言い渡される。 (鶴善行)

■住民落胆「撤回まで闘う」

 石木ダム建設予定地の住民らが国の事業認定取り消しを求めた訴訟で、控訴棄却の判断を示した福岡高裁前に集まった住民たちは、落胆しつつも「建設撤回まで闘おう」と意気込んだ。

 ダム予定地を巡っては今月19日から、長崎県による行政代執行の手続きが可能になったばかり。高裁前では判決後も原告や支援者ら約70人が「石木ダムNO!」のプラカードを掲げた。その後の集会では原告の一人、ダム予定地の川原(こうばる)地区で暮らす岩下和雄さん(72)が「50年闘ってきて判決は3秒。判決がいかに不当かを最高裁に正してもらいたい」と訴えた。

 弁護団の馬奈木昭雄弁護士は上告する方針を示しており、原告の石丸キム子さん(69)は「裁判がどうあっても川原に住み続ける」。岩本菊枝さん(70)は「また月曜日に弁当を持って頑張りましょう」と述べ、週明けも予定地で座り込みを続ける意向だ。

 一方、事業主体の長崎県の中村法道知事は判決について「事業の公益上の必要性が認められた。地元住民の理解が得られるように粘り強く取り組みたい」と述べるにとどめた。 (平山成美、岡部由佳里)