ダム事業の是非を判断するための「再評価」の仕組みは、本来は、時代状況の変化や事業が直面する問題を踏まえ、事業の中止を含めた判断を行い、必要な事業を優先的に行うことが目的の筈ですが、ダム行政では「再評価」が実質的に事業者みずからによって行われるため、客観的な判断が行われることが殆どありません。客観的な再評価が行われない元凶は、「再評価」を行う委員会の人選にあります。
石木ダム事業では、「利水目的」で事業に参画している佐世保市の水需要が低迷しており、客観的な再評価を行えばダム事業の見直しが必要になります。以下の記事を読むと、佐世保市当局は「反対派」を再評価委員会に加える考えはないと市議会で答弁したとのことです。過大な水需要予測をもとにダム事業を推進してきた、従来の姿勢に変化がないことを示したと言えます。
報道機関には、市議会における質疑の内容を伝えるだけでなく、再評価委員会が本来の「再評価」を行うために何が必要か、読者に問題の本質を伝える記事を望みたいと思います。
◆2019年12月12日 長崎新聞
https://this.kiji.is/577667162265470049
ー反対派含む構成に難色 利水再評価 第三者機関で佐世保市ー
長崎県と佐世保市が東彼川棚町に計画する石木ダム建設事業を巡り、佐世保市水道局の谷本薫治局長は11日、利水面の事業再評価で意見を聞く第三者機関の構成について、「(賛成、反対の)特定の考えを持つ個人を選任することは考えていない」と述べ、事業に反対する委員を含めることに難色を示した。
佐世保市議会一般質問で小田徳顕議員(共産)に答えた。
再評価は反対派が疑問視する水需要予測や代替案の可能性、費用対効果などを分析。識者らでつくる第三者から意見を聞き、再評価報告書を国に提出して完了する。前回2012年度の再評価では市水道局に常設している諮問機関「市上下水道事業経営検討委員会」に意見を聞き、事業の継続を決めた。
一方、反対派は「常設の機関はダム建設を推進する委員で構成されており不公正」と批判。今回の再評価では反対派の委員を含めた新たな諮問機関を設置するよう求めている。
小田議員は「(諮問機関に)反対意見を持つ有識者を交え、反対意見が示された資料を提出するべきだ」と指摘。谷本局長は「諮問機関の構成などは検討、調整中。これまでと同様に中立性、公共性を担保した形で進める」と答弁した。