今朝の上毛新聞の社会面の記事を転載します。
以下の記事にもあるように「生活再建関連事業は100事業」に上り、水没予定地域の経済は八ッ場ダムの生活関連事業が中心となっており、町の財政も大きな影響を受けています。事業終了後は、事業によってつくられた膨大な施設の維持管理が地域の大きな負担となることが心配されています。
◆2019年12月14日 上毛新聞 (紙面記事より)
https://this.kiji.is/578326261552317537
ー八ツ場ダムの生活再建 13事業で完成延期 資材調達困難が理由ー
八ツ場ダム(群馬県長野原町)建設に伴う生活再建事業について、県は13日までに、来春を見込んでいた13事業の完成時期が、最長で来年9月に延期されると同町側に伝えた。資材調達が困難な状況が続いていることが主な理由。一部事業で入札不調もあったとしている。
既に明らかになっている9事業と合わせ、完成の遅れは計22事業となった。13事業のうち、道の駅「八ツ場ふるさと館」の近くに建てられる農産物加工施設は4月末、JR長野原草津口駅前広場と川原湯地区の地域振興施設は5月末にそれぞれ完成がずれ込む。ダム湖の観光船の運航開始などは9月末となる。
県によると、生活再建関連は100事業あり、延期分を含めた43事業が残る。2020年度内に全事業を完了させるとする従来の見通しには変更はない。
県は今後、地元住民に説明する予定。県特定ダム対策課は「最後までしっかり仕上げたい」としている。
◆2019年12月14日 上毛新聞
ー八ッ場 最終工程へ 観光振興 期待膨らむー
台風19号が本県を襲った翌日の10月13日。ダムは茶色く濁った子髄を一面にたたえ、上流から流れ着いた流木が自然災害の脅威を伝えていた。
「奇跡」「河川の氾濫を防いだ」-。会員制交流サイト(SNS)では下流の河川氾濫防止に一役買ったとして大きな話題となった。数多くのマスコミでも取り上げられ、周辺地域は大勢の人でにぎわった。無料の展望台「やんば見放台」は11月、2015年の開設からの来場者が延べ75万人に到達。10,11月だけで10万人以上が訪れた。
近くでうどん店を営む中島泰さん(70)は「(展望台は)朝から夕方まで人が途切れることがなかった」と振り返る。国土交通省八ッ場ダム工事事務所は近くに臨時駐車場を設けたが、一時は満車が続いた。
台風19号では、10月12日から13日にかけて水位が一気に約50㍍上昇し、約7500万立方㍍もの水をためた。15日に満水となり、その後に水を抜き今月12日に最低水位となった。同事務所によると、地滑りなどの異常は確認されておらず、水位を維持したまま引き続き安全性を確認していく。
今後はダムを核にした観光振興が求められる。台風19号の災害復旧や資材不足の影響で一部は来年度以降にずれ込むものの、手ぶらでバーベキューやキャンプができるレジャー施設、水辺公園、屋内運動場など生活再建のための施設が整備される。湖面利用では県内初の水陸両用バス、観光船、カヌーなどに期待がかかる。
こうした施設や事業の初期費用は下流都県が拠出するが、その後の維持管理費は地元が担う。長野原町の萩原睦男町長は「ダムが完成する来年は重要な年。様々な人の思いがあるが、『ダムができて良かった』と思える地域を築いていきたい」と話す。
◆2019年12月23日 毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20191224/ddl/k10/040/067000c
ー八ッ場ダム、生活再建事業に遅れ 資材調達難が影響ー
国が長野原町に建設している八ッ場(やんば)ダムの来春の完成に合わせて今年度内に完了予定だった地元の生活再建事業13件が遅れている。東京五輪・パラリンピックの準備などによる資材調達難が影響しているといい、完了時期は来年度に大きくずれ込む見込みという。
遅れている13件は、JR吾妻線の長野原草津口駅前広場やダム水没地域から移転した川原湯地区の地域振興施設の整備など。県の担当者は「住民にはきちんと説明した上で事業を仕上げていきたい」としている。
一方、来春の完成前に水をためて安全性を確認する「試験湛水(たんすい)」が実施されている八ッ場ダムの水位が最低水位(標高536・3メートル)となった。国土交通省八ッ場ダム工事事務所によると、しばらくの間は最低水位を維持してダム本体の安全確認や周辺の土砂の状況などを調査するという。
10月1日に始まった試験湛水は当初、3~4カ月で満水位(標高583メートル)に到達する見込みだったが、10月の台風19号の影響で一気に満水となっていた。その後、1日におおむね1メートル以下の範囲で水位を下げていた。【西銘研志郎】