八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

政府、台風19号の緊急放流踏まえ、洪水調整用のダム貯水量引き上げへ

 政府が来年6月から、全国のダムで洪水調節に利用できる貯水量を増やす新たな運用を始める方針を決めたとのことです。
 治水対策におけるこの方針転換は、今年10月に台風19号が来襲した際、各地のダムが洪水調節の容量を超えて緊急放流を行わなければならない事態となったことによるものです。昨年7月の西日本豪雨では、愛媛県にある国直轄の二基のダムの緊急放流で8人の犠牲者が出ています。
 以下のページでお伝えしたように、この方針転換は菅義偉官房長官の主導で進められており、検討会の議長は和泉洋人首相補佐官です。➡全国のダムで「事前放流」見直しへ  台風19号を教訓に

◆2019年12月12日 朝日新聞
https://digital.asahi.com/articles/ASMDD3T7MMDDULFA009.html
ー洪水調整用のダム貯水量引き上げへ 台風19号で政府ー

 政府は12日、各地で河川が氾濫(はんらん)した10月の台風19号の教訓を踏まえ、来年6月から全国のダムで洪水調節に利用できる貯水量を増やす新たな運用を始める方針を決めた。

 国土交通省などによると、全国には計1460基のダムがある。貯水容量のうち洪水調節に使える分は約3割にとどまっており、水系ごとに現状を調べるなどして引き上げる。大雨が予想される場合には、あらかじめ放流してダムの水位を下げておく必要もあり、その手順や指針は来年4月までに策定する。

 政府は11月下旬、検討会議を立ち上げ、ダムの運用を見直していた。菅義偉官房長官は12日の記者会見で「ダムの活用は今後の水害対策として重要な課題と考えている」と話した。

 政府は現在、中央防災会議の下に設置した作業班で避難や防災情報の提供などが適切だったか検証中で、菅氏は来年3月をめどにまとめ、防減災対策に反映させる考えも示した。(野平悠一)

◆2019年12月13日 NHK
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191213/k10012214401000.html
ーダム「事前放流」ルール作り始まる 福島ー

 全国で豪雨災害が相次ぐ中、台風19号の際にダムの下流域で氾濫のおそれが出る「緊急放流」が行われた福島県で、大雨の前にあらかじめ放流しておく「事前放流」のルール作りが始まったことが分かりました。

ダムの「事前放流」は、大雨が降る前に、あらかじめ放流し水位を下げておく操作で、貯水量が限界に近づき下流域で氾濫のおそれが出る「緊急放流」の回避策として有効だとされています。

国土交通省によりますと、事前放流のルールが定められているダムは、ことし10月時点で全国562か所のうち54か所で、東北には1つもありませんが、福島県がいわき市にある高柴ダムと四時ダムで「事前放流」のルール作りに着手したことが、県への取材で分かりました。

このうち、高柴ダムでは台風19号の際、貯水量が限界に近づく中での緊急放流が実際に行われています。

福島県河川整備課は「災害の備えとして事前放流の必要性が高まっている。国の意向も確認し、利水者との協議を進めたい」としています。

「事前放流」の課題は、雨の量が想定より少なく、水位が戻らなかった場合に水の利用者に影響を与えることですが、今回対象となる2つのダムは工業用水などの供給が目的で、福島県は企業などへの補償に関する協定の締結も検討し、協議を進めることにしています。