富士川水系の環境悪化めぐり、日本軽金属の責任追及する声絶えず

 富士川水系の雨畑ダムを管理する大手アルミニウムメーカー、日本軽金属は、昨年、雨畑ダムの堆砂問題等について批判を浴び、昨夏には国土交通省から堆砂問題の抜本的な解決を求める行政指導を受けました。
 この年末年始も、雨畑ダムのある山梨県と下流の静岡県のマスメディアが別々の観点から日本軽金属の責任を問う記事を掲げています。雨畑ダムの問題を最も精力的に追及してきた静岡新聞の記事では、第二次大戦中、軍需資材として重要であったアルミ製錬を行う日本軽金属が、国策として富士川水系で巨大な水利権を認められてきた経緯に触れています。

◆2019年12月30日 毎日新聞山梨版
https://mainichi.jp/articles/20191230/ddl/k19/070/042000c
ー早川・雨畑ダム 堆積土砂を排出方針 計画遂行へ迅速対応をー

 早川町の雨畑ダムに土砂が堆積(たいせき)し、上流の河床が上昇している問題は20日、ダムを所有する日本軽金属が2025年までに最大700万立方メートルの土砂をダム湖と上流から排出する方針を示し、進展を見せた。しかし、住民が長年抱えてきた不安は今も払拭(ふっしょく)されていない。

 「また台風シーズンが来れば土砂が大量に入ってくる。期待はできない」。雨畑ダム上流の本村地区に住む男性は突き放すように語った。撤去した土砂の運搬方法や処分先が決まっていない今の状況では日軽金の計画は絵空事に見えるからだ。

 1967年の完成から半世紀以上が経過し、ダム湖の約9割に土砂が堆積する雨畑ダム。上流でも堆積は進み、18年10月に雨畑川があふれ民家が浸水した。住民の要望にもかかわらず対策は講じられないまま今年8月と10月の台風で再び川が氾濫し、家屋などが浸水。

 国や県が日軽金に対し繰り返し対策を求める中、ようやく示された今回の方針。だが、実行できるかは疑問だ。日軽金の説明では5年間で土砂600万~700万立方メートルを撤去する。年間120万~140万立方メートルの計算だ。日軽金はこれまでも年約40万立方メートルを撤去してきたが、それでも浸水は起きた。今年6月、毎日新聞の取材に「(日軽金だけでは)限界を感じている。国や県などの協力を得て対応策を検討したい」と回答した。従来の3倍以上の量の土砂をどのように撤去するのか。山からの土砂流入は今も続いている。

 50代男性は「このままでは集落がなくなりかねない」と危機感を抱く。住民にとっては住み慣れた古里の存続がかかっており、日軽金は計画遂行への道筋を迅速に示すべきだ。【高田奈実】

◆2020年1月1日 静岡新聞
https://www.at-s.com/news/article/economy/shizuoka/722038.html
ー水利権を目的外使用か 日軽金、製錬せず売電に転用 富士川水系ー

 大手アルミニウム加工メーカー日本軽金属(東京都港区)が、アルミ製錬のためとして静岡、山梨両県の富士川水系に設けた四つの水力発電所で得た電力を、売電に転用していることが31日、分かった。発電用の水は、山梨県の雨畑ダムを起点に導水管を経由して駿河湾に注ぎ、濁りがサクラエビ漁に及ぼす影響が議論を呼んでいる。河川管理者の国土交通省は水利権の目的外使用の可能性があると判断、近く実態調査に乗り出す方針だ。
 静岡新聞社が同省に情報公開を請求し、入手した資料などから判明した。放水路からの排水は最大毎秒75トンに上り、富士川下流の年間平均水量に匹敵する。長年、環境に大きな負荷をかけ続けてきたダムや導水管、発電施設の在り方が今後一層問われそうだ。
 四つの水力発電所は同社蒲原製造所に電力を供給する角瀬、波木井、富士川第一、富士川第二。2019年8月から停止中の角瀬発電所以外は、いずれも稼働している。
 開示資料によると、四つの水力発電所の水利権に関する同社の許可申請書添付の水利使用計画説明書には「電力はアルミ製錬上欠くことのできない重要なもの」(波木井)などと記載。「売電」の文字はなかった。
 同省は取材に対し「目的に応じた必要水量を許可している。同社に対して調査に入る予定だ」と説明した。
 アルミの製錬過程では、ボーキサイト鉱石から取り出した原料のアルミナを電気分解する際、ばく大な電力を必要とする。同製造所は14年3月末、設備の老朽化を理由に製錬事業から撤退した。
 こうした事態を受け、3月に水利権更新時期を迎える波木井発電所では従来通りの水量が認められない可能性も浮上。同社は取材に対し「経営に関わる事柄であり、回答は控える」としている。

■戦前から国策で取水
 資料によると、日本軽金属蒲原製造所は1940年アルミ製錬工場の操業を開始。アルミは太平洋戦争開戦前の国防態勢確立に向けた軍需資材として欠かせず、国策として巨大な水利権が認められてきた経過がある。
 同社は富士川水系に六つの自家発電所を持ち、最大出力は電力会社以外の一般企業としては有数の計約14万2500キロワット。同製造所はこれを支えに、国内製錬工場の撤退が相次ぐ中、日本唯一の拠点として2014年まで製錬事業を継続した。06年に富士川流域住民の意見を反映し国が策定した富士川水系河川整備計画は、日軽金による発電取水について「富士川に戻されることなく駿河湾に直接放流され中下流部の流量に影響を与えている」などと指摘している。

◆2020年1月6日 産経新聞
https://www.sankei.com/premium/news/200106/prm2001060002-n1.html
ーダムの堆砂、東京ドーム5個分撤去 計画に山梨、静岡知事なお不満ー

 土砂の堆積で周辺が何度も浸水被害を受けている山梨県早川町の雨畑ダムについて、ダムを所有する日本軽金属(日軽金、東京)が、5年間で東京ドーム約5個分の600万~700万立方メートルの土砂を撤去する計画を発表した。しかし、山梨県の長崎幸太郎知事はさらなる対応を要求。静岡県の川勝平太知事は駿河湾産サクラエビの不漁との関係を引き続き指摘しており、これで幕引きとはなりそうにない。(渡辺浩)

「元の状態に戻せ」
 「日軽金の当初の土砂撤去計画を間接的に聞いたところでは、とんでもなく長い期間をかける予定の、お茶を濁したようなもので、『ふざけんな』『ばかにしてんのか』という内容だった」

 長崎知事は昨年11月27日、雨畑ダムを視察後に行われた地元住民との対話集会で、日軽金の対応を厳しく批判した。

 記者団にも、「元の状態に戻せというのが原則」「計画通りの水準に戻すのが最低限の責務」「日軽金は地元に対する責任ある説明を一回もしていない。憤りを持っている」と憤慨。「これ以上、地元軽視の経営を続けるなら、浸水した県道などの損害賠償を求める訴訟もあり得る」とした。

さらなる撤去要求
 長崎知事の厳しい姿勢を受けて、日軽金は昨年12月20日に甲府市内で開かれた国土交通省や山梨県、早川町との対策検討会で、具体的な土砂の撤去計画を示した。

 雨畑ダムは、総貯水容量1365万立方メートルのうち1200万立方メートル以上が土砂で埋まっているほか、上流部の湖岸では湖面より高い位置に300万立方メートル以上の土砂が堆積している。

 計画は令和3年度末までに湖面より高い約300万立方メートル、6年度末までに湖底の300万~400万立方メートルを撤去するというもので、堆積土砂の4割程度にとどまり、知事の言う「元の状態」とはほど遠い。

 長崎知事は同月27日の記者会見で「600万~700万立方メートルは当面の計画で、最終的にはもう一段階撤去してほしい」とし、6年目以降にさらに300万~400万立方メートルの撤去を求める考えを示した。

静岡はサクラエビ強調
 一方、雨畑ダムの濁った水が早川、富士川を経て駿河湾に流れ込み、プランクトンの生育を阻害してサクラエビの不漁につながっていると主張する川勝知事は昨年12月15日、初めて雨畑ダムを視察し、サクラエビ不漁との関係を改めて強調した。

 速やかな土砂の撤去が必要との認識を繰り返し、土砂は静岡県内の防潮堤整備に活用したいと、先を見据えた。

 ただ山梨県や日軽金は、土砂撤去はサクラエビのためではなく、あくまで浸水対策という認識だ。

 日軽金の杉山和義常務執行役員は雨畑ダムとサクラエビ不漁の関係について「分からない。山梨、静岡両県による水質調査に協力する」と話すにとどまっている。

 また、長崎知事は昨年10月28日の記者会見で、甲府まで取材に来た静岡新聞の記者にこう答えていた。

 「サクラエビに結び付けたいのかもしれないが、それは科学的な態度ではない。調査結果を分析して、その結果どうするのかを順序立てて考えていきたい」「山梨県は海がないので、われわれが関心を持っているのは河川だ」