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倉敷市が「田んぼダム」導入検討

 西日本豪雨で甚大な浸水被害に見舞われた岡山県倉敷市が、水田に雨をためることで水害を抑える「田んぼダム」の導入を検討していることを伝える記事を紹介します。

◆2019年12月31日 山陽新聞
https://www.sanyonews.jp/article/972321
ー倉敷市が「田んぼダム」導入検討 水害低減に効果 実現にハードルもー

 西日本豪雨で甚大な浸水被害に見舞われた倉敷市は、水田に雨をためることで水害を抑える「田んぼダム」の導入を検討している。大規模なハード整備を必要とせず、比較的すぐに始められるのがメリットで、他県では効果を上げている自治体もある。一方、長期間にわたって大勢の農家に取り組んでもらうことが不可欠で、実現にはハードルもある。

 田んぼダムは、水田の排水口に排水量を抑える装置を設けて雨水を一時的にためることで、河川や用水の流量を抑制し、流域の水害を低減させる取り組み。一定程度水をためても稲作への影響はなく、2002年度に全国に先駆けて導入したとされる新潟県では、18年度に水田全体の1割超に当たる計1万4640ヘクタール(15市町村)に広がっている。

 普及啓発に取り組む岡山県耕地課は「把握する限り、県内での事例はない」とするが、導入した他県の自治体では効果が表れている。新潟大の吉川夏樹准教授(農業水利学)が11年の「新潟・福島豪雨」のケースを調査したところ、田んぼダムを2900ヘクタールで実施していた新潟市白根地区では、浸水面積と氾濫水量を各2割以上減らせたという。

 こうした実績を踏まえ、倉敷市は19年度に田んぼダムの効果を確かめる調査を行った。真備町地区など市内2カ所の水田で、排水量を抑える板を排水口に設置して水位の変化を調べると、西日本豪雨と同程度の雨が降った場合、ピーク時の排水量を5~6割程度抑制する効果があった。

 ただ、「田んぼダムは装置の設置がゴールではない」と吉川准教授。数十年に1回の確率で起こるような大雨での効果が期待されるため、取り組みの継続が求められる。だが新潟・福島豪雨では、半数以上の装置が適正に管理されていなかったとの調査結果もある。

 また、実施している地域よりも下流域の方が恩恵が大きく、事業の負担者と受益者が必ずしも一致しない。大規模に取り組むほど効果は大きいが、水田を管理する農家の協力をどう広げ、維持していくかも課題だ。

 約1200ヘクタールで行っている新潟県見附市では、装置を管理する農家に感謝の手紙を添えて、委託料(1カ所年500円)を手渡しすることで「意欲の向上を図っている」(同市)。吉川准教授も「農家と行政が協力し、取り組みを続けられる仕組みの構築が欠かせない」と強調する。