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ウナギ稚魚、密漁横行 価格高騰、「アジト」摘発も(時事通信)

 ウナギの激減は、海洋や河川の環境悪化が主な原因の一つである可能性が高いのですが、環境改善の動きは鈍く、高騰するウナギ稚魚の密漁が横行しているのが実状です。

◆2020年1月20日 時事通信
ーウナギ稚魚、密漁横行 価格高騰、「アジト」摘発もー

 高値で取引されることから「白いダイヤ」と呼ばれるニホンウナギの稚魚シラスウナギ。前シーズンまで例を見ない不漁が続いたため価格はさらに高騰し、全国で密漁が後を絶たない。有力産地の高知県では、県警が密漁者の潜む「アジト」を摘発し、男11人を逮捕した。これほど大規模な検挙は異例だが、氷山の一角との指摘は多い。

 「動くな」。昨年12月8日の夜明け前、高知県漁業管理課の司法警察員と県警の捜査員計25人が、安芸市内の農業用ビニールハウスに一斉に踏み込んだ。中ではウエットスーツ姿の男らが暖を取っており、抵抗することなく取り押さえられた。ハウス内には、安芸川の河口で密漁された大量のシラスウナギが泳ぐたらいが複数置かれていた。
 県などは、密漁されたと知りながらシラスウナギ2.9キロをハウスで所持したとして、県漁業調整規則違反容疑で19~36歳の10人を現行犯逮捕。農家や無職の男が中心で、密漁したことも認めたという。逃走していたハウス所有者で、密漁を主導したとみられる男も後日逮捕。他にも1人から任意で事情を聴いている。

 男らは実行役と見張り役を交代で分担するなど、組織的に行動していた。「県東部で密漁する一大勢力」と指摘する地元漁師もいるという。県などは、暴力団との関わりや流通経路などについても調べを進めている。
 水産庁によると、全国のシラスウナギ密漁の検挙件数は、2016年度までの5年間で計278件。年間約40~60件で推移している。高知県は今年度、既に18人を逮捕した。
 2000年代は1キロ当たり100万円以下だったシラスウナギの取引価格は、近年200万円を突破。密漁に対する罰金が10万円以下と少ないことが「取り得」を許しているとして、水産庁は23年から3000万円以下に引き上げる方針だ。
 中央大の海部健三准教授(保全生態学)は「密漁の他にも、正規の販売ルート以外への横流しや漁獲量の過少申告など、ウナギの流通は不透明な部分が多い。早急に見直しを進めなければ、ウナギの資源管理が難しくなるだろう」と指摘した。

◆2019年11月1日 時事通信
ー宍道湖ウナギ激減、殺虫剤原因か=餌の水生昆虫死滅で-産総研などー

 島根県の宍道湖でウナギやワカサギの漁獲量が激減したのは、1993年から農薬として使われたネオニコチノイド系殺虫剤が原因である可能性が高いことが、産業技術総合研究所(茨城県つくば市)や東京大などの研究で分かった。餌となる水生昆虫を死滅させたためという。論文は1日付の米科学誌サイエンスに掲載された。
 宍道湖のウナギは、80年代には年間50~60トンの漁獲量があったが、近隣の水田などでネオニコチノイド系殺虫剤が使われ始めた93年を境に激減。ワカサギもほとんど捕れなくなった。
 産総研の山室真澄・特定フェローらは82年~2016年、宍道湖の水生昆虫などの生息数を調査。93年以降、ミジンコ類が激減し、大量発生していたオオユスリカも出現しなくなっていた。一方、植物プランクトンを食べるシラウオは大きく減っておらず、殺虫剤による昆虫類の減少が、ウナギやワカサギに影響したと推定した。
 ネオニコチノイド系殺虫剤は昆虫の神経系に作用し、人やその他の動物には安全性が高いとされる。しかし、農作物の受粉を媒介するミツバチを全滅させるなどの影響が指摘され、欧州連合(EU)では使用が禁止されている。
 山室さんは「昆虫にしか効かないとしても、水生昆虫は重要な餌であり、魚や鳥への影響は大きい」と指摘した。
 研究チームには、島根県保健環境科学研究所、名古屋市環境科学調査センター、千葉工業大が参加している。