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安倍首相、施政方針演説で八ッ場ダムに言及

 1月20日、安倍晋三首相は施政方針演説で、政権の成果の一つとして、2015年に本体工事が始まり、今年度中に完成する予定の八ッ場ダムを取り上げました。首相の発言は、SNSでも話題になっています。

 発言部分は、官邸サイトに掲載されている動画の10分49秒~で確認できます。

◆首相官邸サイト
https://www.kantei.go.jp/jp/98_abe/actions/202001/20shu_san_honkaigi.html

ダム湖チラシ4校のサムネイル 国土交通省は昨年10月の台風19号豪雨の際、八ツ場ダムを含む利根川上流7ダムにより、群馬県伊勢崎市八斗島地点の水位を約一メートル下げたと発表していますが、八ツ場ダムのみの効果は明らかにしていません。これまでも赤羽国交大臣、麻生財務大臣、二階自民党幹事長が安倍首相と同様の発言をしていますが、国交省の正式な発表に基づいたものではありません。

 当会の嶋津暉之さん(元・東京都環境科学研究所研究員)が国土交通省の発表内容を確認するため、八斗島地点の水位を約一メートル下げたという計算結果を示す委託調査報告書を情報公開請求により入手しましたが、計算根拠は示されておらず、計算そのものに疑問があるとのことです。
 この問題について、今度の日曜日、群馬県高崎市で開催する集会「八ッ場ダム湖はどうなるか~地質・水質・堆砂の問題~」で嶋津さんが講演します。関心のある方はどうぞご参加ください。
 https://yamba-net.org/wp/49833/

 この発言について、東京新聞が「論戦ファクトチェック」と題する記事で取り上げました。西日本新聞でも八ッ場ダムについての首相の発言を取り上げていますので、紹介します。

◆2020年1月21日 東京新聞
https://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/202001/CK2020012102000150.html
ー<論戦ファクトチェック>首相「八ッ場ダムが被害防止に役立った」 でも利根川6ダムや遊水地も貯水ー

 安倍晋三首相は二十日の施政方針演説で、昨年十月の台風19号の際に「八ッ場(やんば)ダム(群馬県)が利根川の被害防止に役立った」と述べた。だが、当時は他の施設もフル稼働して水位を調節しており、利根川の治水で八ッ場ダムの効果だけを紹介するのは説明不足で、誤解を招きかねない。

 国土交通省関東地方整備局によると、台風19号で八ッ場ダムは約七千五百万立方メートルの水を貯留した。完成前に水をためて安全性を確認する「試験湛水(たんすい)」の段階にあり、担当者は「極めて低い水位から満水近くにまで達した特殊な状況だった」と説明。完成後も同じ量の水を貯留できるわけではないとの見方を示した。

 利根川上流域のその他のダム六カ所でも計約七千万立方メートルを貯留し、八ッ場ダムとともに群馬県内で水位を約一メートル下げた。担当者は八ッ場ダム単体でどの程度を下げたか「検証していない」とする。茨城、栃木、群馬、埼玉の四県にまたがる利根川中流域の渡良瀬遊水地も約一億六千万立方メートルの水を貯留した。

 経済・雇用関連でも首相演説には誇張が目立った。「九割近い中小企業で賃上げした」と強調したが、従業員百人未満の企業の調査結果を含んでいなかった。別の民間調査では、賃上げは六割近くにとどまる。

 内閣府によると、演説に引用されたのは厚生労働省の「二〇一九年賃金引き上げ等の実態に関する調査」で、百~二百九十九人規模の企業が賃上げした割合は89%。三十人以上の一部企業も対象だが、集計中で反映されていないため、厳密には不正確な状態だ。

 日本商工会議所の昨年末時点での調査では、賃上げした中小企業は58%。人手不足でやむを得ず賃上げした企業が半数以上。首相は昨秋の所信表明演説に続き「八割の高齢者が六十五歳を超えても働く意欲がある」と主張した。本紙のファクトチェックでは「八割」は仕事をしている人に限って統計を再処理した数字。実際は高齢者全体の五割強にとどまった。 (中根政人、川田篤志)

◆2020年1月22日 西日本新聞
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200122-00010009-nishinpc-pol
ー首相演説「フェイク」批判も 地方創生成功例は転出、最高税収も暗雲ー

 安倍晋三首相が20日に行った施政方針演説で、正確性に欠ける内容が複数含まれていた。演説では、政府が推進する「地方創生」や「アベノミクス」などの成果について、具体例を挙げて強調したが、誤解を招きかねない表現が散見され、野党からは「フェイク(うその)演説だ」との批判も。通常国会の焦点になる可能性もある。

 首相は地方創生を巡り、島根県江津(ごうつ)市で若者の移住や起業支援をしたことで転入者が転出者を上回る人口の社会増が実現したと紹介。移住した男性の実名を挙げ「地域ぐるみで若者のチャレンジを後押しする環境が、移住の決め手となった」と言及した。

 だが現在、男性は江津市に住んでいないことが判明。市は西日本新聞の取材に「家庭の都合で転居された。(起業した会社に)在籍しているかどうか分からない」と答えた。

 菅義偉官房長官は20日の記者会見で、演説前に本人に確認したとした上で「起業支援の成功例として演説で紹介するのは問題ない」と述べ、男性に関する記述の妥当性を強調した。

 首相が演説で「来年度予算の税収は過去最高となった。公債発行は8年連続での減額」と述べた部分にも疑問が持たれている。

 政府が今国会に提出する2020年度予算案では、税収は63兆5130億円と過去最高を見込んでいるものの、あくまで予算上の試算。実際、昨年の施政方針演説で「過去最高」とした19年度予算案の税収は既に下方修正され、20年度予算も修正される可能性がある。「8年連続での減額」とした新規国債の発行額についても、収支が確定した決算ベースでは減額し続けておらず、年度ごとに増減を繰り返している。

 昨年10月の台風19号の際に「(群馬県の)八ツ場(やんば)ダムが利根川の被害防止に役立った」との演説内容も、正確性を欠く。当時、試験湛水(たんすい)中だった八ツ場ダム単体による防災効果が確認されていないからだ。

 立憲民主党の中堅は「事実に基づく情報が(首相らに)上がらないのは恐ろしいことだ」と指摘し、政府や首相の姿勢を追及していく構えを見せた。 (河合仁志、湯之前八州)