石木ダム付け替え県道着工10年 住民「まともな公共工事か」、抗議続け800回超

 ダム事業の大半は、ダム本体とは関係のない工事です。道路の付け替えなどの膨大な関連工事がダム利権につながります。
 道路の付け替え工事ができなければ、ダム本体ができても水を貯められませんから、石木ダム予定地では住民が体を張って工事を阻止しようとしてきました。
 八ッ場ダムの地元住民も、ダム計画が本格化した半世紀前には同様の抗議行動を連日行っていたということですが、他のダム予定地と同様、次第に国家権力に抗うのに疲れ果て、ダムを受け入れざるをえなくなりました。
 国直轄のダムと県営ダムという違いはありますが、石木ダム予定地住民が半世紀間、体を張ってダム反対運動を続けているのは、わが国のダム史上、前例がないことです。

◆2020年3月23日 長崎新聞
https://this.kiji.is/614628750301856865?c=174761113988793844
ー石木ダム付け替え県道着工10年 住民「まともな公共工事か」、抗議続け800回超ー

 東彼川棚町に計画されている石木ダム建設事業に反対する住民らが、県と佐世保市に工事差し止めを求めた訴訟。長崎地裁佐世保支部が判決を言い渡す24日は、県道付け替え道路の着工から10年の節目でもある。工事は住民らの抗議活動で幾度も中断し、事業の完成は見通せない。現場での住民らの座り込みは800回を超えた。

 今月9日、現場には午前中から反対住民や支援者らが集まり、いすを並べて座り込んだ。2017年8月からほぼ毎日続く抗議行動は800回を迎え、「石木ダムNO」などと訴えるカードを掲げた。周りを取り囲むようにして立つ県職員らを横目に、住民の岩本宏之さん(75)は「職員の人件費だけでもかなりの出費だ。これがまともな公共工事と言えるのか」と吐き捨てた。

 県は10年3月24日、抜き打ちで付け替え道路工事に着手したが、住民らの阻止行動を受け、同年7月に中止を余儀なくされた。その後も工事再開のたびに、住民らが現場入り口に立ちふさがり、県職員や業者の立ち入りを阻止。間隙(かんげき)を突いて休日の早朝や深夜に重機や資材の搬入を試みた県に、駆けつけた住民らが抗議する事態も頻発した。

 17年7月、住民と話し合うために工事を中断したが、知事との面会を巡る協議が決裂し再開。住民側も座り込みで抵抗し、現在まで続いている。

 住民の岩下すみ子さん(71)は、足を痛めて現場に通えないため、近くの県道に1人で座り、反対の意思表示をしている。10年前、「少人数でも反対の意思を表そう」と女性陣だけで抗議活動を始めた。当初から活動の様子を記録し続けるノートは11冊を数える。「この10年はぐっすり眠れたことがない」とぼやく。  10年間で土地収用法に基づく手続きは進み、昨年11月までに反対住民13世帯の宅地を含む全ての土地が明け渡し期限を迎えた。住民らが国に事業認定取り消しを求めた訴訟では、一審の長崎地裁、二審の福岡高裁のいずれもダムの必要性を認め、住民側の訴えを退けた。

 工事差し止め訴訟ではダムの必要性に加え、住民側が主張する「生命・身体の安全」や「人格権」などの権利侵害についての司法判断も注目される。岩下さんは「ダム建設で得られる公共の利益が大きいと県は言うが、事業費による借金と人口減少で余る水が、私たちの生活を犠牲にしてまで必要とは思えない。裁判官はよく目をこらしてほしい」と語る。