3月24日、長崎県が進める石木ダムの工事差し止めを求める裁判の判決が長崎地方裁判所佐世保支部でありました。
残念ながら、今回も原告側の敗訴でした。「ダムの建設によって、住民の生命・身体の安全が侵害されるおそれがあるとは認められない」という判決です。司法が行政をチェックする機能を喪失していることが、不要で有害な石木ダム事業の暴走を許しています。
◆2020年3月25日 長崎新聞
https://this.kiji.is/615373497721242721?c=174761113988793844
ー石木ダム 差し止め訴訟 怒り、失望あらわ 三たび請求も届かずー
「古里で静かに暮らしたい」との住民らの訴えは、今回も司法に届かなかった。東彼川棚町に計画されている石木ダム建設事業の工事差し止めを求めた訴訟は、住民らが国に事業認定取り消しを求めた別の訴訟の一審、二審判決に続く三たびの請求棄却という厳しい結果に。水没地域の川原(こうばる)地区の住民らは判決に失望と怒りをあらわにし、推進派の関係者からは安堵(あんど)の声が聞かれた。
請求棄却を告げた裁判長は足早に法廷を後にした。わずか1分足らず。「またか」。原告側の住民からはため息が漏れ、石丸穂澄さん(37)は「一字一句想像した通りの判決文だった」と苦笑した。原告の1人として当事者尋問に立ち、古里の自然環境の豊かさを訴えた。「私には自然の音に囲まれた落ち着いた静かな環境がどうしても必要」だと。だが-。
古里の川原の自然や生き物をイラストに描き、インターネットや漫画小冊子で発信する活動を続けている。請求棄却にも「闘い方は人それぞれ。私は私のやり方で活動していく」と前を見据えた。
「悔しい。私たちの人格が無視されている」。住民の松本順子さん(63)は肩を落とした。4世代8人がにぎやかに暮らす自宅も、夫と長男で営む小さな鉄工所も、昨年11月、土地収用法に基づく手続きで土地の所有権を奪われた。裁判では長男の好央さん(45)が「県が行政代執行に踏み切れば、生活の基盤が奪われる」と主張したが、こうした危機感に判決が言及することはなかった。「私たちはここに住みたいだけ。そう思うことがなぜ悪いのか」と憤った。
住民側は2016年2月、県と佐世保市に工事差し止めを求める仮処分を長崎地裁佐世保支部に申し立てたが、「工事禁止の緊急性がない」として却下された。同支部が判断を避けたダムの必要性や住民の権利侵害についてさらに踏み込んだ議論をするために、住民側は17年3月に提訴した経緯がある。
住民の岩本宏之さん(75)は「代執行が現実味を帯びている今なら、(緊急性が高まり)差し止めを認めてくれると思っていたのだが」と落胆。現在もほぼ毎日、付け替え道路工事現場に通い、抗議の座り込みを続ける。「このまま工事が進めば、取り返しのつかない事態になるのは明らか。我々は覚悟を決めているが、裁判所は本当にそれでいいのか」と語気を強めた。
◆2020年3月24日
https://www3.nhk.or.jp/lnews/nagasaki/20200324/5030007090.html
ー石木ダム差し止め訴訟 原告敗訴ー
川棚町に建設中の石木ダムをめぐり、建設に反対する住民らが、長崎県と佐世保市に建設の差し止めを求めた裁判で、長崎地方裁判所佐世保支部は「住民の生命・身体の安全が侵害されるおそれがあるとは認められない」として、住民らの訴えを退けました。
長崎県と佐世保市が、川棚町に建設を進めている石木ダムをめぐり、建設に反対する元地権者の住民や支援者ら合わせて601人は、住民の生命・身体の安全や人間の尊厳を維持して生きる権利などが侵害されているとして、ダム本体の建設工事とダム建設に伴う道路の建設工事の差し止めを求める訴えを起こしていました。
24日の判決で、長崎地方裁判所佐世保支部の平井健一郎裁判長は「ダムの建設によって、住民の生命・身体の安全が侵害されるおそれがあるとは認められない。人間の尊厳という概念も抽象的で、内容や範囲も不明確で、差し止め請求の基礎となる具体的な法的権利とはいえない」と指摘し、住民側の訴えを退けました。
石木ダムの建設をめぐっては、住民側は、国の事業認定の取り消しを求めた訴えを起こしましたが、1審の長崎地方裁判所が訴えを退けたのに続いて、去年11月、2審の福岡高等裁判所も訴えを退けました。
【原告側は】。
判決のあと、原告側の馬奈木昭雄弁護士は「裁判所は、きちんと議論を尽くそうとしていない。おかしいことはおかしいと、国民が納得するまで、私どもはがんばっていきたい」と述べ、近く控訴する考えを示しました。
また、住民の岩下和雄さんは「本当にダムが必要かと、裁判官に訴えてきたが、議論が尽くされたのか疑問に思う。今のふるさとに住み続けるという気持ちは強く、裁判によって変わることは、ありません」と話していました。
【中村知事は】。
判決について、中村知事は、記者団に対し「これまでの県の主張を認めていただいた判決が出された」としたうえで、「地権者の皆様には、今回の判決の趣旨をご理解いただき、事業に対する反対をやめていただきたい」と話しました。
また、新年度の当初予算案に、石木ダムの本体工事にかかる費用が計上されていることについて「順調に関連事業が進捗していけば、出来るだけ早期に着手できるよう努力していきたい」と述べました。
【佐世保市の朝長市長は】。
判決を受けて、佐世保市の朝長市長は「これまでの本市の主張が認められたものと思う。事業に対する市民のご理解につながることを期待するとともに、今後の事業の進展に向けて、長崎県とともに尽力していきたい」とするコメントを発表しました。
◆2020年3月24日 共同通信
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57163010U0A320C2000000/
ー石木ダム差し止め認めず 長崎地裁佐世保支部ー
長崎県と佐世保市が同県川棚町に計画する石木ダム建設に反対し、住民や支援者ら約600人が県と佐世保市を相手取って工事の差し止めを求めた訴訟の判決で、長崎地裁佐世保支部は24日、請求を棄却した。住民らは控訴する方針。
住民らは、ダム建設により豊かな自然環境の中で生活する権利が奪われると主張。平井健一郎裁判長は「主張は主観的で、保護すべき内容や権利が具体的に定まっていない」と退けた。住民らは、利水面からもダムの必要性はないと訴えていたが、判決は判断を示さなかった。
住民側の馬奈木昭雄弁護団長は判決後「裁判所が逃げた。行政へのそんたくだ」と批判した。
中村法道知事は「(住民には)判決の趣旨を理解し、事業への反対をやめてもらいたい」と話した。佐世保市の朝長則男市長は「事業の理解につながることを期待する」とコメントした。
石木ダムは佐世保市への給水や川棚町の治水が目的で、当初の完成目標は1979年度だった。2010年に水没道路の付け替え工事が始まったが、本体はいまだに着工していない。現在の完成目標は25年度。
19年11月、水没予定地に住む13世帯の明け渡し期限が過ぎ、県は行政代執行で土地・建物を強制収用できる状態になっている。住民らは一連の手続きの根拠となる国の事業認定の取り消しも求めたが、一、二審とも敗訴している。〔共同〕
◆2020年3月24日 テレビ長崎
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200324-00000008-ktn-l42
ー石木ダムの建設工事差し止め認めず、住民側が敗訴ー
長崎県川棚町の石木ダムをめぐり、建設予定地の住民などが県と佐世保市に工事の差し止めを求めていた裁判で、長崎地裁佐世保支部は訴えを退けました。
長崎地裁佐世保支部で開かれた裁判は、新型コロナウイルスの感染予防で傍聴席が普段の約3分の1、9人に制限されたにも関わらず、59人が傍聴券を求めて列を作りました。
この裁判は石木ダム建設予定地の住民など原告601人が、長崎県と佐世保市に対しダム本体の建設と県道の付け替え工事などの差し止めを求めているものです。
2年半以上にわたり、これまで13回の口頭弁論が開かれました。
原告側は佐世保市が水需要を過大に見積もっていて、石木ダムは必要がないこと、県がダム建設を優先し川棚川の過去の洪水被害の原因究明や対策を行っておらず、生命・身体の安全の権利を侵害されている、などと主張しました。
判決で平井 健一郎 裁判長は「生命、身体の安全が侵害されるおそれがあることを認めるに足りる証拠はない」などとして、原告側の訴えを退けました。
原告 岩下 和雄 さん 「裁判によって私たちが左右されるとは思っていない。私たちは今後も住み続ける。今までどおりの生活を続けていくつもり」
石木ダム対策弁護団 馬奈木 昭雄 弁護団長 「これまでの生活基盤を根底から奪って追い出す、生命身体(の安全)を奪うこと以上のものじゃないかと私たちは問いかけたつもり。それに対する答えは(判決文には)書いていないと思う」
判決を受け中村知事は「県の主張が認められた。(住民には)事業への反対をやめていただきたい」と述べました。
中村知事 「近年、自然災害が頻発する中で(ダムの)早期完成を目指していかなければならない。順調に関連事業が進捗していけば、できるだけ早期に(本体工事に)着手できるよう努力していきたい」
原告側は近く控訴する方針です。
◆2020年3月24日 NBC長崎放送
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200324-00003603-nbcv-l42
ー石木ダム工事差し止め訴訟 原告敗訴の判決ー
東彼・川棚町に計画されている石木ダムをめぐり建設予定地の住民らが工事の差し止めを求めている裁判で長崎地裁・佐世保支部は、きょう住民の訴えを退ける判決を言い渡しました。住民側は控訴する方針です。
訴えているのは東彼・川棚町の石木ダム建設予定地内に住む13世帯50人あまりの住民らです。裁判の中で住民らは必要性のないダム建設のために平穏に暮らす権利を侵害されているなどとして現在行われている石木ダム関連の道路工事と今後予定されているダム本体工事を中止するよう求めています。
きょうの判決で平井健一郎裁判長は「ダム事業によって住民の生命・身体の安全が侵害されるおそれがあるとは認められず工事差し止めの根拠とはなりえない」として住民らの請求を棄却しました。
原告弁護士「これまでの生活全体の基盤を根底から奪って追い出す、それは生命・身体の安全を奪うこと以上のことではないでしょうか」
原告岩下氏「本当に水が要るのかダムが必要なのかということを裁判官に訴えてきましたけれども、そのことについて本当に議論がされたのかと私たちは疑問に思っています。私たちは今後ともそこに住み続け、今まで通りの生活を続けていくつもりです」
住民らは「佐世保市の水需要予測や川棚川の洪水防止対策などダムは不要とする我々の主張が充分に検討されていない」などして近く控訴する方針です。
◆2020年3月25日 長崎新聞
https://rd.kyodo-d.info/ud/KD:nagasaki:20200325112924?c=39546741839462401
ー石木ダム差し止め請求棄却 地裁佐世保 原告住民ら控訴へー
長崎県と佐世保市が東彼川棚町に計画する石木ダム建設事業を巡り、水没地区の住民ら601人が県と同市を相手取り、工事差し止めを求めた訴訟で、長崎地裁佐世保支部(平井健一郎裁判長)は24日、原告の請求を棄却した。住民らはダム建設で「平穏に生活する権利が侵害される」などと訴えたが、判決は「ダム事業で生命、身体の安全が侵害される恐れがあるとは認められない」と結論付けた。原告側は控訴する方針。
裁判で原告側は、ダムの必要性の根拠となる同市の水需要予測や川棚川の治水計画の問題点を指摘し、「必要性のない事業によって、住民の生命、身体の安全や平穏に暮らす権利が侵害されている」などと主張。県と同市は請求棄却を求めていた。
判決で平井裁判長は、生命、身体の安全について「侵害される恐れがあることを認めるに足りる証拠はない」と指摘。豊かな自然で生活する権利の侵害や居住地の強制収用による生活基盤の破壊については「主観的な評価による部分が大きい」「抽象的で内容も不明確」などと退けた。利水、治水面でのダムの必要性など他の争点については判断を示さなかった。
判決後の集会で住民の岩下和雄さん(73)は「裁判の結果によって、古里に住み続ける決意は変わらない。控訴して高裁で頑張っていく」と述べた。
同事業を巡っては、県が2010年、ダムに水没する県道の付け替え工事に着手したが、住民らが激しく反発し、完成の見通しは立っていない。こうした中、土地の明け渡し期限が過ぎ、家屋の撤去や住民の排除など行政代執行の手続きが可能な状態になっている。住民らは別の訴訟で国に事業認定取り消しを求め争っているが、一審の長崎地裁、二審の福岡高裁ともダムの必要性を認め、原告側が敗訴。原告側が上告している。
◆2020年3月25日 西日本新聞
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/594750/
ー石木ダム差し止め認めず 地裁佐世保、住民の請求を棄却ー
長崎県と佐世保市が計画する石木ダム建設を巡り、予定地の同県川棚町住民ら601人が工事差し止めを求めた訴訟の判決が24日、長崎地裁佐世保支部であった。平井健一郎裁判長は、原告が訴えた「良好な環境で生活する権利」などは工事差し止めの根拠にならないとして、請求を棄却した。原告は控訴する。
石木ダムは佐世保市の水不足解消と治水を目的として、1975年に国が事業採択。13世帯が用地の明け渡しを拒んでいる。県は2010年、水没する県道の付け替え工事に着手。住民らは16年に工事差し止めの仮処分を申し立てたが、地裁佐世保支部は却下した。
判決理由で平井裁判長は「人間の尊厳という概念は抽象的で内容や範囲も不明確」などとして、良好な環境の中で生活を営む権利が侵害されるとした原告の主張を退けた。ダム建設の妥当性には言及していない。
石木ダムの用地は土地収用法に基づき、19年に所有権が国に移り、家屋などの強制撤去が可能な状態になっている。県は25年度の完成を目指している。
住民らが国に土地収用法の事業認定取り消しを求めた訴訟は19年11月、福岡高裁が控訴を棄却。原告は上告した。 (竹中謙輔)
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/594749/
ー原告「座り込み続ける」 石木ダム差し止め認められずー
数秒で終わった長崎地裁佐世保支部の判決言い渡し。「裁判って、こういうものなのかな」。原告の一人、川原房枝さん(79)は力なくつぶやいた。
1963年に石木ダム予定地の長崎県川棚町川原(こうばる)地区に嫁いで間もなく、ダム建設の話が持ち上がった。夫や義理の父母、近所の人と反対運動に参加。2018年秋に夫を亡くしてからも、抗議の座り込みに毎日出掛ける。参加者で最年長。料理が得意で、おはぎやまんじゅうを差し入れる。
昨年9月、中村法道知事と面会した際、川原地区の日常を切々と訴えた。「まずダムの抗議を先にして、その後、家のこととか自分の用事を済ませています。まず、ダムのこと。ダムのことが毎日頭から離れない。もういいかげんやめてほしい」。だが、思いは届かない。
判決が言い渡された3月24日は10年前、ダム建設に向けて県道の付け替え工事が始まった日。あれから現場の風景は大きく変わった。さらに県は、20年度予算に初めてダム本体の工事費を計上した。反対運動の長い年月とこれからを思うと「不安でね、胸がいっぱいになって…」。言葉を詰まらせた。
一審で工事の差し止めは認められなかった。それでも気持ちは揺るがない。一緒に反対している川原の人たちや支援者が支えだ。
「私たちは川原から出ていかない。私が現場じゃ一番のお姉さんだからね。簡単には(本体工事を)やらせないぞって思いで、力を込めて座り込みを続けます」 (平山成美)
◆2020年3月25日 毎日新聞長崎版
https://mainichi.jp/articles/20200325/ddl/k42/040/191000c
ー石木ダム工事差し止め訴訟 原告「反対」強く決意 敗訴判決、司法への不信あらわ ー
川棚町で進む石木ダム事業を巡り、水没予定地に暮らす地権者らが県と佐世保市に工事差し止めを求めた訴えを棄却した24日の長崎地裁佐世保支部判決。事業認定取り消しを求めた訴訟の1、2審に続く敗訴に、原告は司法への不信をあらわにし、ダム反対を貫くことを改めて決意した。【綿貫洋、松村真友、中山敦貴】
判決後に佐世保市であった報告集会には、原告団と支援者ら約100人が参加した。石木ダム対策弁護団の馬奈木昭雄団長は「判断を下した納得いく理由を説明すべきなのに、判決は主文を読み上げただけ」などと批判。一方で、他県でダム事業が中止されたケースを引き合いに、「地元の声の高まりがダムを止める」と語った。
水没予定地の住民で川棚町議の炭谷猛さん(69)は「裁判を続けることで行政にプレッシャーを与え治水、利水の議論に持っていきたい」、石木川まもり隊の松本美智恵代表(68)は「今後も問題を県民に発信して、事業の必要性を問い続けたい」と語った。
判決を受け、中村法道知事は県庁で記者団の取材に応じ、石木ダムの必要性を強調した上で、「地権者の皆さんには判決の趣旨をご理解頂き、事業に対する反対をやめていただきたい」と述べた。佐世保市の朝長則男市長は「今回の判決が、市民の石木ダム事業に対する理解につながることを期待し、事業進展に向けて県と共に尽力したい」とするコメントを出した。